田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴のものを紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。この一週間の話題といえば、やっぱり〈SUMMER SONIC 2022〉の開催とラインナップ第1弾の発表ですよね。The 1975、ポスト・マローンというヘッドライナー2組が、出演を見送った〈SUPERSONIC 2021〉を経て、今回再登板するというのはうれしいですし、なによりプライマル・スクリームの『Screamadelica』30周年記念ライブを日本で観られることに最高にアガりました!」
天野龍太郎「また90年代ノスタルジーじゃないですか! 僕もプライマル・スクリームは観たいですけどね……。他にも、メーガン・ザ・スタリオンにカーリー・レイ・ジェプセン、リナ・サワヤマ、さらにリバティーンズまで! アガるな~。あと、マネスキン、イージー・ライフ、グリフ、スクウィッド、ビーバドゥービー、インヘイラー、リンダ・リンダズなどの、いま観たいニューカマーも揃っています。すごいラインナップですし、日本の洋楽リスナーにとってはコロナ禍以降、もっともうれしいニュースだったのでは?」
田中「開催日程は8月20日(土)、21日(日)。開場は、東京公演はZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ、大阪公演は舞洲SONIC PARK大阪です。とにかく、無事に開催されることを祈るばかりですね。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」
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Dehd “Bad Love”
Song Of The Week
田中「〈SOTW〉は米シカゴ出身の3人組、デッドの“Bad Love”。デッドはこれまでに2作のアルバムを発表していて、特に2020年のセカンドアルバム『Flower Of Devotion』はPitchforkが〈Best New Music〉に選ぶなど、高く評価されました。日本でも、コアなインディーリスナーの間で盛り上がっていましたよね」
天野「僕も大好きなアルバムで、もっと日本で人気になってもいいのに、と思っていました。彼女たちの魅力は、なんといっても光るメロディーとリバービーなギターの音色、そしてローファイな音像が特徴的なロックンロールサウンドですよね。さらにボーカリストのエミリー・ケンプフ(Emily Kempf)の歌声が特徴的で、それらが合わさってすごくいい温度感の音楽になっているんですよね」
田中「この“Bad Love”でもその魅力は健在で、イントロのロネッツ“Be My Baby”……というよりも、ジーザス&メリー・チェイン“Just Like Honey”風のドラムからして最高。ドラマーのエリック・マクフレイディ(Eric McGrady)がスタンディングでドラムを叩くのも、特徴的ですよね。“Bad Love”は、最初のバースが終わったら、テンポが早くなってサーフロック調に変わるのもいいと思います」
天野「リリックの内容は、『自分にとっていい影響を与えない誰かとの関係を断ち切り、依存しあう人とではなくて、自分自身といい関係を築き上げること』についてなのだとか。大事なことですよね。なお、この曲を収録したニューアルバム『Blue Skies』は、ファット・ポッサムから5月27日(金)にリリースされます。この春のインディーロックシーンにおける注目作ですね!」
Troye Sivan & Jay Som “Trouble”
田中「2曲目は、トロイ・シヴァンとジェイ・ソムの驚きのコラボレーションソング“Trouble”です。オーストラリアのシンガーソングライターで、俳優としても活躍するトロイは、ダンスポップを歌うZ世代のクィアアイコンですよね。そんな彼がインディーロックシーンで活躍するジェイ・ソムと繋がったのは、意外でした」
天野「“Trouble”は、トロイが主演し、2月23日(水)に公開される青春映画『Three Months』のための曲なのだそうです。映画は、トロイが演じるケイレブ(Caleb)が高校を卒業する前日にHIVウイルスにさらされたかもしれないと気づき、検査結果を待つ3か月間に思いがけない場所で愛を見つける、というプロット。“Trouble”に話を戻すと、2人の共演は意外ですが、ジェイ・ソムのウィスパーボイスとトロイの繊細かつ力強い歌が絡まり合っていて、すごくいい。ギターとダンスビートを軸にした、ベッドルームポップ的な歪んだドリーミーな音像も印象的ですし。プロデューサーは、トロイの曲を手がけたことがあるオーストラリアのスタイアルズ・フエゴ(Styalz Fuego)。映画のストーリーを思わせるリリックもナイスで、2人のアーティストの個性がうまくマリアージュした名曲ですね」
Romero “Turn It On!”
