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Belle And Sebastian “Unnecessary Drama”

田中「こちらもなかなかの新境地と言えそう。ベル・アンド・セバスチャンの新曲“Unnecessary Drama”。パワフルなビートとビッグなプロダクションが敷かれた80年代風のポップソングで、一聴した瞬間に驚かされました。〈繊細な文学青年が鳴らすネオアコ〉というイメージはすでにないでしょうけど、彼らの曲のなかではかなり振り切ったサウンドかなと思います」

天野「近年のベルセバはエレクトロニックなビートなどをさりげなく導入していましたが、この“Unnecessary Drama”の太いベースラインとグルーヴィーな感じはかなりフレッシュに聴こえます。メロディーはポップかつアンセミックで、ちょっとエレクトリック・ライト・オーケストラ風。陽気なハーモニカも印象的です」

田中「ライブでめちゃくちゃ盛り上がりそう。〈フジロック〉への出演、期待しちゃいますね。この曲は5月6日(金)にリリースされる、オリジナルアルバムとしては7年ぶりの新作『A Bit Of Previous』に収録されます。同作は、2000年作『Fold Your Hands Child, You Walk Like A Peasant』以降初めて彼らの故郷グラスゴーでレコーディングされた作品なのだとか。セルフプロデュースでありながらも、実に多様で意欲的なサウンドになっているらしいです。楽しみですね」

 

King Von “War”


田中「2020年11月に亡くなった米シカゴのラッパー、キング・ヴォン。同じシカゴのリル・ダーク(Lil Durk)が運営するレーベル、オンリー・ザ・ファミリー(Only The Family)の一員として同年8月にデビューアルバム『Welcome To O’Block』をリリースしたばかりでしたが、アトランタでクワンド・ロンド(Quando Rondo)のクルーと揉み合いになって撃たれ、26歳の若さでこの世を去りました」

天野「ポップ・スモークや今年刺殺されたドレイコ・ザ・ルーラーなど、ここ数年は前途有望なラッパーが亡くなることが多くて、本当に胸が痛みます。ラップミュージックのカルチャーに根深く残る暴力とその連鎖は、止めるべきでしょう。キング・ヴォンは、この“War”からもわかるとおり、威勢のいい激しいフロウが特徴的なラッパーです。LAなどの一部のギャングスタラップシーンではダウナーな暗いフロウが流行っていますが、ヴォンのラップはまさにスピットであり叫び。“War”ではチョップスクワッド・DJ(Chopsquad DJ)のダークなビートに乗せて暴力にあふれたストリートライフが歌われているので聴いていてつらい気持ちになりますが、この曲が収録された没後リリースのアルバム『What It Means To Be King』は追悼の思いを込めて聴きたいと思います」

 

Mall Grab “Metaphysical”

田中「オーストラリア出身で現在は英ロンドンを拠点に活動しているDJ/プロデューサーのモール・グラブ。彼の新曲“Metaphysical”がなかなかおもしろいです。ロウハウスやレイヴハウス的なサウンドを得意にしてきた彼ですが、この“Metaphysical”ではレイヴィーな側面を残しつつもジャングルに挑戦。とはいえ、4つ打ちのキックがかなり強めに出ているので、曲のパートによってはハードテクノに聴こえることもあります」

天野「この曲は、彼にとって第二の故郷であるロンドンの音楽にオマージュを捧げたものだとのこと。ナイトクラブの営業が再開した2021年12月、パーティーで熱狂する人々の姿に感化されて書かれた曲だそうで、同地のコミュニティーやネットワークへの賛歌とでも言えそうなクラブバンガーですね!」