©2020『あの頃。』製作委員会

それだけで日々が楽しくなる

――松坂さんは今回の役を通じて熱狂的なアイドルファンの実態みたいなところに触れて、どういう印象を抱かれました?

松坂「撮影期間中は、毎日がオフ会みたいな感じでした(笑)。本当に好きなものを共有できる人たちと一緒に過ごすことは居心地がいいし、そこで推しみたいなものができたりすると、生きる活力になりますよね。それってアイドルに限らず、何にでも言えると思うんですけど、好きなものを共有できる場所があると、それだけで日々が楽しくなったりするものなんだなっていうのは、役を通してすごく共感できました。何よりも〈オタク〉っていう言葉自体、僕はあまり軽はずみに言えないというか、何かひとつのことを極めている人が貰える称号みたいなものだと思っています」

「〈オタク〉の地位もずいぶん上がりましたからね。当時はまだまだ肩身が狭かったですけど」

松坂「やっぱりなかなか受け入れてもらえなかったものなんですか?」

「そう、映画の中に出てくる学祭のシーン(劔と仲間たちが学祭に出演してオタ芸で盛り上がる)もね、実際の時なんかは、ステージの担当をしていた子が泣いちゃって、口きいてもらえなくなっちゃったから。こっちとしては〈えー、頼まれて出たのに……〉って感じでしたよ。いまだったら、そういうものをいきなり見せられてもあまり驚かれないと思いますけどね」

――当時のアイドルファンの雰囲気を、山﨑さんはどう感じましたか? 映画の中では握手会のシーンもありましたが。

山﨑「握手会の時に伝えてくださる言葉などは、今も昔もあまり変わってないなって思いました。きっとがんばって言葉を絞り出してくださってるんだろうなっていうのが伝わってきますね」

「握手って、当時はもっと価値が高かったんですよ。いまみたいに握手会が普通になかったから。モーニング娘。と握手しようと思ったら、ファンクラブのツアーでハワイに行かなきゃっていう」

松坂「そうですよね、会えないのが普通の時代でしたもんね」

――あの握手会のシーンはとても印象に残りますね。

松坂「緊張しましたね。本当にもう、山﨑さんの雰囲気が松浦さんを彷彿とさせて、何とも不思議な気持ちになりましたね」

山﨑「ありがとうございます」

松坂「こちらこそありがとうございます(笑)!」

――全体を通して、役作りで苦労されたところはありましたか?

松坂「劔さんが現場にいらしてくださったので、すごくありがたかったです。そのぶん緊張もしたんですけど、ご本人が現場にいるっていうのはすごくありがたくて。劔さんの行動だったり仕草だったり、話す雰囲気だったりをできるだけ自分の中に吸収して、入れられるところはどんどん入れていきたいなって思いながら現場にいさせていただいた感じです」

――劔さんは現場で何かアドバイスを?

「僕が現場に行ってたのは、どうしても僕しかわからないことが多い作品だったので、細かいこととかで監督が判断に困ったときに手助けをするっていう意味合いもあって。ハロヲタの細かなニュアンスっていうのはずっと見てきた者ではないとわからない部分がありますし」

松坂「劔さんがいると、かゆいところに手が届く感じですかね。応援の感じだったり、ファンの方の熱量だったり、どういう流れでそうなったのかっていうのは、モニターの後ろで劔さんが監督とたくさん話していたんじゃないかなと思いました」

「オタクのたむろの仕方とかね(笑)」

松坂「ああ、コンサート会場前とかの(笑)」