私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。

そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 *Mikiki編集部

★連載〈アーティストと音楽関係者が選ぶ「コロナ時代の1曲」〉の記事一覧はこちら


 

photo by Barry Phipps

SAM PREKOP

英ロンドン生まれ、米シカゴ育ち。80年代後半よりシュリンプ・ボートのメンバーとして注目され、93年にシー・アンド・ケイクを結成。99年にはシー・アンド・ケイクの活動と並行し、ジム・オルークのプロデュースによる初のソロ・アルバム『Sam Prekop』をリリース。2010年作『Old Punch Card』以降のソロ活動においては、『The Republic』(2015年)や『Comma』(2020年)など、モジュラー・シンセサイザーを主体とするインストゥルメンタル・アルバムを発表している。2021年7月には、それまでBandcampのみでの配信だった新作『In Away』を日本限定でCDリリース。また音楽家としてだけでなく、画家、写真家としても注目されており、過去のシー・アンド・ケイクの作品や『In Away』を含むソロ作のアートワークもサム本人が手掛けている。

 

コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?

Philip Glass Ensemble “Music In Twelve Parts: Part 1”
(93年作『Music In Twelve Parts』収録)

I spent quite a bit of time with this record, but part one is my favorite section. I feel like it’s composed to sound and feel different with each listen, depending on the light, the weather, day or night. It’s also an introduction to the whole vast piece and as such is a compelling and concise preview of what’s to come. It’s welcoming and yet feels endless. The vocals in this section are out front while all of the other instruments tag along in a delightful call and response, which seems to forever not quite resolve or catch up, always in flux, and so keeps me coming back over and over again.

私はこのレコードとともにかなりの時間を過ごしましたが、なかでもパート1はお気に入りのセクションです。光の加減や天気の具合、あるいは昼か夜かによって、聴くたびに音や雰囲気が違ってくるように作曲されているような気がします。また、広大な作品全体への導入部でありながら、これから起こることを簡潔に伝える説得力あるプレビューにもなっています。それは歓迎的である一方で、終わりがないような感じがします。このセクションではヴォーカルが前面に出ており、他のすべての楽器は心地よいコール&レスポンス――完全に解消したり(ヴォーカルに)追いついたりすることは永遠になく、常に流動的で、幾度となく繰り返すように思えるコール&レスポンス――によって、それについていくのです。

 


RELEASE INFORMATION

SAM PREKOP 『In Away』 HEADZ(2021)

リリース日:2021年7月30日
フォーマット:CD
価格:1,980円(税込)
品番:HEADZ252

TRACKLIST
1. In Away
2. Triangle
3. Quartet
4. Community Place
5. So Many
6. Sunset ※ボーナス・トラック