©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

 こうした二部構成の「WAVES/ウェイブス」は、音楽と映像によって描かれていく〈人生の光と影〉、そして〈再生〉の物語だ。登場人物の心理状態は、台詞以上にオリジナル・スコアを含めた音楽と、大胆なカメラワークや画面の比率が変化する映像によって表現されている。トレイ・エドワード・シュルツ監督が自ら選曲した計31曲は、ダイナ・ワシントンの“What A Difference A Day Makes”を除くと、アニマル・コレクティヴやケンドリック・ラマー、レディオヘッド、タイラー・ザ・クリエイターなど、エッジの効いた現代のポップ・ミュージックばかり。その中でも、きわめて印象的なのは、フランク・オーシャンの“Seigfried”だ。短髪のタイラーは、フランク・オーシャンと同じように髪を脱色している。そしてオーシャンの曲は全部で5曲も使われている。だから「WAVES/ウェイブス」はまるでオーシャンのために作られたのではないかと思ってしまうほどだが、ともあれ、美しさともの悲しさの均衡が絶妙に保たれたシーンに流れる“Seigfried”はすごく心に響く。そしてさらなる極め付きの選曲は、エンドロールで流れるアラバマ・シェイクスの“Sound & Color”。歌詞を聴くと、この“Sound & Color”がラストにふさわしい曲であることを実感するが、まさに本作のテーマを収斂している。なぜなら「WAVES/ウェイブス」は、色のない人生に陥った者たちが、〈音〉も〈色〉もある人生を取り戻していく物語なのだから。

 


「WAVES/ウェイブス」
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
音楽:トレント・レズナー/アッティカス・ロス
出演:ケルヴィン・ハリソン・ジュニア/テイラー・ラッセル/スターリング・K・ブラウン/レネー・エリス・ゴールズベリー/ルーカス・ヘッジズ/アレクサ・デミー 他
配給:ファントム・フィルム(アメリカ 2019年 135分 PG12)
2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
http://www.phantom-film.com/waves-movie/