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ウクレレ界のレジェンド〈おじいちゃん先生〉との出会い

――ジャズに興味を持ち出したのはいつ頃でしょう。

RIO「中学校に入る前、やはりハワイにいる頃ですね。その時、今回のアルバムにもつながる出会いがあったんです。今の僕の先生で80歳すぎのウクレレ界のレジェンドと言われる人と知り合ったんです。

帰国する2週間前だったんですけど、会ってみたら古い曲をたくさん知っている方で、日本に帰った後も夏はそのおじいちゃん先生のところに行き、2ヶ月ほど一緒に生活しました。彼は毎日ウクレレのスタイルじゃない楽譜をウクレレ用の楽譜に変えていました。その時に必ずウクレレを弾きながら変えるので、僕はそれを聴いていいなと思った曲をその場でどんどん教えてもらったんです。そのおかげでいろんなジャンル、そしてあらゆる時代の曲を自然に学ぶことができました。なのでずっと後で、〈この曲はジャズのセッションでよく演奏される曲なんだ〉と知ることもありました」

――今までの話を聞いて、RIOさんのウクレレの奥にあるものがよく分かりました。その根にあるのはハワイの人たちから受け取ったアロハスピリットで、それを糧に今まで好奇心旺盛にご自身の音楽を伸長させ、今があるんだと了解できます。

RIO「そうですね。本当にそうです」

――これまで、海外に演奏に出たことで特に印象に残っていることはありますか。

RIO「それは、イタリアに行った時ですね。3年前ぐらいです。ウクレレフェスティバルがあり呼ばれたんです。その時ブラジルから来る方がいて、名前がRIOだからかもしれないのですが、事前にFacebookで連絡してきて、〈この曲をバンドでやるので一緒にやろう〉と音源と楽譜を送ってきたんです。それを聴いたら、滅茶苦茶かっこ良かった。その際ステージに上がった時の楽しさを覚えていて、今回のアルバムにもその曲が6曲目に入っています」

――その“Asa Branca~O Ovo”って、ブラジルのバイアォン(北東部の伝統大衆音楽)の偉人シンガー/アコーディオン奏者ルイス・ゴンザーガの曲とエルメート・パスコアールの曲のメドレーじゃないですか。“O Ovo”にもアコーディオンが使われていましたね。

RIO「そうです。バックグラウンドを知る前に彼らがそういうメドレーでやっていて、それを聴いて〈すごい美しい曲だな、いいなあ〉と思っていました。そういう感じで、僕はいろんな曲と自然に出会ってきました」

ルイス・ゴンザーガの“Asa Branca”のパフォーマンス動画

エルメート・パスコアールの2018年作『Hermeto Pascoal E Sua Visão Original Do Forró』収録曲“O Ovo”

 

RIOと井上銘、年の差を感じない2人の対話

――『RIO』は井上銘さんがプロデュースをしています。どういう感じで一緒にアルバムを作るようになったのでしょう。

RIO「銘さんのことは、前から僕は一方的に知っていたんです。よくコンサートに来てくれる方が銘さんのファンでもあって、銘さんのアルバムをプレゼントしてくれて、そこから僕は〈銘さんっていいなあ〉と思うようになりました。それが15、16歳の頃です。

そして今回自分のアルバムを作るぞとなった時に、(『RIO』のリリース元であるレコード会社TWIN MUSICの)生明恒一郎さんが〈銘さんのプロデュースでどうですか、一緒に共感し合いながら作っていけるんじゃないでしょうか〉と、提案してくれたんです。僕の中で銘さんはトップにいた方なので、〈ええ!? やっていただけるんでしょうか〉という感じでした」

――銘さんは、この話が来てどう思いました?

井上銘「RIO君は洗足学園音楽大学に通っているんですが、今回の話が出る前に、そこで先生をしている友達に〈最近面白い人いますか〉という話をした際に、〈ウクレレですごい面白い人がいる〉と聞き、その存在は知っていたんです。だから、連絡がきた時はすごい嬉しかったですね。

今年の5月に六本木のカフェで二人でミーティングしたんですが、初めて会った感じがしなくて盛り上がりました」

――銘さんもアルバムデビューが早かったので、RIOさんの気持ちを掴みやすいというのはあったのでは?

井上「いや、自分が20歳だった時を思い出したんですが、喋っていても演奏していても〈成熟しているな〉と思いましたね。僕も20歳でデビュー作(2011年作『ファースト・トレイン』)を出したんですが、その頃は楽器を弾くので一杯一杯でしたから。RIO君はもっと先を行っていて、楽器でアンサンブルをする際に人とコミュニーケートするということをよく知っていて、年の差を感じないんですよ。どこでそんな能力を身に付けたのかと思っていたんですが、今の話を聞いて納得しました」

RIO「アンサンブルのやり方とかは、ハワイで学んだものが大きいでしょうね」

――銘さんは、ウクレレを弾いたりはするんですか。

井上「いやいや、遊びで鳴らしたことぐらいしかないです」