東京文化会館注目のプラチナ・シリーズがスタート!
東京文化会館の人気企画〈レクチャーコンサート〉や〈プラチナ・ソワレ〉に続く新たなシリーズとして、昨年からスタートした〈プラチナ・シリーズ〉。〈奇跡の音響〉と称えられる649席の小ホールで、現代最高の名手たちが極上の音楽を奏でる贅沢なひとときだ。昨年は、ピアノのブルーノ=レオナルド・ゲルバーやルドルフ・ブッフビンダー、チェロの堤剛などが、この上ない感動と愉悦をもたらしてくれた。
今年12月から始まる第2回目のシリーズは、来年3月までに全5回の公演を開催。昨年同様、ジャンルも編成も実に多彩だが、ここではその第1&2回の出演者陣や聴きどころをご紹介しよう。
12月25日のクリスマスの夜に行われる第1回は、ジャズ・ピアノの鬼才、山下洋輔のスペシャル・ソロ・ライヴ。まだ高校生在学中の17歳でプロ活動を始めた彼は、フリー・ジャズ・ムーブメントの先駆けの一人として、日本ジャズ界を半世紀以上に渡ってリードしてきた。また、映画音楽を手がけたり、クラシック、ロック、邦楽などの一流奏者たちと共演したり、PANJAスイング・オーケストラを組織したりと、他分野への進出にも積極的だ。彼のピアノの特長である鮮やかな逸脱や冒険の数々は、確かな技術や知識の裏付けの賜物と言えるだろう。今回のプログラムは、彼の通常のソロ・ライヴと同じように当日発表。クリスマスのサプライズやプレゼントとしても楽しめそうだ。2012年に旭日小綬章を受章するなど、ますます円熟を深めている巨匠の〈現在〉に乞うご期待。
そして来年1月21日の第2回は、15年が生誕230周年にあたる〈音楽の父〉ことJ.S.バッハを軸とした〈バッハ・コントラスト〉と題したプログラム。出演者も大変豪華で、ベルリン・フィル元首席オーボエ奏者のハンスイェルク・シェレンベルガー、ヴァイオリンの堀米ゆず子、チェンバロの中野振一郎、チェロの山本徹という、当代きっての実力者が一堂に会する。
J.S.バッハの作品は、BWV 1036、BWV 1037、BWV 1039、そしてBWV 1079(“音楽の捧げもの”)という4つのトリオ・ソナタを演奏。17世紀末~18世紀初頭に流行した音楽形式であるトリオ・ソナタは、2つの旋律楽器と通奏低音が3つの声部を形成することから、その名で呼ばれている。ただし、通奏低音は当公演のようにチェンバロとチェロといった複数の奏者によって演奏される場合もあるので、奏者が必ずしも3人とは限らない。それに今回は、原曲のフルート・パートを、オーボエで吹き替えるのも大きな聴きどころだ。ソロと室内楽の双方に精通した4人の名手たちは、バロック時代の最も重要な室内楽形式のひとつであるトリオ・ソナタの真髄を体現した、緻密で滋味深い名演を聴かせてくれるに違いない。
この4つのトリオ・ソナタに挟まれる形で、前半と後半に1曲ずつ置かれているのが、ハインツ・ホリガーの無伴奏オーボエ・ソナタと、三善晃のヴァイオリンのための“鏡”。ホリガーの無伴奏ソナタは、オーボエ奏者でもある作曲者がまだ10代の頃(1956年)に作曲し、半世紀近くを経た99年に改訂を行っている。そのホリガーと並ぶ現代最高のオーボエ奏者シェレンベルガーと、オーボエの多様な魅力と可能性を凝縮した傑作の出会い。私たち聴き手は、〈現代音楽〉が複数の奏者によって演奏されることで〈クラシック〉へと昇華されてゆく〈歴史〉の目撃者になることだろう。そして、昨年逝去した三善の“鏡”。音楽の歴史、和声、対位法といった様々な要素を写す〈鏡〉として描かれたこの作品を、愛弟子の堀米は折に触れて取り上げており、今年1月に行われた彼のお別れの会でも知性と感性が絶妙にバランスした秀演を聴かせてくれた。それから約1年の時を経て、さらに美しく隅々まで磨かれた〈鏡〉がどのような音と心の風景を写し出すかに注目だ。
LIVE INFORMATION
Music Weeks in TOKYO 2014 プラチナ・シリーズ
2014年12月25日(木)~2015年3月6日(金)
第1回 山下洋輔〈クリスマス・ジャズ・ナイト〉
2014年12月25日(木)東京・上野 東京文化会館 小ホール
開演:19:00
出演:山下洋輔(ピアノ)
■曲目
当日発表
第2回 ハンスイェルク・シェレンベルガー&堀米ゆず子&中野振一郎&山本徹〈バッハ・コントラスト〉
2015年1月21日(水)
開演:19:00
出演:ハンスイェルク・シェレンベルガー(オーボエ)/堀米ゆず子(ヴァイオリン)/中野振一郎(チェンバロ)/山本徹(チェロ)
■曲目
J.S.バッハ:トリオ・ソナタ ト長調 BWV 1039/ハインツ・ホリガー:独奏オーボエのためのソナタ(1956/1999)/J.S.バッハ:トリオ・ソナタ ニ短調 BWV 1036/J.S.バッハ:トリオ・ソナタ ハ長調 BWV 1037/三善晃:ヴァイオリンのための「鏡」(1981)/J.S.バッハ:「音楽の捧げもの」BWV 1079よりトリオ・ソナタhttps://www.t-bunka.jp/