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コラム

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(Noel Gallagher’s High Flying Birds)を知るための10の名曲 オアシス以上に充実した10年の足跡

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ『Back The Way We Came: Vol 1(2011-2021)』

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The Right Stuff(2015年作『Chasing Yesterday』収録)

ノエルを追ってきたリスナーにとって、この先どこかのタイミングで全貌が明らかになってほしい作品が、ファースト・アルバムと同時期に制作され、次いで発表されることになっていたアモルファス・アンドロジナス(Amorphous Androgynous)とのコラボレーション・アルバムだ。フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン名義でも知られるユニットとのタッグで生んだ音楽は、ノエルのサイケデリック志向をかつてないほどディープに(そして、おそらくヘヴィーに)反映したサウンドだと想像される。この曲は、彼らとのコラボから生まれたテイク。パーカッシヴなダウンテンポとムーディーなサックス、狂おしいギター・ソローー〈Cafe Del Mar〉のコンピに収録されてもおかしくない、ノエル流のチルアウト・ソウルだ。

 

Ballad Of The Mighty I(2015年作『Chasing Yesterday』収録)

オアシス後期からソロの初作に貢献してきたデイヴ・サーディが不参加で、ノエルのセルフ・プロデュースとなったセカンド・アルバム『Chasing Yesterday』。同作からのシングル“Ballad Of The Mighty I“は、“AKA... What A Life!”のダンス・ロック路線を継承/発展させた一曲だ。ゲスト・プレイヤーとして招かれたジョニー・マーの〈ウォール・オブ・ギター・サウンド〉が、メランコリックな鍵盤のフレーズと4つ打ちのビートを染めていく、王道のマンチェスター・ソング。バーナード・サムナーが歌えば、バーニーとマーのユニット、エレクトロニックとして聴けそう。何かを追い求め続ける男の姿を歌った歌詞には、ノエルが人生でもっとも重要なものと公言してきた地元の水色のチームが透けて見える。思えば、ノエル・ギャラガーのここ10年は、マンチェスター・シティ栄光の10年でもあった。

ちなみに、ノエルのダンス・ミュージックへの心酔が高じてか『Chasing Yesterday』はリミックス・アルバム『Where The City Meets The Sky – Chasing Yesterday: The Remixes』も制作された。故アンドリュー・ウェザオールやエロール・アルカン(ビヨンド・ザ・スリーヴ・ウィザード名義)、マッシヴ・アタックの3D、サイケマジックらが、エレクトロニックな装いを施し、よりフロア向けなサウンドに仕上げている。

 

Photo by Lawrence Watson
 

Holy Mountain(2017年作『Who Built The Moon?』収録

オアシスの初期2作に及ぶとは断言できないが、間違いなくその次には位置する傑作――サード・アルバム『Who Built The Moon?』をそう評価するのは筆者だけではないはずだ。〈Where The City Meets The Sky)にもリミキサーとして参加していたデヴィッド・ホルムズが、本作ではプロデューサーとして関与。90年代からトラックメイカーや映画音楽家として活動し、スウィンギング・ロンドンの香り漂う洒脱でクールなサウンドを得意としてきたホルムズの手腕もあり、ノエルの25年に及ぶキャリアのなかでもっとも色鮮やかで躍動的なアルバムになった。

ニュー・オーダー的ベースラインが滑空する“She Taught Me How To Fly”、ペイズリー柄のブレイクビーツ・ポップ“It’s A Beautiful World”など多数の名曲を収めた作品だが、なかでも1曲を挙げるとすればやはり、アルバムからの最初のリード・ソング“Holy Mountain”。60年代の少年ガレージ・バンド、アイス・クリームの“The Chewin’ Gum Kid”(68年)から口笛のフレーズを引用し、さらに“Round Are Way”(95年)ばりのご機嫌なホーンを加えた、最高にグラムなソウル・チューンだ。ノエルの師匠たるポール・ウェラー御大も、モッドなオルガンで貢献。確かに、ノエルのソロ・キャリアにおけるルーツ回帰の要素と現代性の巧みな配合は、モッドファーザーのそれと重なるところがある。