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【Pop Style Now】第66回 レゲエの新鋭コーフィー × ラッパーのガンナ、ウィークエンド待望の新曲など、今週の洋楽ベスト・ソング5

2019年11月22~29日

【Pop Style Now】第66回 レゲエの新鋭コーフィー × ラッパーのガンナ、ウィークエンド待望の新曲など、今週の洋楽ベスト・ソング5

天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。〈カニエ通信〉です。カニエ・ウェスト初のオペラ『Nebuchadnezzar』され、賛否両論……というか、酷評されています。あと、映画「ジーザス・イズ・キング」の日本公開が決まりました。12月6日(金)~8日(日)の3日しかやらない!」

田中亮太「へー。それにしても、クリスマス/ホリデー・シーズンが近づいてきて、リリース作品が減ってきましたね。ただ、欧米の音楽シーンはホリデー一色。ケイシー・マスグレイヴスの『The Kacey Musgraves Christmas Show』ササミの『lil drmr bb』アンドリュー・バードの『HARK!』ルーシー・ダカスの『2019』と、ホリデー・アルバムはたくさん出ています」

天野「重要なのを忘れていますよ! マライア・キャリー『Merry Christmas』(94年)の25周年記念盤! 超名盤じゃないですか。あと、チャンス・ザ・ラッパーは今年もなにか出すのかな~」

田中「どうですかね。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

1. Koffee feat. Gunna “W”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉はコーフィーとガンナの共演曲“W”! なぜかオフィシャルのミュージック・ビデオが日本では観られないので、日本版と思われるビデオを載せておきます。読者のみなさまが覚えていらっしゃるかはわかりませんが、コーフィーは1月にご紹介しました。ジャマイカのレゲエ・シンガーで、2000年生まれの19歳。僕は2019年の顔の一人だと思っていて、この一年注目していたんです」

田中デビューEP『Rapture』は、レゲエというジャンルの枠を越えてヒットし、高い評価を得ましたね。なんと、グラミーの〈最優秀レゲエ・アルバム賞〉にもノミネートされています。EPとはいえ、最近のアーバンっぽいものからルーツ・レゲエ、ダンスホールまで、さまざまなスタイルに挑んでいて、新人とは思えない力強さを感じた作品でした。そんな彼女の新曲“W”は、レゲトンやラテン・トラップなどの要素が入った、かなりイマっぽいアーバン・レゲエ。クールですね」

天野「客演は米ジョージア州アトランタ、カレッジ・パークの売れっ子ラッパーで、こちらも今年の顔と言っていいガンナです。この組み合わせもイマっぽいというか、〈アメリカ市場に乗り込むぞ!〉と勝負に出ている感じがして、頼もしいですね。ジャンルの壁を軽々と乗り越えていく感じがすごくいいですね」

田中「ビデオでは現在の欧米で大きなトピックになっている気候変動を扱っていて、この感じもまさに〈2019年〉。コーフィーの新作が楽しみですね。グラミー受賞にも期待大!」

 

2. The Weeknd “Heartless”

天野「2位はウィークエンドの“Heartless”です。ちょっと忘れかけていましたが、2018年のEP『My Dear Melancholy,』以来の新曲。カヴァー・アートが公開されたとき、超笑顔で赤いジャケットを着て、イルミネーションをバックにした写真だったので、〈ウィークエンド、どうしたんだろう?〉と話題になっていましたが、歌も音もまさにウィークエンド、って感じで安心しました(笑)」

田中「ちょっとホリデー・シーズン感ありますね。リリックでもシャウトアウトされているように、プロデューサーの一人はトラップのナンバーワン・プロデューサー、メトロ・ブーミンです。あとはウィークエンド作品の常連であるイランジェロ(Illangelo)や、ウィークエンド自身もプロデュースに参加。太いキックとサブ・ベース、ダークなムードのサウンドはウィークエンド印。ちなみに、“Heartless”リリースの2日後には“Blinding Lights”という曲も発表されていて、僕は恥ずかしいくらい80年代エレクトロ・ポップ路線な“Blinding Lights”のほうが新鮮でおもしろかったですね」

天野「え~。そうですか? “Blinding Lights”は“False Alarm”とか、『Starboy』(2016年)の曲にかなり似た路線だと僕は思いましたよ。まあ、ダサいのか、かっこいいのかよくわからないデジタル・シンセサイザーの音色にはびっくりしました。ボルチモアのシンセ・ポップ・バンド、フューチャー・アイランズの曲みたいだなって。それはさておき、“Heartless”は“Blinding Lights”と併せて〈ウェルカムバック・ウィークエンド!〉って言いたくなるいい曲でした。『My Dear Melancholy,』は暗すぎ、地味すぎだったので……」

田中「力強いですよね。〈フォトシュート、俺はスターさ/『タイム』に『ローリング・ストーン』、『ハーパーズ・バザー』から取材を受けるんだぜ〉と自信満々な、ふんぞり返りまくったリリックもご愛嬌。今回の2曲は4作目のアルバムに収録されるようですので、新作が待ちきれないですね」

 

3. Kvelertak “Bråtebrann”


天野「3位はノルウェー、スタヴァンゲルのメタル・バンドであるクヴァラータクの新曲“Bråtebrann”。まず、〈Kvelertak〉というバンド名の読み方がわからなくて困りました(笑)。クヴァラータクは2013年に来日していて、〈ラウド・ロックンロール〉とか〈パンク? ブラック・メタル?〉とか、いろいろな言葉で紹介されています。本人たちは〈ロック・バンドという意識が強い〉と語っていますね」

