シンガー・ソングライターもラッパーも抑えたトーンで個人の言葉を綴るこの時代、ROTH BART BARONもまた彼らと歩調を合わせつつ、一人一人が肩を寄せ合うような、過去でも未来でもない共生社会を音楽で描き出す。童謡のような“けもののなまえ”で稀有な存在感を放つ弱冠14歳のHANAをはじめ、ermhoi、Maika Loubte、優河という才媛たちが三船雅也に寄り添い、音数を絞ったトラックの上で紡ぐ歌の数々はどれも味わい深いものばかり。徳澤青弦カルテットによる流麗なストリングスも、異質な個性を持った岡田拓郎のギターも、それぞれがこの世界を構成する主人公の一員だ。寂寥感と昂揚感が波のように寄せては返す構成も見事で、賞賛を集めた前作『HEX』をも上回る、現時点での最高傑作。