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【Pop Style Now】第74回 ミーク・ミルの二プシー・ハッスル追悼曲、リル・ナズ・X × ナズの夢の競演など、今週の洋楽ベスト・ソング5

2020年1月24~31日

【Pop Style Now】第74回 ミーク・ミルの二プシー・ハッスル追悼曲、リル・ナズ・X × ナズの夢の競演など、今週の洋楽ベスト・ソング5

天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週はなんといってもこの話題でしょう。第62回グラミー賞授賞式が1月26日に開催されました! 受賞結果はMikikiでもお伝えしています」

田中亮太「主要4部門を独占したビリー・アイリッシュは、ここ日本でお茶の間にまで浸透しましたよね。『スッキリ』にタナソーこと田中宗一郎さんが解説で出演するという珍事もありました。天野くんはグラミーの結果についてはどう思いますか?」

天野「言いたいこと、いっぱいありますよ! まず、アリアナ・グランデが1部門も受賞していないことには怒っています!! ビリーも〈年間最優秀アルバムはアリの『thank u, next』が獲るべきだった〉って言っていましたしね。同感! ロザリア(Rosalía)やコーフィー(Koffee)といった、〈いま〉を象徴する大好きな音楽家たちが受賞したのはうれしかったけど。あとは最優秀ラップ・アルバムを異端児のタイラー・ザ・クリエイターが獲ったのは驚きでしたが、カテゴライズやジャンル分けによる人種差別に異議申し立てをしていたのはとても印象的でした

田中タイラーのパフォーマンスは圧巻でしたね。それでは今週のプレイリストと、そのグラミーとも深く関係している〈Song Of The Week〉から!」

 

1. Meek Mill feat. Roddy Ricch ”Letter To Nipsey”
Song Of The Week

天野「今週はやっぱりこれかなと。〈SOTW〉はミーク・ミルとロディ・リッチの“Letter To Nipsey”。先日のグラミー賞授賞式で披露された、故ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)に捧げられた一曲です」

田中「LAを代表するラッパーのニプシーは、2019年3月に凶弾に倒れました。生前は自身の経験を活かし、ギャング・カルチャーの暴力性から若い黒人たちを守ろうと尽力。ビジネスや教育の面で地元のコミュニティーをサポートしてきたニプシーは、とても尊敬されていた存在です。それゆえに、彼の死は大きな衝撃をもたらしました」

天野亡くなる前に発表されたシングル“Racks In The Middle”と、DJキャレドとの“Higher”がグラミーを受賞しましたね。おばあちゃんや家族が総出で壇上に上がっていたのが印象的です。授賞式ではキャレドとジョン・レジェンド、ミーク・ミル、YG、ロディ・リッチがトリビュート・パフォーマンスを披露。ニプシーの偉大さを痛感しました。この曲はそんなニプシーに捧げられた一曲で、彼にフックアップされたロディ・リッチが客演しています――ロディ・リッチはいま、“The Box”が大ヒット中ですよね。この“Letter To Nipsey”、僕は特に〈マラソンが続くように、俺たちは走り続ける(絶対に止まらない)〉というラインに感動しました。〈マラソン〉はニプシーのブランドですし、彼のミックステープに掲げていた言葉ですから。改めて、RIPニプシー・ハッスル。安らかに」

 

2. Lil Nas X feat. Nas ”Rodeo (Remix)”

天野「ラップ・ソングが続きます。2位は、グラミーのステージで披露されたことも話題だったリル・ナズ・Xの“Rodeo”のリミックス・ヴァージョン。もともとはEP『7』(2019年)の収録曲で、カーディ・B(Cardi B)との共演曲。今回はなんと、米NYはクイーンズの超大物ラッパー、ナズが参加。この組み合わせには誰もが驚いたはず!」

田中「なにせ、〈リル・ナズ × ナズ〉ですからね。そもそも、リル・ナズの名前の由来がナズなわけですから。まあ、師弟関係というわけではないのですが(笑)。この曲でナズは、カントリー・ラップらしい単語を随所に散りばめながら、〈Nas X or Big Nas〉というラインで締めているのが粋。リル・ナズは、グラミーでのBTSとの共演も話題でした。“Old Town Road”(2019年)の一発屋に終わらずに、2020年の活躍も期待できそう!」

