私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。

そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 *Mikiki編集部

★連載〈アーティストと音楽関係者が選ぶ「コロナ時代の1曲」〉の記事一覧はこちら


 

Photo by 倉科直弘

豊田道倫

70年生まれ。95年にTIME BOMBからパラダイス・ガラージ名義でCDデビュー。以後、ソロ名義含めて多くのアルバムを発表。単行本は2冊発表。2021年はCDとトートバッグの作品『春のレコード』、雑文と日記と未発表歌詞を集めたZINE「キッチンにて2」を自身のレーベル〈25時〉から発表。8月9日にニュー・アルバム『たくさん、ゆっくり、話したい』をデジタルで先行リリース、8月25日(水)にフィジカル盤も25時から発売となる。

 

コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?

友部正人 “ブルース”(2020年作『あの橋を渡る』収録曲)

豊田道倫、坂口恭平、みのようへいによる友部正人“ブルース”のカヴァー動画

夏、大阪にやってきた友部正人さんのライブに出向いた。いろんな世代のオーディエンスが集まっていた。〈ブルースは元気がない時には歌えない〉というリフレイン。何人かのオーディエンスがこのリフレインを一緒に小声で歌いだした。ぼくはこの曲が友部さんの古い歌なのか新しい歌なのか知らなかったけど、終演後に買った去年10月にリリースされた新作を聴いたら、この曲が入っていた。

先日、熊本から坂口恭平さんが来てくれて一緒にライブをやった。この曲を送って一緒にやろうと提案したら、すぐ坂口さんが「すごい歌っすねー」と言ってライブで一緒に歌った。〈指に力が入らなくても ヒューバート・サムリンは死ぬまでギターを弾いた〉。そんな力を与えてくれたのは、友部正人さん、そして、こんな状況でもライブに集まってくれた人たち。そのことを忘れたくない。

 


RELEASE INFORMATION

豊田道倫 『たくさん、ゆっくり、話したい』 25時(2021)

リリース日:2021年8月10日(デジタル)/2021年8月25日(CD)
品番:25-003
レーベル:25時
値段:2,200円(税込)

TRACKLIST
1. ミッドナイト読書会
2. 中出し論
3. woman2
4. カナコ
5. 365回
6. 私の何か
7. 場末のカモミールティー
8. 大阪は今日も退屈です
9. 入江のごとく
10. さよなら、音楽
11. 愛人の愛
12. 踊り場からずっと
13. Letter From Sweet Gotham City

sounds and songs by 豊田道倫
mastered by 須田一平 at LM STUDIO
design: 山田拓矢
photo: 倉科直弘

25時
25-003
@MICHINORI TOYOTA