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田中の提唱する〈ラ飲み〉に磯野くん、衝撃を受ける

――そんなふうにシティに憧れながら音楽活動をしているお二人ですが、どちらもラーメン大好きミュージシャンとして知られています。そもそもラーメンにハマるきっかけは何だったのでしょうか?

田中「玉野っていうと、どんな店があったけ?」

磯野くん「玉野にはあんまりラーメン屋がなくて。岡山の思い出の味っていうと〈支那そば 餐休〉なんです」

田中「ああ、あの難しい字の店!」

磯野くん「そうです。あと、田中さんが〈メシ通〉というサイトに出たとき、記事に岡山の〈平田食事センター〉の名前を出していましたよね?」

田中「〈平食〉ね(笑)」

磯野くん「実家の近所なんですよ。ずっと店の前を車で通ってて気にはなってたんですけど、田中さん、行かれたんだ!と思って。田中さんはツアーでご当地ラーメンを食べてらっしゃるのが羨ましいです。僕は、昼間は営業の仕事をしているんですけど、営業先のお客さんと仲良くなるための話題作りとしてラーメンを食べるようになったんです。『おすすめのラーメン屋さんありますか?』ってお客さんに訊くと結構盛り上がるんですよね。それでいろいろ行くようになりました」

田中「そうなんだ。僕は子どもの頃から美味しいものを食べるのが好きで、高校のときはうどん屋を友達と食べ歩いてたんです。香川はうどん屋がいっぱいあって、しかも安いから自転車で走りまわっていろんな店に行ってました。でも、ラーメン屋ってあまりなかったんですよね。それで大学に入って東京に出て来たとき、大学の近所に〈ラーメン二郎〉があったんです。それが美味しくて、それからラーメンを食べるようになりました。24~25歳でデビューしてからは、ツアーで行く先々でラーメン屋を探したり、ツアー地から少し足を伸ばせば行ける店にも行ってみたりするようになったんです。僕、東京中の駅はすべて行ってるんじゃないかな。ラーメン好きの人って、みんなそうなると思うけど」

磯野くん「すげえ! 僕は基本的に仕事の合間に行くんで、行列ができる店とか遠くの店には行けないんです。アプリとかネットで調べて、食べた人のリアルな口コミを参考にしながら回ってますね」

――ということは、田中さんの記事を読んだりもしているわけですね。

磯野くん「はい。サニーデイの田中さんだとはもちろん知っていましたけど、それとは関係なくラーメン好きとして尊敬していました。田中さんが提唱している〈ラ飲み〉の記事を読んですごい!って思ったり」

――〈ラ飲み〉というと?

磯野くん「ラーメン呑みのことです。まず。ラーメンの具を先に食べながら(お酒を)呑んで、次に麺をすすって呑んで、最後に冷めたスープを飲む。実際にやってみて、なるほど!って思いました。くたくたになった麺は意外と味があるし、冷めたスープだと味がはっきりわかる」

田中「魚介系は特にね」

磯野くん「ラーメンは熱いうちに食べたほうがいいっていう既成概念を覆す食べ方ですよね」

田中「よく行くラーメン屋さんで呑むようになって。実際には、先に上に乗っかってる具材のチャーシューやメンマや味玉をつまみで出してもらって、〆で素ラーメンをもらうんです。でも結局、食べ終わってからも冷めたスープをつまみにちびちびと」

――それは店との信頼関係がないとできない食べ方ですね。

磯野くん「田中さんの記事を読むと、店主さんとすごい仲良しなんですね。僕は一人で黙々と食べるタイプだから」

田中「僕も最初はそうだよ、何回も行くうちに仲良くなる」

磯野くん「でも、それだけ足を運ばれてるってことですよね」

 

亡きラーメン屋店主に捧げた“R.M.T.T”

――そういえば、YYWには“R.M.T.T(ラーメン食べたい)”という曲がありますが、よく行くラーメン屋さんに捧げた歌だとか。

磯野くん「あれは、僕が方南町に住んでいて……」

田中「その話、聞きました。〈桂家〉さんのことでしょ? ご主人が亡くなられた」

磯野くん「そうなんですよ、病気で。桂家さんは東京に出て来ていちばん通ったラーメン屋さんなんです。亡くなる前に、病気で2か月くらい店を閉められていて、そのときの〈桂家さんのラーメンが食べたい〉という気持ちを歌にしたんです」

YONA YONA WEEKENDERSの2021年のEP『唄が歩く時』収録曲“R.M.T.T”
 

田中「僕が最後に行ったとき、ご主人がすごくしんどそうで、〈あれ? おかしいな〉って思ったんですよ」

磯野くん「おやっさん、椅子に座って指示してましたもんね。僕は西日本の人間なんで、ラーメン=細麺で澄んだ醤油スープというイメージだったんですけど、桂家さんの家系ラーメンを食べて初めて〈東京のラーメンって美味しいなあ〉と思ったんです。その頃は吉祥寺に住んでたんですけど、桂家さんにチャリで通ってました」

田中「結構、距離あるでしょ?」

磯野くん「そうなんですよ。夜中に友達と〈行こうぜ!〉となったことがあって。そのときはもう、電車が終わってたんですよ」

田中「あそこは夜中の3時までやってるもんね」

磯野くん「それで1時間くらいチャリを漕いで行ったんです。冬に自転車で走ったあとということもあって、ラーメンが身体に染み渡りましたね。そのときの味が忘れられなくて、方南町に引っ越したくらい好きでした」