二度あることは三度ある! モダンなブギーの流行を巻き起こした正装のデュオが、自身も加担した流行の中に堂々の帰還――このフレッシュなセンスはやはり別格だ!

〈ブギー〉流行りのなかで

 流行しているのはわかりつつも、〈ブギー〉というワードがまさかここまで広く行き渡ることになるとは思いもよらなかった。メイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンから成るクリエイター&パフォーマー・ユニット、タキシードはそんな〈流行〉のランドマークと言ってもよい存在だが、広く行き渡り過ぎてしまったおかげで〈ブギー〉というワードが安っぽく使われてしまうケースも昨今少なくなく、それと同時にタキシードの存在性も勝手に割り引かれて語られてしまうこともあるのだから、たまったものではない。

 タキシードが流行便乗型のアーティストと決定的に異なる点は、商業性を考える前に自分たちの生活空間/遊興空間の中で機能するビートやサウンドを作り上げ、それをマーケット用にトリミングするという、その感覚回路にある。2人がそれぞれ重ねてきた音楽履歴が自然とそうさせている部分もあるだろうが、参照した音楽の咀嚼の仕方や、関わってもらう人たちのキャスティング、リリックに落とし込む際のトピック選びなど、その違いが露わな彼らの音楽は常に高品位で、音楽的な説得力に溢れ、とびきりフレッシュなのだ。

TUXEDO Tuxedo III Funk On Sight/BBQ(2019)

 そんなタキシードの通算3作目に当たる新作『Tuxedo III』の登場である。流行り云々を置いても、特別視がマストな全11曲が届けられることになった。

 まず、今作から長らく母屋だったレーベル、ストーンズ・スロウを離れたことはポイントになるだろう。だが、そのことで制作環境に影響が及んだようには思えず、むしろ前作からのアップデート度合いはこちらの想像をはるかに上回ってしまった印象だ。特に過去2作のアルバムではほとんど認められなかったゲストの起用が相当派手に行われており、過去に“Watch The Dance(Battlecat Remix)”で関わった西海岸ヒップホップのトップ・クリエイターにしてGファンカー、バトルキャット(“OMW”)を筆頭に、元レーベルメイトにしてみずから〈アンバサダー・オブ・ブギー・ファンク〉を名乗る鬼才=デイム・ファンク、アンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンから熱狂的な支持を集める個性派ラッパーのMFドゥーム(“Dreaming In The Daytime”)、“Gabriel's Groove”でスキット主演のように(あえて)扱われているストーンズ・スロウ所属のマルチプル・アーティスト、ガブリエル・ガルソン・モンターノ、タキシードのライヴにも参加(来日公演時も)し、個人名義のレコーディングにも秀作の多い可憐かつ洒脱な歌声の持ち主、ギャヴィン・トゥーレック(“Close”)、そのギャヴィン嬢と同じく西海岸で活躍する新人男性シンガーのレヴェン・カリ(“OMW”)に女性シンガーのパリサレクサ(“Vibrations”)に加え、昨年ストーンズ・スロウと契約してアルバム『City Pop』をリリースしたオランダのポップ界の異端、ベニー・シングス(“Toast To Us”)までもが招かれている。つまり、11曲中7曲でゲストがクレジットされているのだが、あくまでもタキシードにとっては居心地の良いであろうキャストが加わることによって、アルバムは自然と多層構造となり、多様なアングルから〈タキシード的〉なる世界観を満喫できる内容になっているのだ。

 

ニュアンス豊かな再解釈

 そんなアルバムは待ってましたのタキシード流ディスコ/ブギー・チューン“The Tuxedo Way”で幕を開ける。続く“You And Me”もいかにもな彼ら流のスタイルで痺れるが、前者は例えばスカイの音像だったり、後者はコン・ファンク・シャンの80年作『Touch』で聴かれた音像だったりを思わせる(ハーモニーの組み立ても似ている)など、とにかくその絶妙で洒落っ気タップリな再解釈は、もし参照先の音楽との接触頻度が少なければ、とてもここまでニュアンス豊かな仕上がりにはならなかったように感じられる。それはカシーフを象り直したような超絶クリスピーな“Close”や、シックへのオマージュが半端ない“On A Good One”などもそうで、タキシードのやり口の巧妙さは至るところから飛び出してくる。

 バトルキャットが絡み、シンセのズレ方がもうバトルキャット以外の何モノでもない、ワン・ウェイから脂身を取り除いたような“OMW”や、バーケイズ“She Talks To Me With Her Body”のリフォームに挑戦したかの如き“If You Want It”、ニュー・シューズ“I Can't Wait”をメロウ・ファンク・マナーで再調理してみました風の“Vibrations”なども最高だ。一方、アイズリー・ブラザーズの“Between The Sheets”をモチーフにするというほとんど反則とも取られかねない手法にベニー・シングスをフィーチャーすることでその反則を隠してみせる“Toast To Us”もワザ有りの一曲だし、デイム・ファンクとの共謀なのか、90sのテディ・ライリー/ブラックストリートをヴォーカル・ワークも含めて模した“Extra Texture”や、サンプリングではなく、初期ジャム&ルイスを彷彿とさせるTR-808でMFドゥームをもてなした“Dreaming In The Daytime”(ジャム&ルイス的なるサンプリングという意味で、過去にMFドゥームにはSOSバンドをサンプリングしたその名も“Finest”がある)も文句ナシ。

