2021年、新鮮に響く遊び心に満ちたエレクトロニック・サウンド

それにしても、(有り体な言い方になってしまうが)彼らの音楽がこの2021年においても全く古びていないどころか、ごく新鮮に響くことに改めて驚いてしまう。今回聴き直してみて、個人的には特にフィフス・アルバム『Looney Tunes』(88年)からの2曲“Rendez-Vous Dans L’Espace”と“Beautiful Li(f)e”に最も今日的な魅力を感じた。

『This Is Telex』収録曲“Rendez-Vous Dans L’Espace”

評価の高い初期のアルバムに比べるとやや地味な存在かもしれないが、フェアライトCMIを駆使した大胆なサウンプリング音源で作られるサウンドは、アート・オブ・ノイズ等からの影響を感じさせつつも、テレックスならでの遊び心が爆発したもの。こうした方法論は、DTM全盛たる現在でこそ一層強くアピールするだろうし、エレクトロ・ファンク再評価後の耳でダンス・ミュージックとして聴いても面白い。

世代と国境を超えて愛されたテレックス。残念ながらマーク・ムーランは2008年に鬼籍に入っており、3人の勇姿が揃う姿を再び見ることは叶わないが、残された彼らの作品はこうして現在に蘇った。今後は各オリジナル・アルバムのリマスター再発も予定されているというから、まずはこの『This Is Telex』を聴きながら、楽しみに待つこととしよう。

 


RELEASE INFORMATION

TELEX 『This Is Telex』 Mute/Traffic(2021)

リリース日:2021年4月30日(金)
品番:TRCP-289
定価:2,640円(税込)
配信リンク:https://smarturl.it/telex.jp
新ミックス+リマスター作品
ボーナス・トラック2曲収録/解説:野田努(ele-king)

TRACKLIST
1. The Beat Goes On/Off *
2. Moskow Diskow
3. Twist À Saint-Tropez
4. Euro-Vision
5. Dance To The Music
6. Drama Drama
7. Exercise Is Good For You
8. L’Amour Toujours
9. Radio Radio
10. Rendez-Vous Dans L’Espace
11. Beautiful Li(f)e
12. The Number One Song In Heaven
13. La Bamba
14. Dear Prudence *
15. Moskow Diskow (English Version) **
16. Eurovision (English Version) **
*未発表曲
**日本盤ボーナス・トラック

 


PROFILE: Telex
78年、ベルギーのブリュッセルで結成されたシンセ・ポップ・トリオで、シンセ・ポップのパイオニア。メンバーはダン・ラックスマン、ミシェル・ムアース、マルク・ムーラン。79年、シングル“Moskow Diskow”とデビュー・アルバム『Looking For St. Tropez(テクノ革命)』をリリース。80年、シングル“Euro-Vision”収録のセカンド・アルバム『Neurovision』を発表。81年、スパークスが参加したサード・アルバム『Sex』を発売。その後も新たなテクノロジーの発展のなか、みずからの本質を見失うことなく、むしろ革新的な作品を次々と発表していった。2006年、カムバック作『How Do You Dance?』をリリース。2008年、マルク・ムーランが逝去。2021年4月、ミュートより再発シリーズの第1弾『This Is Telex』をリリース。