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1. Busta Rhymes feat. Kendrick Lamar “Look Over Your Shoulder”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉は、バスタ・ライムズがケンドリック・ラマーをフィーチャーした“Look Over Your Shoulder”! ものすごく強力なタッグですね。ジャクソン5“I’ll Be There”(70年)をサンプリングしていることも話題です。マイケルの〈Just look over your shoulder, honey〉というシャウトが印象的ですが、全編で同曲からの声ネタが使われています」

田中「ジャクソン5は多くのヒップホップ・ソングでネタに使われていますが、僕はやっぱり“I Want You Back”を使ったジェイ・Z “Izzo (H.O.V.A.)”(2001年)を真っ先に思い浮かべちゃいました。それにしても、この“Look Over Your Shoulder”はサンプリングの切り貼りと無骨なブレイクビーツが王道ブーンバップ調ですね。バスタが90年代初頭に在籍していたラップ・グループ、リーダーズ・オブ・ザ・ニュースクールの未発表曲と言われても信じちゃいそう」

天野「例がいちいち古いんですけど(苦笑)! 実はこれ、2018年にケンドリック・ラマ―の楽曲としてリークされたものがもとになっているんだとか。サンプリングの権利関係をクリアするのが難しいので、オフィシャル・リリースはないだろうと言われていたのですが、このたびめでたく日の目を見ました! 本日10月30日にリリースされたバスタの新作『Extinction Level Event 2: The Wrath Of God』に収録されています」

田中「なるほどー。そんな経緯があったんですね。ちなみに、最初のヴァースをケンドリック、2番目をバスタが担当していますが、両者とも〈ラッパーとして負けるものか〉という気合が入りまくったフロウで、めちゃくちゃかっこいい。矢継ぎ早に単語を詰め込んでいくスタイルは共通しているだけに、2人の個性がより際立っていますね」

天野「曲名どおり、2人は過去を振り返っています。ケンドリックはリリックを書きはじめたシーンを描写していて、バスタは〈仲間たちは俺とラップするのを怖がった〉〈ブラック・ヒストリーのキングのひとりと俺を認めるまで、やつらとのラップ・ゲームは火の海だった〉とボースティングをカマしています。2人ともかっこいい!」

田中「淡々と言葉を紡いでいきながらソウルフルに熱を高めていくケンドリック、トリッキーなタイム感で耳を飽きさせないバスタ。本当に甲乙つけがたい、白熱した勝負です。あなたはどちらがお好みですか?」