 この通り、前2作とは音楽的なヴォキャブラリーが飛躍的に高まった傑作集、彼らの他に得難い魅力の核心をぜひこの機会に掴み直し、とことん味わい尽くしてほしい。 *JAM

タキシードのアルバム。

 

『Tuxedo III』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

 

文中に登場するアーティストの作品を一部紹介。

 

本道も絶好調なジェイク・ワン

 もともとはいわゆる〈西海岸アンダーグラウンド〉のシーンを地盤としてきたシアトル出身のプロデューサー。地下の名門ライムセイヤーズから初のリーダー作『White Van Music』(2008年)を出す一方、Gユニットにトラックを採用されたあたりからメインストリームにも顔を出すようになり、現在はエリアを問わず多種多様なラッパーたちのプロデュースを担当しているヴェテランだ(今回『Tuxedo III』に招いたMFドゥームともバトルキャットとも仕事歴がある)。近年だけでもニプシー・ハッスルの『Victory Lap』で3曲を手掛けたほか、バディやジェイ・ロック、ウィズ・カリファ、フューチャー、ウィークエンド、21サヴェージら大物クライアントの名前がズラリと並ぶ。そうした場でタキシード寄りの作風を見せることは多くないが、だからこそタキシードにおいて濃密な遊び心が発揮されるのかもしれない。 *狛犬

 

デュオの声を担うメイヤー・ホーソーン

 もともとはデトロイト周辺のDJで、ある種のフェイクな味わいも込みで歌った初作『A Strange Arrangement』(2009年)が評価され、歌い手として認知されるようになったメイヤー・ホーソーン。3作目『Where Does This Door Go』でジェイク・ワンと合体して2015年にタキシードを結成して以降は、フォロワーのクール・アンクル(ボビー・コールドウェル×ジャック・スプラッシュ)やベニー・シングスら趣味の重なる洒落者たちとも積極的にコラボ。現時点での最新ソロ『Man About Town』(2016年)ではAOR寄りの部分も強まっていて、タキシードでの試みとはあえて別の方角をめざしているのかもしれない。なお、『Tuxedo III』に先んじた共演曲“Not Enough”を含むベニーのソロ作『City Melody』は、USでは『City Pop』の名でストーンズ・スロウから登場した。 *狛犬

 

タキシードと併せて踊りたい最近のあれこれ

タキシード以前から正装だったG.RINAが、手の合うZEN-LA-ROCK ×鎮座DOPENESSと組んだトリオの初作。グルーヴ・セオリーな7インチのジャケに違わず、引き出しの多いアーバン・スタイリストぶりが煌めく。

 

KOOL CUSTOMER Kool Customer Bastard Jazz/Manhattan/LEXINGTON(2019)

ザッピー趣味丸出しのソロ作も出していたLAのB・ブラヴォがタキシードを意識して(?)シンガーのロージャーと結成したデュオ。これは独自仕様で登場した日本盤で、P寄りのファンクやブギーが気楽に楽しめる。

 

ZAPP Zapp VII: Roger & Friends Troutman/Delta(2018)

説明不要の伝説的ファンク集団がレスター・トラウトマン親子の主導で15年ぶりに仕上げたアルバム。往時のアイコン感は薄れようと〈24K〉以降の時流に即した軽やかさで踊ってみせる。タキシードとの“Shy”も収録!

 

CHROMEO Head Over Heels Big Beat/Atlantic(2018)

タキシードとは別の正装で〈あの時代〉の音に挑んできたファンシー・フットワークの先達。この最新作ではロドニー・ジャーキンスやドリーム、DJクイックら大物も巻き込みつつ趣味性を濃くしているのがおもしろい。

 

XL MIDDLETON 2 Minutes Till Midnight MoFunk(2019)

デイム・ファンクとの交流もあってガチなブギー職人に傾倒していたパサデナのギャングスタが久々にラップに重きを置いた新作。とはいえ心地良いヴァイブはそのままで、来るべきGファンク再燃に備えるかのよう。

 

MIDAS HUTCH The Feels & The High Manhattan/LEXINGTON(2018)

オランダで活動するFSグリーンのプロジェクトで、RIRIなどのリミックスでも知られるマイダス・ハッチ。ディスコ/ブギー系を主体に90年代に接近した結果、NJS~Gファンクまでも薫るサウンドが心地良い。