 

3. Gorillaz feat. slowthai & Slaves ”Momentary Bliss”

天野「今週の3位は、ゴリラズの新曲“Momentary Bliss”。僕が大好きなUKのラッパー、スロウタイと、亮太さんが大好きな2人組パンク・バンド、スレイヴスがフィーチャーされています」

田中「英国社会への痛烈な批判をハードなサウンドに乗せてきた2組なので、どんな過激な楽曲になっているかと思いきや、スレイヴスのアイザック・ホールマン(Isaac Holman)が歌うAメロは、いつものメロウなゴリラズ節。ただ、30秒を過ぎたあたりでスロウタイが登場すると、ベース・ミュージック的なサウンドに移行し、コーラス部分は完全にパンク。全編を通じて、レゲエ/ダブの隠し味が効いているところがイギリスの音楽らしいですよね」

天野「レコーディング中の映像を使ったミュージック・ビデオも、ポップでかっこいいです。iPhoneを見ながらラップするスロウタイの姿に痺れますね。なお、ゴリラズはしばらく従来の形式でアルバムをリリースしないんだとか。これからは〈Song Machine〉というシリーズで、さまざまなアーティストとコラボレーションしていくみたいです。アルバム・リスナーとしては残念ですが、時代の流れには合っているかも。今後の動きも楽しみですね」

 

4. Caribou “Never Come Back”

田中「カリブーの新曲“Never Come Back”が4位。ダン・スナイスのこのプロジェクトは、当連載の〈2020年期待の洋楽アーティスト50!〉でも取り上げましたよね。この曲を収録した新作『Suddenly』は、2月28日(金)にリリースされるんだとか」

天野「これまで発表されてきたシングルの“Home”と“You And I”は、〈ラウンジ的〉と言えそうな落ち着いたテンポの楽曲だったんですけど、この新曲はフロア・バンガ―なトラックに仕上がっていますね。〈いかにも亮太さんが好きそうだな~〉と思っていたら、やっぱり〈PSN〉の候補曲としてプッシュしてきましたね(笑)」

田中「はい、ものすごくツボでした(笑)。レイヴィーなシンせのフレーズとパーカッシヴなビートがたまりません……。僕、カリブーはエモいところが好きなんですけど、この曲もそうですよね。スナイスの柔らかな声で〈決して戻らない〉と繰り返されると、たまらなく胸が痛くなってきます。加えてこの曲は、歌メロの乗せ方も効果的。クラブでかかったら、泣きながら爆踊りしちゃうな~」

 

5. Reason “Show Stop”

天野「今週最後の曲は、リーズンの“Show Stop”。彼は米カリフォルニア州カーソン出身のラッパーで、TDEことトップ・ドッグ・エンターテインメント(Top Dawg Entertainment)に所属しています。この曲には、クレジットこそされていませんが、盟友のケンドリック・ラマーが参加していますね! ちょっとびっくりです」

田中「いわゆる〈アドリブ〉と呼ばれる合いの手の部分をケンドリックが担当していますね。声が特徴的なので一発でわかります。ここでリーズンはウォーク(woke)・カルチャー、つまり、過剰にポリティカル・コレクトネスを意識する態度からは距離を置き、〈コンシャスでいるなんてファックだ〉とラップしています。自身の出自であるゲットーに思いを馳せながら、〈成功を手に入れるんだ!〉と息巻いていますね」

天野「エンターテインメントの世界におけるウォークには良い面と悪い面があるので、なんとも難しい問題ですね……。でも僕はリーズンのファンなので、とりあえず〈頑張れ!〉とは言いたいです。彼は、J・コール率いるドリームヴィル(Dreamville)によるヒット・コンピレーション『Revenge Of The Dreamers III』(2019年)にも参加していましたし、2020年の活躍に期待したいですね。さらに今年は〈ケンドリックが新作を出すかも?〉と噂されているので、TDE勢からは目が離せません。いや~、今週の〈PSN〉はラップが多くて、僕は大満足でした(笑)」

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