新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年4月から休業していた〈TOWER VINYL SHINJUKU〉。それから約2か月が経ち、ついに営業を再開しました。レコード・ファンとしてはうれしい限り。連載〈TOWER VINYL太鼓盤!〉も再始動です。
今回は、4月初頭に収録するも掲載を見送っていたインタビューをお届けします。テーマは松田聖子の豪華仕様2枚組LP『Seiko Matsuda 40th Anniversary Bible -blooming pink-』。デビュー40周年を記念して4月1日(松田聖子がデビューした日)にリリースされた、ベスト盤〈Bible〉シリーズ初のアナログ盤です。
そんな『Bible』のリリースを機に、タワーレコード新宿店スタッフの田中学さんに松田聖子の音楽やレコードの魅力を訊きました。店頭展開の様子も、ぜひ写真でご覧ください(現在展開は終了しています)。
なおTOWER VINYL SHINJUKUとタワーレコード新宿店は、当面の間営業時間を11:00~20:00に短縮しています。また、ご来店の際はマスクの着用や手指の消毒、お客様どうしで距離感覚を空けていただくことなどをお願いしているとのこと。感染対策にご協力いただければ幸いです。
松田聖子のレコードは音がいいという定説
――最初に、田中さんのキャリアについて教えていただけますか?
「タワーレコードで働きはじめたのは96年頃で、池袋店が最初です。それから横浜モアーズ店に移りました。その後は秋葉原店、大阪の難波店、マルビル店と移り、川口店の店長もやりました。その後新宿店に来て、もう4年ほどですね」
――8階の邦楽フロアをご担当されているんですよね。
「僕のタワー人生で邦楽を担当しているのは初めてです。ずっと洋楽のソウルやヒップホップ、レゲエなどを担当していたので」
――今回は『Seiko Matsuda 40th Anniversary Bible -blooming pink-』がリリースされたので、このレコードについて田中さんにお伺いすることになりました。松田聖子さんについてお詳しいと聞きしましたが……?
「正直、聖子ちゃんに特化して詳しいわけじゃないんです。ただ、日本のポップスやシティ・ポップを掘っていくと、どうしても聖子ちゃんの周辺の人たちが気になってくる。たまに『レコード・コレクターズ』で特集が組まれるように、音楽を深く掘っていくといつかは〈松田聖子〉という大きな山に当たるんですよね。なので、〈松田聖子はまだいいかな?〉と思っていた時期もありました(笑)。
そんななかで15年くらい前に、日本人のDJたちが日本の音楽をかけはじめた時期があったんです。いまのシティ・ポップ・ブームとはまた別ですね」
――いわゆる〈和モノ〉ですね。
「ええ。DJ Crystal(現XTAL)とか、〈RAW LIFE※〉の周辺ですね」
――やけのはらさんとか。
「そうです。当時僕はよくクラブに行っていたので、そこで松田聖子を再発見しました」
――ではアイドル=聖子ちゃんが好きというわけではなく、松田聖子のレコードを音楽的に聴いていたと。田中さんが〈聖子ちゃん大好き!〉みたいな方だったらどうしようかなと心配していました(笑)。
「むしろ、そういう方を差し置いて僕が話すのは申し訳ないですね(笑)。
もちろん、聖子ちゃん世代ではあるんです。松田聖子、中森明菜、石川秀美、堀ちえみ……彼女たちの曲は僕が小学生の頃にヒットしていたので、普通に口ずさんでいました。それがまさか、音楽的にがっつり聴くようになるとは」
――松田聖子を〈再発見〉してからは、中古のアナログを買い集めるようになったんですか?
「特に7インチ・シングルを買っていますね。どこの中古レコード屋さんに行っても、〈松田聖子のレコードは音がいい〉という話になる。サウンドチェック用に聴くとか、そういう音質のポイントで聴いている方も多いようです。だから、ジャズ・ヴォーカルのレコードのような聴かれ方をしているんですね」
――スティーリー・ダンの『Aja』(77年)のようなレコードというか。
「そう。それはおそらく、当時の日本でいちばんお金かけていて、すごい作家陣を集めて、いちばん良いスタジオで録っていた録音物だからだと思います。
7インチも音が良くて、これが数百円で買えるんだからすごい。同じものを何枚も買っちゃいます。オリジナル・アルバムについても当時ソニーから〈マスター・サウンド・シリーズ〉という高音質盤が出ていて、それはいまも中古盤が高いですね。制作側も音質面を意識して作っていたと思います」