田中「〈ラウド・ロックンロール〉っていうのはわかるかもしれません。CBGB系ガレージ・パンクの猪突猛進さやAC/DCのようなビートとグルーヴがあるので、メタルというよりパンキッシュなハード・ロックですよね。僕はAメロまでは、アンスラックスっぽくて最高だなー、と思ってました。この曲ではギター・ソロの前に〈ヘイ、ギター、カモン!〉って言っているのが、まさに〈ロックンロール〉って感じ(笑)。あと、クイーンっぽいオペラっぽい大仰なコーラスも魅力的です」

天野「2007年の結成当初からいたヴォーカリスト、オーランド・ヒェルヴィクが脱退してしまって、この“Bråtebrann”は新たにイーヴァル・ニコライセンを迎えた新体制初の新曲だったようです。ニコライセンの叫び散らすヴォーカルもかっこいいですね。バンドはこれまで、コンヴァージのカート・バルーと作品を作ったり、バロネスのジョン・ダイアー・ベイズリーにカヴァー・アートを描いてもらったり、ロードランナーと契約してフー・ファイターズやマストドンと共演したり、アメリカのシーンとつながりが深いようです。でも、アメリカのブラック・メタルとちがって病んでいなくて、あっけらかんとしている感じがいいな、ロックンロールだなって思いました」

田中「なるほど。北欧メタルということで、お好きかどうかはわかりませんが、Mikikiではおなじみの西山瞳さんに聴いてもらいたい一曲ですね!」

 

4. George Clanton & Nick Hexum  “Under Your Window”


田中「4位はジョージ・クラントン&ニック・ヘクサムの“Under Your Window”。クラントンはヴェイパーウェイヴの代表的なアーティストで、100%エレクトロニカというレーベルを運営しています。今年は、世界初のヴェイパーウェイヴ・フェスと言われている〈100%Electronicon〉の開催でも話題を集めていました」

天野「ヴェイパーウェイヴといえば、『ユリイカ』の特集号が出ましたね。びっくりしました。そこで友人の伏見瞬さんが〈ヴェイパーウェイヴほめご…大絶賛キャンペーン(くたばれジョージ・クラントン!)〉という、超ぶっとんだ文章を書いていましたよ(笑)。僕もヴェイパーウェイヴには一家言あります! ジョージ・クラントンの別名義〈ESPRIT 空想〉はヴェイパーウェイヴ史的に後から出て来たので、初期ヴェイパーウェイヴ原理主義者としてはそんなに好きじゃないんですけど(笑)。まあでも、『200% Electoronica』(2017年)や『Slide』(2018年)はけっこう聴きました」

田中「僕も〈ESPRIT 空想〉名義より、ジョージ・クラントンとしての音楽のほうが好きですね。特に『Slide』は相当ハマりましたね。ドリーミーでグルーヴィーで、ヴェイパーウェイヴ文脈というよりは〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ耳〉にフィットするんですよね~。っていうとノスタルジーで評価しているみたいですが……」

天野「90年代にとらわれすぎです(笑)。もう2020年間近ですよ! そんな亮太さんなら、ジョージ・クラントンがこの曲のコラボレーター、ニック・ヘクサムと最近仲良くしているのはうれしいんじゃないですか。なんせ、90年代に一世風靡したミクスチャー・ロック・バンド、311のフロントマンですからね。僕としては〈ふーん〉って感じですが、この“Under Your Window”は、マンチェスター・サウンド的なビートとセンチメンタルなメロディーが組み合わさっていて、亮太さんが好きなのは納得です」

 

5. U2 & A.R. Rahman “Ahimsa”

田中「今週のラストはU2の“Ahimsa”。これはインドを代表する作曲家、A.R.・ラフマーンとの共作曲です。U2はちょうど昨日まで13年ぶりの来日公演を行っていましたね。今回は名盤『Joshua Tree』(87年)のリリース30周年アニヴァーサリー・ツアーだったんですけど、同作からの名曲と同じくらい、日本の女性活動家を讃える演出や、先日アフガニスタンで銃撃されて亡くなられた医師・中村哲さんへの追悼などが感動的だったようで。これは行くべきだったな……」

天野「めちゃくちゃ観たかったけど、忙しすぎて観に行けませんでした! しかし、U2の新曲で締めか~……。この曲も良いのか悪いのか、なんだかよくわからない……」

田中「ですかねー。僕は、どうにも音楽的な方向性がはっきりしないように感じていた近年の彼らのなかでは、いちばんパワフルな楽曲だと感じましたよ。ちなみに曲名の〈Ahimsa〉とはサンスクリット語で〈非暴力〉を意味する言葉とのこと。今回のツアーの最終日がバンド初のインド公演なので、そこに照準を合わせた面も強いと思いますが、紛れもなく現在の世界情勢を受けたメッセージなのはまちがいないでしょうね。911テロ後の彼らのライヴが圧倒的だったように、やはりバンドとしてすべきことが明確なときの彼らは、とてつもなく強いです。12月15日(日)のインド公演も行くっきゃないですな!」

天野「……どうぞいってらっしゃいませ。今週はロック寄りで、ラップがなかったですね」

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