EASTOKLAB日置逸人の極私的金字塔

múm『Finally We Are No One』 誰でもない僕らは、自分らしく進んでいけたらいい

múm『Finally We Are No One』 誰でもない僕らは、自分らしく進んでいけたらいい

年が明けてからというもの、すぐにレコーディングがあって、それからライブがあって、帰ってきたらバッタリと体調を崩して、ドタバタだった。音楽もあまり聴かなかった。疲れすぎていたのかもしれない。この連載もかなり遅れてしまった。待っててくれていた人がいたら、すみません。今年もよろしくお願いします。

そんなわけで年明け早々にレコーディングがあって、真っ白な雪が積もる山奥に5日間篭っていた。音は雪に吸い込まれるかのように、辺りは静寂。とても綺麗で、それでいて何処か寂しい感じがした。いつか写真で見たアイスランドの風景を連想して、múmの音楽が頭に浮かんで、ボーっとスタジオの外で雪を見ながら聴いた。

冷たい空気の中で鳴るmúm『Finally We Are No One』は小さく灯った炎のように暖かかった。

MÚM Finally We Are No One FatCat(2002)

múmを好きになったのは随分と前だったと思う。もうハッキリ思い出せないけれど、高校の頃に何かで知って、それからゆっくりとアルバムを揃えていったことはよく覚えている。特に最初に聴いたこのアルバムは格別で、未だに時々思い出して聴いている。バンドをやっている友達には案外múmが好きな人が多く、そのときは決まってこのアルバムの話をする。

一番好きな曲はM-2“Green Grass Of Tunnel”で、このTAICOCLUBでのライブ映像を誰かと夜中に見て感動したことがあった。誰だっけ。

久々に見たけど、本当に凄い。Awesome!!とか言ってみたくなる。生楽器とエレクトロニクスの調和が素晴らしくて、この絶妙なバランスは僕自身が今音楽を作る上での大きな指針になっていると思う。何より心から演奏を楽しんでいる姿が美しすぎて、不意に泣きそうになる。

グリッチビートの上を、歌と鍵盤、弦楽器が流れるように泳いでいるみたいで、そっと寄り添うように心を包んでくれる。それと同時に、そこはかとなく漂う切なさが全体にあって、何度聴いても胸が締め付けられる。ライブverも最高だけれど、音源でも是非聴いてみて欲しい。

múmはもちろん、アイスランドの音楽というとSigur Rós やSin Fangなども、とても大きな多幸感と優しさを含んでいて、でも何処か寂しいような空気も一緒にあって、それが僕は好きなのだと思う。きっと僕らってどんなに楽しい時も、心の隅には僅かばかりの悲しさを覚えてしまっているわけだし。そんな感覚と音がリンクして、とてもリアルに聴こえるみたいな。

このM-3“We Have A Map Of The Piano”も、とても美しくて、優しくて、そして切ない。

この2曲の後は、ほとんどインストゥルメンタルの楽曲が続いていく。それは音の重なりが生み出す美しい光のようにも感じられるし、長く切ないエンドロールのようにも感じられる。

ラストまで、時間や生活よりもゆっくりと流れていくような音に、いつまでも浸っていたくなる。あっけなく途切れてしまう最後の一音まで、全ての音が大好きだと改めて思った。

ついさっき知ったのだけれど、このアルバムはメンバーが灯台で働いている際に制作され、後にスタジオ録音されたものであるそうだ。いつだったか灯台守をテーマにした映画を観たことがあるけれど、その時に感じた孤独感と、このアルバムの音は確かに似ている気がする。それが妙に腑に落ちて、また好きになった。

年が明けて、長い休みとドタバタした年始のあれこれが終わって、また普通の生活が始まっている。今年はどんな年にしたいだろう。まぁ、健康に過ごせればいいのかもしれない。でもやっぱり、想像してるよりずっと、素敵な未来を見たい。〈Finally We Are No One〉(訳:結局、僕らは誰でもない)誰でもない僕らは、自分らしく進んでいけたらいいと思う。僕もいい音楽を作っていく。楽しみにしていてください。

 


RELEASE INFORMATION

EASTOKLAB EASTOKLAB DAIZAWA(2019)

恍惚に満ちたファルセットボイス
ダイナミックなアンサンブルで美しさを描く
退屈を撃ち抜く鮮やかなデビューアルバム完成!

EASTOKLAB
Debut Mini Album『EASTOKLAB』
2019.06.05(Wed)Release
UKDZ-0200 ¥1,700(w/o tax)
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.

1. Fireworks
2月 In Boredom
3. Passage
4. Always
5. New Sunrise
6. Tumble

 


LIVE INFORMATION
ACUA Japan Tour 2020
2020年2月6日(木)愛知・名古屋 K.Dハポン
Jack in the Boxxx!! 2020 -Day1-
2020年2月17日(月)愛知・名古屋 CLUB UPSET
FLASHBACK
2020年2月24日(月)茨城・水戸 SONIC
DREAMWAVE Vol.1 -Day 1-
2020年3月7日(土)愛知・名古屋 DAYTRIP
IMAIKE GO NOW 2020
2020年3月14日(土)、15日(日)名古屋・今池 全10会場
OTOEMON FESTA 2020
2020年3月21日(土)大阪・福島 LIVE SQUARE 2nd LINE
PLAY VOL.88
2020年3月23日(月)東京・渋谷 La.mama
ユレニワ “ピースの報せ” Release Tour
2020年3月25日(水)愛知・名古屋 HUCK FINN
★各公演の詳細はこちら

【プロフィール】
日置 逸人

日置 逸人 (ひおき はやと)

EASTOKLABのヴォーカル/シンセサイザー/ギターを担当。バンドの他に、WD SOUND WORKSでレコーディング・エンジニアとしても活動する。2019年6月5日、DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECTよりミニ・アルバム『EASTOKLAB』をリリース。

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