Photo by Ian Witchell

アニマル・コレクティヴのメンバーが全員集結した5年ぶりのソロ作

 ブルックリンで結成されたアメリカのインディー・シーンを代表するバンド、アニマル・コレクティヴ。現在、メンバーぞれぞれが違う場所に住んで断続的に活動を続けているが、なかでも精力的に活動しているのがヴォーカル/ドラマーのパンダ・ベアことノア・レノックスだ。アニマル・コレクティヴが6年ぶりの新作『Time Skiffs』をリリースした2022年には、ソニック・ブームとのコラボレーション・アルバム『Reset』を発表したが、今度は5年ぶりのソロ名義のアルバムを完成させた。レコーディングは現在ノアが暮らしているポルトガルの自宅スタジオで行われ、そこにアルバムの共同プロデュースを務めたディーケンをはじめアニマル・コレクティヴのメンバー全員が集結。ノアのソロ作にバンドが集まるのは初めてのことだ。

PANDA BEAR 『Sinister Grift』 Domino/BEAT(2025)

 これまでノアは様々な作風でアルバムを発表してきたが、本作はバンド・サウンドをベースにしたロック色が強い曲が並んでいる。アルバムを通してレゲエのリズムがゆったりしたグルーヴを生み出すなか、親しみやすいメロディが際立っていて、ノアのソングライターとしての成熟ぶりが伝わってくる。思えば『Reset』はソニック・ブームがサンプリングした60年代ポップスのイントロを発展させて曲を作り上げていったが、本作のキャッチーなポップ・センスには『Reset』からの影響もあるのかもしれない。リヴァーブをたっぷりかけて奇妙なエフェクトを散りばめたサイケデリックな空間はノアらしい音作りだが、近年、ゴシックなムードを漂わせたサイデリックなサウンドで注目を集めるシンディー・リーがギターで参加しているのが目を引く。また、ノアの伸びやかな歌声に、現在のノアのパートナー、リヴカ・ラヴェテ(スピリット・オブ・ザ・ビーハイヴ)のコーラスが曲に華を添えて、これまで以上に〈歌〉を浮かび上がらせているところにシンガー・ソングライター的な生々しさを感じさせたりもして、パンダ・ベアの新たな代表作になりそうだ。