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単純なメロスピでは終わらせない“幽玄”

――3曲目の“幽玄”はイントロがシンフォニックで劇的ですが、この曲はいかがですか?

TORU「デモの段階からシンフォニックなイントロはあったんですけど、どうやったらゴージャスで迫力のある曲に仕上げられるかが課題だったんです。前から導入していて使いこなせていなかったシンセ系の音源を頑張って使ってみて、これならリリースして大丈夫かなというところまで持っていきました」

――2サビの後半にテンポが落ちで違うメロディーが始まるところが印象的ですね。

TORU「単純なメロスピでは終わらせないというか、あの辺は海外のメロスピにはない部分だと思うので、自分たちの強みだと思います。

J-PopやJ-Rockの影響だと思うんですけど、昔は日本っぽいものを排除して、いかに海外のバンドのようにするかと思っていたんですよ。でも、3rdアルバムでは自分が好きだった音楽の要素を積極的に入れたが方がいいかなと思って結構試していたんですけど、今回はそれをもっと上手に入れられたかなと思います」

――そこのパートの〈重ね、重ね〜〉という歌詞がとても耳に残りますが、歌詞に関してはいかがですか?

HARUKA「ヨルダンにペトラという遺跡があって、それをたまたま何かで見つけたんです。その遺跡の前で夜にろうそくかなんかを地面に並べていたのを見たんですけど、それだけをイメージして書きました。内容は自分の想像です」

HAYATO「この曲はTORUさんが作ってきた段階で、シンセ・パートは固まっていたんです。この曲では楽をさせていただきました(笑)。歌の裏で聴こえるストリングスのサウンドは私の方で検品させていただいております(笑)」

TORU「曲作りもそうですけど、HAYAちゃんにはアレンジでも凄く信頼しているんですよ。サビのメロディーとか歌に対して、コードでただ厚くするというのではなく、別なメロディー的なものを入れてくれるんですけど、それだけ単体で聴いても美しいですし、歌を立てるようなメロディーになっていたりするんです」

 

TUBEのような(?)夏曲“Innocent gram”

――続いて“Innocent gram”はいかにもHAYATOさんらしい曲ですね。

HAYATO「わかりますか? そうなんです。夏曲と呼んでいます」

――以前ライブでプレイしていていましたよね。

HAYATO「やっています。あの時はまだアレンジは固まっていなかったんですよ。それで、今回はちゃんとしたヴァージョンがやっとお披露目できることになりました。

〈夏の曲を作って〉という話だったので、夏と言えば、何だろうと思ったんですけど、昔のコカコーラのCMをイメージしました。〈プシュッ!〉と缶が開くイメージです(笑)。イントロにそのプシュッという音をサンプリングして入れたかったぐらいなんですけどね(笑)」

TORU「何年か前にライブでやった時はTUBEって言っていたよね?」

HAYATO「面白がって言っていただけです(笑)。実はSIAM SHADEの“グレイシャルLOVE”が大好きで、ああいう突き抜けて明るい曲がいいなと思って作った曲なんですよ」

TORU「この曲では〈SIAM SHADEっぽくギターを弾いて〉と言われたんです。俺もSIAM SHADEが大好きなので、〈任せてくれ!〉って弾きました」

――歌詞も夏を踏まえて書いていますね。

HARUKA「サマーバケーション! フー!みたいな感じで書きました。こういう曲があってもいいかなと思いますが、ちょっと恥ずかしいです(笑)」

HAYATO「大丈夫ですよ。海にも行かない奴が作った夏の曲ですから(笑)。そもそもこの曲の仮タイトルは〈常磐ハワイアンセンター〉でしたから(笑)」

 

近未来を描く“Anonymous”、ネオ・クラシカルな“Outsider”

――続いて5曲目の“Anonymous”はシーケンス・フレーズのイントロで始まりますが、これまでにはないパターンですね?

TORU「この仮タイトルは〈近未来〉でしたね。最近はギターよりシンセから曲を作ることが多くて、イントロのアルペジオのフレーズは音色を色々探しながら作っていったんです。そこにさらにHAYAちゃんが近未来感をたくさん入れてくれたおかげで、この曲が何段階も近未来になりました。サビも裏にピコピコした音とかストリングスのメロディーが入っていて、サビがデモ段階より強くなりましたね」

HAYATO「昔、NHKで“コンピューターおばあちゃん”という曲があったんですけど、あの曲はピコピコしていたので、頭にあったんでしょうね(笑)。コンピューターと言えば、ピコピコ=近未来という安易な発想です(笑)」

TORU「ギター・ソロ終わりの一瞬、落ちサビっぽくなるところで、シャカシャカとシェイカーっぽい音が入っているんですよ。パット・メセニー・グループの“Last Train Home”という曲でブラシを使っているんですけど、それを意識して入れました」

HARUKA「近未来という仮タイトルで曲が来た時に、何年も先の近未来じゃなくて、もっと来年ぐらいの近未来だと思っていたんですけど、2人が思っている近未来感を勝手に想像して歌詞を書きました」

――6曲目の“Outsider”のイントロはネオ・クラシカルな曲ですね。

TORU「最初、イントロのクワイアをゴージャスにするのが難しかったんですけど、最後の最後で今の形にまとまりました。でも、曲そのものはイントロの感じでは進まないのが、自分たちらしいと思っています」

HAYATO「イントロの感じで曲が進まないので、キーボードの音を考えるのが難しいんです。サビは爽快じゃないですか。どうしようかなと思った結果、結局ストリングスを入れたんですけど、難しかったですね」

TORU「シンフォニックとJ-PopとJ-Rockをミックスしながら、サビは悩んですけど、その時、参考にしたのがアングラの“Spread Your Fire”のコード進行でした」

HARUKA「歌詞は今回のアルバムの中では一番難しいと思いました。これといったイメージができなかったので、どこにも属さない者から持ってきました」

――作詞をするときは曲を聴いてイメージするのですか?

HARUKA「ずっと聴いています。何か1つの単語をイメージができれば、そこから膨らませることができるんですけど、この曲ではその単語すら思い浮かばなかったですね」