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荘子it(Dos Monos)

リズムに凝りたくなる2人

――Dos Monosも崎山さんも、リズムへのアプローチが特殊で実験的ですよね。

荘子it「ただ、僕がもともと好きだったフリー・ジャズやプログレや現代音楽のように、不可逆的な構成でリズム構造をめちゃめちゃにするのはいま、あんまりホットじゃないですよね。ブラック・ミディも、意外にミニマルでパンク的。プログレといっても、カンとかのジャーマン・プログレから影響を受けた、ミニマルな反復がいまの音楽の潮流に合っている。そうなると、こっちとしては微分的なリズムの実験をしたくなりますよね。最近はまた少し変わってきてるけど」

崎山「自分は、小さい頃から打楽器とか、リズムがすごく好きなんです。変拍子や16連符のような細かい刻みが好きで、弾き語りでもビートは気にかけています」

荘子it「崎山くんは、ただコードを弾くだけでも刻み方がすごいし、アタックが打楽器みたいに激しいよね。ライブを観させてもらったことがあるけど、そのときも〈アコギってエレキ・ギターよりよっぽど暴力的だな〉と思った。たとえば、山下洋輔のようなフリー・ジャズのプレイヤーがアコースティック・ピアノを肘とかでガーンと鳴らすじゃん。ああいう演奏のほうが、ディストーション・ギターとかシンセを弾くよりもよっぽど暴力的に感じる場合があるのに近くて」

崎山「ギターをバリンバリンと弾くと、間近に迫ってくる感じがしますよね」

荘子it「普通、アコギの音ってミックスで他の音に馴染ませちゃうんだけど、崎山くんの曲ではアコギが際立ったバランスでミックスされていて、ちょっと気持ち悪いというか、異常な感じがおもしろい。俺もアコギの音を使おうかなって思ったもん」

――崎山さんのギターを荘子itさんがサンプリングするとか、Dos Monosと崎山さんで曲を作ってほしいですね。綺麗にまとめず、はみ出させたり不協和にしたりする音作りは意識されていますか?

崎山「そうですね。僕はもともとノイズ・ミュージックが好きで、大友良英さんがギターをキシキシ弾いているのを聴いて、〈これだ!〉と思ったんです。中学生の頃、そういうものばっかり自宅で録音していた時期もあります。最近はポップスも意識して曲を作るので、その塩梅をどうするかは考えていますね」

荘子it「ああ! やっぱり、崎山くんのルーツはそういうところからもきてたのか。ブラック・ミディも日本の音楽がすごく好きで、大友良英が好きだって言っていたね」

 

ブラック・ミディと対バンしたDos Monos

――では、本題のブラック・ミディの話に入ろうかなと思います。彼らの音楽との出会いは?

荘子it「ファースト・アルバムの『Schlagenheim』ですね。すごく音楽性の高い、若くて熱のあるやつが出てきたなと思いました。自分たちのファースト(『Dos City』)も近い時期に出たので、気になるというか、勝手にライバル視していて。そういう出会いでしたね」

――荘子itさんは、ロックの新譜を追いかけて聴いているんですか?

荘子it「というよりも、ジャンルで音楽を聴いていないから、変な音楽、おもしろい音楽が出てきたら聴く感じですね」

――そのなかで、ブラック・ミディがひっかかったと。

荘子it「ある意味では、すごく馴染みがある音楽だったので。たぶん、好きな音楽、聴いてきたものは似ているんだろうなって。“Talking Heads”って曲もあるし、ダモ鈴木とも共演していて、イギリスのバンドなのにアルバム・タイトルはなぜかドイツ語だから(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンなんかも好きなのかなって思ったし。すごく好きなものがたくさん含まれていたので、親近感が湧きました。あとは、演奏が普通にクソ上手いなと。

2019年のシングル“Talking Heads”

崎山くんは、マーズ・ヴォルタってわかる? 世代じゃないから知らないかな」

――アット・ザ・ドライヴ・インのメンバーだったセドリック・ビクスラー・ザヴァラとオマー・ロドリゲス・ロペスによるポスト・ハードコア/プログレ・バンドですね。

荘子it「俺が高校生だった当時はプログレなんて流行っていなかったんだけど、その頃唯一輝いていたプログレ・バンドで。俺、彼らのことが超好きなんですよ。たぶん、崎山くんも好きだと思う」

崎山「ぜひ聴いてみます」

マーズ・ヴォルタの2008年のライブ映像。演奏しているのは2008年作『The Bedlam In Goliath』収録曲“Goliath”

荘子it「もちろん、文化的にも音楽的にもちがうところはたくさんあるけど、ある意味ブラック・ミディも、当時のマーズ・ヴォルタのように時代に似つかわしくない、孤高のバンド音楽なんですよね。俺が10代だったらどハマリしてたなと思うとエモくて、初めて聴いたときは青春を懐かしんじゃいました(笑)。

でも、まさか対バンすることになるとは思っていませんでしたね。お互いにライブをやって、めっちゃ仲よくなったから、終演後に楽屋で〈リミックスをやってよ!〉と言われて、〈いいよ! もちろん〉と答えたら、本当にちゃんとオフィシャルで依頼があったんです」

2019年のシングル“bmbmbm (Dos Monos Remix)”