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――ご自身の作品がダブプレート(レコード)として目の前で出来ていく過程を実際に見て、どのように感じましたか?

MÖSHI「いままで基本的にデジタルでのやり取りだから、こうやってダブプレートというフィジカルになるというのは感慨深いですね」

Pause Catti「僕はレコードで音楽をよく聴くんですけど、自分の曲が実際にレコードになるという経験がないので、うれしいというか、新鮮な喜びがとてもあります」

――今作『#13G』はどんなコンセプトで制作したんですか?

MÖSHI「いままでロンドンにずっと住んでいましたが、今回のEPの曲は全部、去年NYに住み始めてから制作したものです。

ひさしぶりに新しい都市に住むということで、いままでの自分の人生をNYの生活のなかで振り返る機会がすごく多くて。そういったなかで、NYでの生活の経験をベースに、これまでを振り返りながら作った4曲になっています」

――タイトルの〈#13G〉はどのようなことを意味しているんですか?

MÖSHI「〈#13G〉は、僕がマンハッタンに住んでいたときのアパートの部屋番号です。

昼間から真夜中にかけては、いつも学校のスタジオでファッションの制作をしているんですが、それが終わって、家に帰ってからの時間を音楽制作にあてています。その部屋〈#13G〉が、NYで生活しているときの自分の音楽生活の拠点だったので、それがタイトルにふさわしいかなと思い、今回のEPのタイトルにしました」

――EPの1曲目“Back And Forth”と3曲目“Brooklyn Bridge”の歌詞には、どんな想いを込めましたか?

MÖSHI「“Back And Forth”は曲名どおりで、〈行ったり来たり〉という意味です。いままでの僕の人生のなかで、日本とちがう国を行ったり来たりしながら、〈自分の立ち位置ってどこなのかな?〉と自分に問いかけるような内容のリリックになっています。

“Brooklyn Bridge”は、Qトレインという電車でマンハッタンからブルックリンへと渡るときの橋の名前で、特に天気のいい日だと電車の窓からすごく綺麗にマンハッタンの街並みがその橋から見えるんです。そのときがいちばん自分にとって〈NYに来たな、ちがう都市にきたな〉と実感する瞬間で。

車窓からマンハッタンの街並みを見ているときは、自分の人生について〈こうした方がよかったのかな〉とか、〈これからどうしていこうかな〉とか、自分に問いかけるとても大事な時間だったので、それを題材にリリックを書きました」

――“Back And Forth”の制作でこだわった部分は?

Pause Catti「“Back And Forth”は、僕が前に出したEP(2020年作『EP1』)の曲“Négatif”を、今回MÖSHIの曲用に編集しました。

曲を聴いてもらえばわかるように、かなり細かい音が連続して構成されている曲なんです。〈次の音、どうしよう?〉と細かく何回も繰り返し再生しながら、何個もシーケンスを作って、それを組み合わせて作ったという感じです。コラージュ感というか、音の連鎖を楽しむような感じで聴いていただけるとうれしいです」

――作品は全体的にポップな仕上がりを感じました。なにか理由はありますか?

MÖSHI「今作を制作するにあたって意識したのが、アジアのヒップホップやR&Bのシーンです。個人的にすごく好きだというのもあります。

中国や韓国のアーティストたちの楽曲は、西洋の文脈とアジア的キャッチーさのバランスをとって制作されているものが多いなと感じています。DPR LIVEだったり、88risingだったり、そういったアーティストたちが持っているようなバランス感を、どうにか自分なりに表現したいと思って制作しました。

それと同時に日本のファンも増えたらいいなと思っています。日本の音楽にもキャッチーな曲は多いと思うんですが、アジア的キャッチーさとは違う部分があると自分は思って、両者の中間点を自分のなかで探りながら制作しました。それが今回のEPを制作するうえでの狙いです」

――今回EPを制作するうえで、影響を受けたアーティストはいますか?

MÖSHI「重心の低いラップをしているアーティストに影響を受けています。例えばTyler, The CreatorEarl Sweatshirtなどです。それに加えて、サビや曲のなかで必要になるキャッチーさという点では、Jojiのようなファルセットを切なく綺麗に聴かせるアーティストに影響を受けています」

――最後に、今後の展望について教えてもらえますか?

MÖSHI「僕が所属しているクリエイティヴ・コレクティヴ、Laastcにはいろいろなジャンルのアーティストが所属しています。

映像や音楽、グラフィックなど、それぞれのアーティストがさらに有機的にコラボレーションして、今後はさらに活動を加速できたらと僕は思っています」

Pause Catti「今後は、映像や音楽、グラフィックなど、いろんな得意分野を持っている方や気になった方には〈一緒にやってみよう〉と声かけていきたいと思っています。

そのなかでまた面白いものができたり、〈まさか自分たちでこんなことができるとは思っていなかった〉みたいなことができたり。そういう楽しみがあると思うので、変わらずやっていければと思います」

 

今回ダブプレート化される『#13G』は、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズや、NYのパーソンズ美術大学大学院など、MÖSHIが日本国外で過ごした経験が反映されています。まさに、彼にしか見えない景色を楽曲に落とし込んだ意欲作です。

日本的キャッチ―さとアジア的キャッチ―さとの中間を狙った音作りをした、というのもとても興味深い回答でした。国内にも目を向けながら、海外での活動も視野に入れたMÖSHIのハングリーさを窺えます。彼が所属するコレクティヴ、Laastcの活動にも今後目が離せません。

『#13G』のダブプレートは、今回限り受注生産限定される貴重な1枚です。ぜひタワーレコード オンラインで予約してください!

 


RELEASE INFORMATION

MÖSHI『#13G』
価格:4,000円(税抜) 
品番:SSTD-001
仕様:受注生産限定ダブプレート(12インチ・レコード)
受注期間:2020年11月4日(水)~11月18日(水)まで
発売予定日:2020年11月27日(金)
★販売リンクはこちら

TRACKLIST
1. Back And Forth 
2. On My Way
3. Brooklyn Bridge
4. Crystal

 


PROFILE: MÖSHI

東京・NY・ロンドンの多拠点で活動するコレクティヴ、Laastc所属。ミュージシャンとファッション・デザイナーの2つの顔を持つ。セントラル・セント・マーチンズを卒業後、ユニクロからのスポンサーシップを受け、現在はパーソンズ美術大学大学院に在学中。個展を開催するほか、Laastcのファッション・プロジェクトにおける中心的な存在。2020年の〈出れんの!?スパソニ!?〉の最終選考に選出。また今年の〈フジロック〉のライブ配信にて、新人の登竜門と言われている今年の〈ROOKIE A GO-GO〉も出演した現在注目のアーティスト。

Twitter:https://twitter.com/the_moshi
Instagram:https://www.instagram.com/moshi_the/

 

PROFILE: Pause Catti(パウゼ・カッティ)

東京在住のプロデューサー、ミュージシャン。東京藝術大学大学院在学中に友人らとLaastcを結成。音楽は独創的で瑞々しい響きを持ち、多くの評価を得ている。2020年2月に初のEPをリリース。

Twitter:https://twitter.com/kawashima_staff
Instagram:https://www.instagram.com/dai5uke_k/