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逸話だらけの名ギタリスト、ロイ・ブキャナン『That’s What I Am Here For』

ROY BUCHANAN 『That’s What I Am Here For(サード・アルバム)(生産限定盤)』 Polydor/ユニバーサル(1973, 2021)

──ここからは中本さんのチョイスです。中本さんは今22歳だそうですけど、いきなり渋いところに来ましたね。

中本颯一郎(新宿店9F洋楽フロア担当)「はい(笑)。ロイ・ブキャナンは結構デビューが遅くて、30代くらいだったと思います」

熊谷「いきなり完成された音楽で出てきたんだよね」

──今回はなんと4タイトル出ます。個人ではいちばん多いかな。

中本「僕が知った頃はCDが全然出てなかったんですよ。今回出るなかではこのサードがロック色強めなのでおすすめです。バンドでギターを弾く人は絶対にロイ・ブキャナンは好きになると思うんですよね」

ロイ・ブキャナンの73年作『That’s What I Am Here For』収録曲“My Baby Says She’s Gonna Leave Me”

熊谷「ロイ・ブキャナンのチョーキングってすごく甲高いですよね」

中本「あれはピッキング・ハーモニクスなんです。最初にあのテクニックを使ったのは彼だという説もあります。

彼のボリューム奏法に影響されてジェフ・ベックは“Cause We’ve Ended As Lovers(哀しみの恋人達)”を弾いたので、ちゃんとアルバム(75年作『Blow By Blow』)には〈ロイ・ブキャナンに捧ぐ〉とクレジットがあるんです。あと、ロビー・ロバートソンがホークスでカナダをどさ回りしていた頃にギターを教えたのが彼だとか、ローリング・ストーンズに加入を要請されたけど断ったとか、逸話がめちゃくちゃ多い」

ジェフ・ベックの75年作『Blow By Blow』収録曲“Cause We’ve Ended As Lovers”

 

音楽界の落合? ジョー・ウォルシュが活躍する『James Gang Rides Again』

JAMES GANG 『James Gang Rides Again(生産限定盤)』 ABC/ユニバーサル(1970, 2021)

村越「今回、ジョー・ウォルシュ関連は多いんですよ。バンドとソロで合計6枚」

──影の主役! ジェイムス・ギャング、そしてジョー・ウォルシュはマジで過小評価されすぎ。キャラが陽性なんで、大味な印象で受け取られがちですよね(笑)。でも、才能はすごい。〈音楽界の落合博満〉だと思います。やがてイーグルスに加入したのも、巨人に落合が入団したような感じ。イーグルスでもいい曲書いてるんですよ。

中本「ジェイムス・ギャングはアメリカン・ハード・ロックと説明されることが多いんですけど、ジョー・ウォルシュのソングライティングやアレンジのセンスの良さがいろいろ味わえるし、カントリー・ロック、アシッド・フォークみたいな要素もある。ぜひちゃんと聴いていただきたいですね」

ジェイムス・ギャングの70年作『James Gang Rides Again』収録曲“Funk #49”

熊谷「ジェイムス・ギャングって、ジョー・ウォルシュが抜けた後もドミニク・トロイアーノ、トミー・ボーリンと、いいギタリストが入ってくるんですよ。このバンドにいた3人のギタリストを追うだけでも、絶対に損はしない。3人とも駄作を全然作らない人たちなんです」

──ジョー・ウォルシュに唯一欠点があるとしたら、ジャケット・デザインにあんまり興味ないことかも(笑)。

中本「そうですね(笑)」