カルテット第一作『Lathe Of Heaven』から8年。今作ではベース以外のメンバーが代わった。楽曲の意匠に変化があったとは感じない。三つの楽器の旋律が交差するスリー・パートハーモニーが織りなすシンプルな音楽は変わらない。そしてオーネット・コールマン・カルテットのような熱はこの音楽からは聴こえてこない。解放のエネルギーが憑依したフリージャズはない。一音の逸脱が何かを乱してしまうそんな緊張感がこの音楽を満たす。禁則をそれぞれが理解した上で獲得され生成される自律的な音楽。バーラインは必要ないとストラヴィンスキーは語った。水平方向の自由を妨げる垂直指向をジャズから消去すること。それが彼の願い?