
これまでのイメージから脱却できた連続リリース
――続いて、1月19日には第4作としてESME MORIさんが編曲を手掛けた“一周目の冬”がリリースされました。対照的に、まったりしてメロウな曲なのにビートがはっきりしているR&B寄りのテイストが入ったポップスです。こちらの曲で特にここを聴いてほしいと思ったポイントはどこですか?
「この曲は冬の始まりのカップルの曲なんです。ふたりにとって初めての冬を迎えるっていう曲で、彼らの日常を切り取っていて。聴いた人はその日常さえも愛おしいと思える、本当にあたたかくて、やさしい曲なんです。日常感あふれる素朴な歌詞を書いたので、そこを聴いていただきたいなと。あと、私は個人的にストリングスが超大好きなんで、そこにも注目して聴いていただきたいです」
――ストリングスが好きっていうのは面白いですね。もともと安斉さんの音楽の原体験はロックとの出会いで、吹奏楽の経験もあると伺っています。そういう経験からはじまってJ-Popのストリングスを意識したタイミングっていつごろでしたか。
「活動をはじめてからですね。“キミとボクの歌”(2021年)っていう曲にストリングスを入れていて、〈かっこよ!〉って思ってまたやりたいと思ってたんですよね。“キミとボクの歌”ではピアノも自分で弾いているし」
――歌手として活動をはじめていろんな曲に触れていくなかで出会って、好きになっていった、と。じゃあそういう意味で“キミとボクの歌”は重要な曲ですね。
「そうですね」
――連続リリースでは1か月~1か月半くらいのペースで新しい曲に詞を書き下ろしていますが、大変じゃないですか。毎回曲調も違うから、どういうふうに歌詞をつくっているのかが気になって。
「いや、楽しいです。作詞するときはiPhoneのメモから引っ張ってくるときもありますし、“現実カメラ”はタイトル先行です。タイトルが決まって、そこからそれに合う歌詞を書いていきました」
――今回、連続リリースで、アーティストとしての成長を実感することはありますか?
「成長はまだわからないですね。でも、曲のテイストも毎回違うし、サウンドだけじゃなく、ビジュアルもこれまでのイメージから脱却して心機一転、新しいものにできたと思います。今回の連続リリースでは、そこが一番のわたしの目論見だったので、それができているのがうれしいですね」
――たしかに、最初の“18の東京”(2021年)からして、曲調も歌唱も安斉さんの表現が次のステップに進んだ印象があります。
「ありがとうございます」

貪欲に挑戦したい
――逆に、この連続リリースまでの作品で印象的な曲はあったりしますか。いまにつながっていると感じられるような曲とか。
「うーん。〈つながってる〉曲は別になくて、全部それぞれに思い入れはあります。“Secret Love”だけ、ドラマ(2020年のMBS制作『社内マリッジハニー』)のタイアップが決まってから、歌詞を書いたので、当時は恥ずかしかったんですよ。恋愛がメインの女の子っぽい曲だったので。でも、私の友達は“Secret Love”を一番よく歌ってくれて。何だか気恥ずかしいですね」
――ちなみに、個人的に印象的な曲が“GAL-TRAP”(2020年)で。
「みんな、“GAL-TRAP”のことを言ってくれますね(笑)」
――ビートも面白いんですが、ボーカルのスタイルもオートチューンのかかったソフトなもので、でもリズム感がすごくタイトで。
「これは唯一私が作曲をした曲です。“GAL-TRAP”はめっちゃ反応をもらいました。ありがたいですね」
――作っているときって、リスナーのみなさんの反応を考えたりしますか?
「“GAL-TRAP”の場合は楽しくみながらセッションして作った感じなので、特にリスナーの反応とかは意識してなかったですね」
――それがいろんな人につたわる曲になったのは面白いですね。
「そうですね、シンプルにうれしいです」
――ここまで、シングルでどんどん1曲ずつ世界をつくってきて、7作連続シングルも同様ですが、さらに音楽的にやってみたいことってありますか?
「いろんな曲調をやってみたいですね。詞先行の曲とかギター1本で音数が少ない曲とかにも、トライしてみたいですね。貪欲に挑戦したいなって」