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ウィズコロナの風景

 胸が引き裂かれるような感情さえも温もりで抱擁する優しい歌声と、TAARやペトロールズの三浦淳悟らがバンド形態で紡ぐ柔らかくメランコリックな楽曲によって、〈ウィズコロナ〉の時代の日常、そこで広がる心象風景を描き出したiri。さらには、宇多田ヒカルやFriday Night Plansらの作品を手掛けるTepppei、クラムボンのミトという新たなコラボレーターと共に、日常化した非日常的な時代のムードと人の営み、そこで生まれるさまざまな思いを楽曲に投影している。

 「“room”はソーシャル・ディスタンスということで、みんながお家で過ごしていた時間をイメージして。そこではネット上で誰かと繋がっていた人──私も含め、それによって救われた人も多かったと思うし、そんな景色を踏まえて書いた曲なんですね。今回、初顔合わせとなるTepppeiくんは、程良いテンションのR&B感、ローファイな質感によってインドアなムードを汲み取って、ミックス段階では〈歌を聴かせたいから、もうちょっとバスドラムのキックを下げたほうがよくない?〉って言ってくれたり。私の歌も無理がないというか、いまのテンションが表れていると思います。

 “回る”のほうも、自粛期間中、人はどこから来て、死んだらどこに行くんだろうと延々と考えていた、一番ディープだった時期の心境と日々の生活がリンクしたものですね。曲が持っているテンションと合うかもしれないと思って、大学時代によく聴いていたクラムボンのミトさんに初めてプロデュースをお願いしました。生音主体で、懐かしいサウンドをイメージしていたんですけど、イマっぽいトラックが上がってきて、いい意味での驚きがありましたね」。