田中「Mikikiに初登場のニューカマー、ロメロは、豪メルボルンの5人組パワーポップバンドです。昨年、NMEが期待のアーティストのリストにピックアップするなど、早耳リスナーから注目を集めていた彼女たち。ついに、4月8日(金)にデビューアルバム『Turn It On!』を、クール・デス(Cool Death)とフィール・イット(Feel It)のダブルネームでリリースすることを発表しました。この“Turn It On!”は、アルバムのタイトルトラックですね」
天野「70年代のロックにしか聴こえない(笑)! ゴー・ゴーズみたい……。米フィラデルフィアのシアー・マグなんかもそうですが、ここまで振り切れていると痛快ですよね。フロントウーマンのアラナ・オリヴァー(Alanna Oliver)は、“Turn It On!”のインスピレーションを得たのはブロンディのデビー・ハリーについてのドキュメンタリーを観ていたときだったと明かしていますが、思わず〈そのまんまじゃん!〉と言ってしまいました。メロディーも〈♪フッフー〉というコーラスもギターリフとギターソロもあまりにもノスタルジックで、ぐっときますね。それでいて、突き抜けたポップさが力強い。ロメロのアルバムが楽しみになりました」
Doss “Jumpin’”
田中「4曲目はドースの“Jumpin’”。ドースは昨年4月に7年ぶりのEP『Puppy』をリリースしたのですが、同作からのシングル“Look”を以前〈PSN〉で紹介しました。改めて確認すると、米NYのプロデューサーで、フックのあるボーカルフレーズを使ったダンスミュージックが人気を博しています。ハイパーポップ的な過剰さとキャッチーさがありつつも、彼女の曲はハイパーポップよりもテクノやハウスなどの流儀に忠実なプロダクションだな、という印象です」
天野「今回の“Jumpin’”は、アッパーなボーカルとパワフルなボーカル、ちょっと汚れたハイハットの音などが、80年代末~90年代初頭のハウスをほうふつとさせますね。ヘヴィーなベースもすごい。ちなみに、彼女はこの曲について、『解放されること、道に迷うこと、そして揺れる光と振動する床がスローモーションのモンタージュのように重なる順序バラバラの記憶について』と言っています」
田中「酩酊してハイになって踊りまくったときの散り散りになった記憶が頭のなかでフラッシュバックしている、ということでしょうね。〈わかる!〉とうなずきました(笑)」
Stars “Pretenders”
天野「ジャック・ハーロウの“Nail Tech”やヴィンス・ステイプルズがマスタードをフィーチャーした“MAGIC”など、この一週間はラップの話題曲も多かったのですが、今週の〈PSN〉のセレクトはロックが多くなったので、ついでのスターズの新曲“Pretenders”も紹介しましょう」
田中「カナダ・モントリオールのインディーポップバンド、スターズは、2000年代のインディーロックを聴いてきたリスナーにはお馴染みでしょうか? 20年以上活動しているので、もうベテランですよね。そんな彼らが、5年ぶりの新作『From Capelton Hill』を5月27日(金)にリリースするとアナウンス。アルバムから、この“Pretenders”と“Snowy Owl”がシングルカットされました」
天野「エイミー・ミラン(Amy Millan)が歌うメロディー、キラキラしたギターとシンセサイザー、うねるベースと16ビートのハイハットが疾走感を生むドラム……。“Pretenders”には、イントロからハートを打たれました。メンバーの年齢は50代目前ですが、ティーンエイジ・ファンクラブやベル・アンド・セバスチャンに似たエバーグリーンな感覚が最高です。亮太さんが好きなブルース・スプリングスティーンからの影響を感じませんか? 〈私たちは永遠の若さに賭けた〉と歌い上げる歌詞も、ぐっときます」
