見返すぞっていう気持ち

――そして、5曲入りの新作EP『5 KILL STARS』が完成しました。サウンド・プロデューサーのRyan.Bさんとはどういう方向性で進めたんでしょう。

プー「『HALLO PIGGS』がけっこう尖ってたので〈カッコイイね〉っていう反応は多かったんですけど、やっぱり“とらえる”が人気なのも予想通りだったから、今回はもうちょっと大衆的なものを意識してみた感じですね。まあ、いまだとWACK系を聴いてる人も多いと思うので、そういう人たちにも単純にカッコイイって思ってもらえるような間口の広いものをRyan節の範囲で作ったEPです。あと、初ライヴの後にRyanとデザイナーのMETTYと〈一緒に盛り上がれる曲がもっと欲しいね〉って話になって、ライヴを意識して作ったのもあります」

――前作はメンバー決定前に曲があったけど、今回はRyanさんが個々を知ってから書かれたという違いがありますね。

プー「そうです。だから、Ryanの歌詞も自分がメンバーぐらいな目線で書いてくれてて、読んだだけでちょっと泣けるような感じ。『HALLO PIGGS』より人間味がある内容になってます」

――まずはリード曲“クマンバチの独白”ですが、これはシャープな曲のカッコ良さ以上に、109回連続でパフォーマンスするMVが印象に残りました。

BAN「曲調も攻撃的だし、歌詞も強めの攻撃的な言葉が多く入ってて、凄く曲に合ったMVだなって思います」

――101回踊るBiSさんのMV〈101回目のカーテンコール〉とかぶった経緯は?

プー「もともとはGEZANさんが30時間ドラムを叩く企画(石原ロスカルが5月30~31日に行った〈30時間ドラムマラソン〉)を観て、それをアレンジした企画を何かやりたいねっていう話で、6月ぐらいに決定してたんですよ。最初は〈クマンバチ〉だから9万8秒、25時間踊り続けるMVにしようって話をチームで詰めてました。そしたらBiSのをYouTubeで観て、〈やられちゃったな〉って別の案を考えてたんですけど、何かの時に渡辺(淳之介:BiSマネージャー)さんに〈ホントはこれやろうと思ってたんですよ〉ってラフの企画書を見せたら〈いいじゃん、やっちゃえよ〉〈でも25時間は絶対無理だよ〉って言われて、どう落とし込むか考えました。だから、乗っかったつもりではないんですけど、そう見られても全然いいし、見られる運命にあるとも思ってるんで。せっかくBiSがやったなら、それを超えようっていうことで、109回踊ることにしたっていう経緯でした」

――煩悩を超える数字ということですね。途中でCHIYO-Pさんが離脱して4人になる時間もありました。

CHIYO「ん~、あの時の記憶があんまりなくて。自分が倒れたらこの企画自体がなくなっちゃうと思って、〈ヤバイ、私が企画を終わらせちゃうかも〉みたいな焦りで、どうしよう、どうしようってなって……」

プー「過呼吸になっちゃったんですよ。脱水症状とか体力の問題じゃなくて、〈やれるかな~〉っていう恐怖で気持ちが負けちゃったっていう。休んだらケロッとしてた」

CHIYO「途中でまた戻って。やっぱり、みんなのほうが大変だったと思うし」

プー「でも、ドラマは生まれたよね」

――あれは良かったと思いますよ。

プー「限界を超えた一撃で観てる人を刺すっていうのがコンセプトなので。撮影前にみんな人生で悔しかったことを一個ずつ話して、辛くなったらそれを思い出して、見返すぞっていう気持ちでがんばろうって」

――悔しかったこととは?

SHELL「その時みんなに話したのは、すっごい大きいステージでオープニングアクトのバックダンサーをやったことがあって、1か月半ぐらい凄い練習してたんですけど、始まったら2~3万人入る会場に1000人もいなくて、〈あんな練習したのに誰も観てないやん〉って感じで。その後に同期で入った子が人で埋まったメインステージで歓声浴びてて、それが死ぬほど悔しかったですね。自分はバックだし、観られてないし」

プー「その後に何か言われたんでしょ」

SHELL「そう、その後でその子に〈今度MV撮影あってバックダンサー探してるんだけど、やらない?〉とか言われて。丁重にお断りしましたけど、心の中はもうグワ~ッてなって。一生忘れられないですね」

――他の方も聞いていいですか?

CHIYO「はい。私はYouTubeにうちらのライヴの動画があって、〈CHIYO-Pは歌上手いと思ったけどライヴ観たらあんまりだった〉みたいなコメントがウザかったなって」

――まあ、それはそうですね。

プー「一人だけちょっと薄いんですよ(笑)。PIGGSになって感情が始まったから」

SHELL「遅っ!」

UMI「私は前いたグループのプロデューサーに〈空っぽだよね〉みたいに言われたことがあって、その時は真剣にアイドルやってるつもりだったんで悔しかったんですけど、いま思えば確かに空っぽだったなって。そういう自分に腹が立って、絶対負けないで5時間踊り続けてやるって気持ちでした」

――そのプロデューサーさんの発言は間違ってなかったんですね(笑)。

UMI「言われた時はムカついたんですけど、いまとなってはその通りでした(笑)」

SHELL「認めちゃった(笑)」

――BAN-BANさんは?

BAN「お母さんに〈アイドルになりたい〉って言ったら〈なれるわけないじゃん〉って言われたことです。それしか思いつかなくて」

――人生のキャリアの差ですね。

プー「私はもういっぱいあります(笑)。初期BiSのやったことが、全部BiSHが始まりみたいに思われてるのがどうしても悔しくて。BiSHは仲良い子もいるし、メンバーに嫌な感情はないんですけど、有名になるにつれてメディアもBiSHが最初みたいな扱いをするじゃないですか。自分が売れないとそういうものも守れないんだなって。その事実が悔しいし、上手くできなかった自分への悔しさもあるから、5時間は絶対踊りきるぞっていう気持ちでしたね。そういう気持ちの曲です」

――振付けは今回もカミヤサキさんですか。

プー「〈クマンバチ〉の場合はSHELLさんとCHIYO-Pが出したのを合体させて、サキちゃんが監修した感じ。Aメロはわりとサキちゃんがやってくれて、サビはSHELLMEの案だったりとか。曲によって違います」