コモンの常識、非常識……20年超のキャリアを祝福するディスコグラフィー
NYとLAが二極的に盛り上がっていた時代、〈シカゴに目を向けてくれ〉という思いを表題やジャケでアピールした、〈コモン・センス〉名義での初作。“Breaker 1/9”など大半を手掛けるイメンスロープとは相棒ノーIDの当時の名義だ。
傑作の誉れ高い2作目。KRS・ワンっぽくゴリ押すラップも落ち着き、ノーIDの手によるロウでジャジーなループと絶妙な融和を見せる。ヒップホップの変わりゆく様を嘆いた“I Used To Love H.E.R.”はいろんな意味で話題に。
中絶を主題にローリン・ヒルと歌った“Retrospect For Life”が象徴するように、コンシャス化とゲストの増加が同時進行。ジェイムズ・ポイザーやルーツ、エリカ・バドゥらの色も出た佳作だが、ノーIDとの二人三脚はここで一旦終了に。
前作の縁を基盤に、クエストラヴとポイザー、ディアンジェロ、ジェイ・ディーがフル援護した、ソウルクェリアンズとしての最高傑作。ジル・スコットやビラルら旬なフィリー勢の起用もソウルフルな芳しさと説得力をもたらした。
引き続きポイザーとディラ、ピノ・パラディーノらは深く関与しつつ、当時の恋人エリカ・バドゥの影響か、オルタナティヴたることを一義としたようなノリも見えてくるカオス盤。プリンスやオマーの参加、ネプチューンズとの邂逅といったトピックもある。
旧知のカニエ・ウェストが率いるG.O.O.D.に加入し、第1次カニエ・ブームの真っ只中で初のR&Bチャート1位を獲得した大ヒット作。“Go!”などカニエがほぼ全曲にソウルフルなノリを授け、ポイザーとディラも引き続き援護している。デリック・ホッジの演奏も。
引き続きカニエ体制下で作られ、飴色のトーンを受け継いだ初の全米No.1作品。ディラの遺作から“So Far To Go”を再収録したほか、ウィル・アイ・アムやリリー・アレンとのコラボにもトライした、親しみやすい一枚だ。
G.O.O.D.での3作目ながらカニエは1曲に客演したのみで、当時アーバン方面に流入してきたエレクトロに取り組まんと、ほぼ全編をネプチューンズに委ねた野心作だ。やや乱心扱いされて(?)評価は低かったが、いま聴くと普通にイケたりもする。
COMMON 『The Dreamer/The Believer』 Think Common/Warner Bros.(2011)
自身のレーベルを設立しての心機一転作では、10年以上ぶりのノーIDプロデュースに。主役との好相性はもちろん、コカイン80sが体を成していく時期らしく、多くの曲で声を交えるジェイムズ・フォントゥルロイにも注目。