それは滅びの物語に安寧を齎し得るのか、荘厳・優美な合唱で紡がれる「NieR Replicant ver.1.22474487139...」
NieRシリーズは2010年に産声を上げた新しい作品だが、いまや日本が世界に誇るゲーム作品の一つと言えるだろう。東京オリンピック2020で話題を呼んだゲーム音楽による選手入場曲でも終盤でNieRシリーズの“イニシエノウタ”が起用され、「ドラクエ」「FF」「テイルズ オブ」らと名を連ねゲーム界のスターダムにいる作品であることを世界中に知らしめた。
NieRシリーズはそのダークな雰囲気と美しさを持った世界観と作り込まれたストーリーが評価されているが、なんといってもその世界観にマッチした音楽が作品の奥行きを広げている。NieRシリーズの音楽は岡部啓一が手がけるシンフォニックで重厚な響き、恐怖心を煽りつつも美しさが全てを包み込むメロディで構成される珠玉の楽曲群。各シリーズ作のサウンドトラックはもちろんリミックス、ピアノやオーケストラアレンジなどが公式でリリースされるなど、音楽としての人気も高いことが窺える。
そして新たに楽曲の魅力を更に一段上げる一枚がリリースされる。第1作目リメイクである「NieR Replicant ver.1.22474487139...」楽曲のクワイアー(合唱)アレンジによる本アルバムは今までのどのアレンジアルバムとは違った魅力に溢れたサウンドだ。本盤にも収録されるディレクター:ヨコオタロウ氏による書き下ろしテキストより着想を得て、岡部啓一自身が監修を務めた〈荘厳で優美〉な音世界。前述の“イニシエノウタ”では讃美歌を思わせる高潔なアカペラで紡がれるが、“エミール”ではパイプオルガンと弦楽が伴奏に加わって〈静かな高揚〉を感じさせる。ゲーム内でそのまま使われていてもおかしくない、世界観に見事にマッチしつつも〈美しさ〉というベクトルに振り切った10曲の音源はゲームファン・音楽ファン双方の期待を裏切らない。同シリーズのコンセプトアーティスト:幸田和磨氏による書き下ろしジャケットをはじめプロダクトとしてもNieRの世界観を堪能できる至高の逸品だ。
INFORMATION
「NieR Replicant ver.1.22474487139...」とは
2010年4月に発売された、全世界累計出荷・ダウンロード販売本数100万本を突破の人気ゲーム「NieR Replicant」をベースとしたバージョンアップ作品。2017年2月発売の「NieR:Autoamta」の世界が形成されることとなった始まりの物語が描かれる。
STORY
主人公は辺境の村に住む心優しい少年。不治の病〈黒文病〉にかかってしまった妹〈ヨナ〉を救うため、人の言葉を話す謎の書物〈白の書〉とともに、一握の希望である〈封印されし言葉〉を探す旅に出かけます。