NEW GENE
自由度が無限大な「火の鳥」のインスパイア盤が登場!

手塚治虫の生誕90周年を機に「火の鳥」にまつわるコンピレーション・アルバムがリリースとなる。手塚が生涯をかけ、1954年から1986年に渡って連載された同作は、舞台は日本から宇宙まで、時は太古から未来までが描かれた超大作マンガ。そんな壮大すぎる「火の鳥」からのインスピレーションを基に新曲を書くというのは生半可な覚悟では取り掛かれないであろうプロジェクトだが、この不朽の名作に感銘を受けた10組のアーティストが思い思いの表現で挑んだ。
お題はあれど、細かい指定がない。半ば無茶振り(?)なオファーで、制作側には相当なプレッシャーがあったからこそ、本作は緊張感たっぷりでスケールが大きい、自由度の高いインスパイア・アルバムに。先陣を切る浅井健一をはじめ、GLIM SPANKY、佐藤タイジはロックの熱量十分に、どこか憂いを帯びたヴォーカルと艶っぽいギター・サウンドで聴き手の想像力を喚起。Shing02 & Sauce81は一転、ダークなピアノが渦巻く狂気じみたトラックと芸術を問うラップで本質に迫り、TeddyLoidはAI(人工知能)を自称するKizuna AIと共に、火の鳥そのものを彷彿とさせる儚くも鮮やかなEDMアレンジで魅了。インスト・バンドのtoconomaはシネマティックで切ない音像を通して〈人間とは何か〉を伝えてくる。曲調はバラバラでも、得意な音楽性で作品へ魂を込める姿勢は誰もが揺るぎなく素晴らしい。
なかでも、感情が芽生えたロボットを思わせるやくしまるえつこの朗読から、すべてに手を差し伸べるような七尾旅人の深遠さ、コード進行の妙と子どもたちの歌声で時代の行き来を表したドレスコーズへと繋がる流れは完璧。森山直太朗が最後に弾き語りで残す余韻もたまらなく優しい。これは、マンガのほうも読みたくなる! *田山雄士
『NEW GENE, inspired from Phoenix』に参加したアーティストの作品。
左から、浅井健一の2019年作『BLOOD SHIFT』(ARIOLA JAPAN)、GLIM SPANKYの2018年作『LOOKING FOR THE MAGIC』(ユニバーサル)、11月6日にリリースされる佐藤タイジのニュー・アルバム『My Hero』(WISDOM)、Shing02 & Sauce81の2019年作『S8102』(OCTAVE)、TeddyLoidの2018年作『SILENT PLANET: INFINITY』(EVIL LINE)、Kizuna AIの2019年作『hello, world』(upd8)、toconomaの2017年作『NEWTOWN』(JUNONSAISAI)、10月30日にリリースされるやくしまるえつこのニュー・シングル“アンノウン・ワールドマップ”(みらいrecords)、七尾旅人の2018年作『Stray Dogs』(felicity)、ドレスコーズの2019年作『ジャズ』(EVIL LINE)、森山直太朗の2018年作『822』(ユニバーサル)