10. Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus “Old Town Road (Remix)”
田中「出ました~! リル・ナズ・Xの“Old Town Road”が10位。Billboard Hot 100では4月から8月にかけて、19週連続で首位をキープしていました。カントリー・チャートに入れる/入れないという論争を巻き起こすなど、話題性は今年イチの楽曲でもありますよね。もちろん、曲がやたらめったら魅力的だからこそのヒットなんですが」
天野「超シンプルでわかりやすくて、ノリやすい曲だからこそTikTokでミーム化して、めちゃくちゃウケたんでしょうね。僕たちは最初、この曲のよさがよくわかっていなかったのですが、聴いているうちにすっかり好きになっちゃいました(笑)。で、もう一つ重要なのは、アフリカ系のリル・ナズ・Xがカントリーを取り入れたビートでラップをした、というハイブリッドなねじれ。ジャンルや人種の垣根をぶっ壊していく痛快さがありましたし、そこにカントリー界の大御所であるビリー・レイ・サイラスが〈俺も入れて!〉って飛び乗ってきたこともおもしろい。単なるヒット・ソングという以上に、すごく重要な意味を持った曲である気がします」
9. BLACKPINK “Kill This Love”
田中「そして9位はK-Popグループ、BLACKPINKの“Kill This Love”! やはりトップ10ともなればビッグ・ヒットが続きますね。今年は〈コーチェラ〉への出演も果たした彼女たち。ここ日本では、3大ドーム・ツアーも12月に行いました。やっぱり〈2019年のK-Pop〉を選ぶとしたら、これになっちゃいますよね。BTSとホールジーの“Boy With Luv”も迷いましたが……」
天野「でもサウンドのパワフルさと、BLACKPINKというアーティストの存在感を鑑みると、“Kill This Love”に軍配が上がるかなと! 勇ましいホーンとヴァラエティーに富んだリズムの展開で盛り上げまくるこの曲は、飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼女たちならでは、じゃないでしょうか。ジェニーがサビで歌う〈Rum, pum, pum, pum, pum, pum, pum〉は、2019年ベスト・フレーズのひとつ!」
8. Summer Walker feat. Bryson Tiller “Playing Games”
天野「8位はサマー・ウォーカーの“Playing Games”。彼女も、2019年を通してもっとも大きな成功を収めたシンガーの一人です。セクシーなジャケット写真が印象的なデビュー・アルバム『Over It』は、全米チャートで2位を記録しました」
田中「同作からのヒット・シングルが、ブライソン・ティラーと歌い交わしたこちら。デスティニーズ・チャイルドの名曲“Say My Name”(99年)をサンプリングしたメロウな意匠と、〈私の名前を呼んでくれないの?〉〈私との関係って遊びなわけ?〉と恋人を責めるウォーカーの艶めかしい歌声が最高ですね。プロデューサーは、恋人でもあるロンドン・オン・ダ・トラック(London On Da Track)。2019年屈指のR&Bソングだと思います!」
7. DaBaby “Suge”
天野「続いては、〈2019年の顔〉と言っていいラッパー、ダベイビーのヒット・ソング“Suge”です。彼は今年、もっとも成功したラッパーの一人ですよね。『Baby On Baby』と『KIRK』という2作のアルバムは、いずれも高い評価を得ました。作品の発表ペースがめちゃくちゃ早いのも、イマドキな感じ」
田中「米ノースカロライナ州シャーロットで育ったダベイビーは、同地のシーンを代表する存在です。おむつを穿いたり、赤ちゃんネタを使ったリリックをラップしたりと、ユーモラスなキャラクターがウケているんですよね。〈俺は(ドクター・ドレーとデス・ロウを立ち上げた)若きCEO、シュグ・ナイトだ〉とぶち上げるこの曲も、MVではふざけっぱなし。ハードなストリート感とのギャップも、また魅力的です」
6. HAIM “Summer Girl”
天野「6位はハイムの“Summer Girl”! ロック史に残るルー・リードの名曲“Walk On The Wild Side(ワイルド・サイドを歩け)”(72年)にオマージュを捧げた一曲で、ジャズ風のアレンジとメロディー、スキャットが印象的ですね。一度聴いたら忘れられないです。ポール・トーマス・アンダーソン監督が撮ったMVも必見!」
田中「連載でご紹介したとおり、この曲の歌詞はメンバーのダニエル・ハイムがパートナーであるアリエル・リヒトシェイドに贈ったものです。リヒトシェイドが精巣がんで闘病していたとき、ダニエルはツアーでそばにいられなかったので、〈私はあなたのサマー・ガール〉と書いたんだとか。そんなエピソードを踏まえると、いっそう感動的ですよね。さて。ついにトップ5です!」