初EPからコンスタントに作品を重ねて10年、またも堅調なニュー・アルバムの内容は……

KALI UCHIS 『Sincerely,』 Capitol(2025)

 自主リリースの初EPから10年を迎えるカリ・ウチス。その記念として同作が『Por Vida (Anniversary Edition)』としてフィジカル化されたが、それは現在の彼女が時の人である証拠。コロンビア系米国人としてラテン・コミュニティへのアピールも目論んで、英語とスペイン語で歌ったアルバムを交互に出してきた彼女は今年も新作を発表した。新天地キャピトルからの5作目『Sincerely,』。手紙の〈結び〉を表題に冠し、ドン・トリヴァーとの間に誕生した第一子と亡き母への手紙に見立てた内省的な作品で、それゆえか歌い手のゲストはおらず、シタールの音色で幕を開ける先行曲“Sunshine & Rain...”など悲喜交々な感情がスウィートかつドリーミーに表現される。制作には馴染みのジョシュ・クロッカーやディラン・ウィギンスらも関わるが、以前関与したリオン・マイケルズのほか、アーロン・フレイザーやホーマー・スタインワイスらも演奏する今作は、まさに『Por Vida』に通じるヴィンテージ・ソウル感があり、現行のチカーノ・ソウルとも共鳴する。今作にちなんだツアーにセイクリッド・ソウルズが同行するのも納得の内容だ。

カリ・ウチスの2015年作の10周年記念盤『Por Vida (Anniversary Edition)』(Capitol)