キュアーの雰囲気、ストロベリー・スウィッチブレイドの歌
“Talk To Me, Talk To Me”は解読がちょっと難しい。全体の雰囲気はキュアーの“Lovesong”（89年）を思い出させるが、その上に乗っているキーボードはまるでストラングラーズ。歌メロは北欧風で哀愁を誘う。なのにギターソロはハードに火を吹く、五目味仕様の風変わりな曲だ。
“Reclaim The Night”も情報量の多い曲で、サラ・マーティンのボーカルはベルセバと同じグラスゴー出身のストロベリー・スウィッチブレイドを思い出させる素朴なものだが、ビートのパターンとハンドクラップの入れ方は往年のネプチューンズ的。そこにアナログシンセの名器OB-6が鳴りまくるという過剰さが本作でも異彩を放っている。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの世界、プリファブ・スプラウトのハーモニカ
“Do It For Your Country”はデビュー当時のベルセバに最も近いテイストのフォーキーな曲だが、頭の入り方や曲の世界がヴェルヴェット・アンダーグラウンドの“Sunday Morning”（67年）と重なる。もう1曲、彼らの“Femme Fatale”（67年）に瓜二つのAメロを持つ“Come On Home”は、曲のアレンジ自体はまったく違うテイストで、スタイル・カウンシルの“Speak Like Child”（83年）を思わせるリズムアレンジ、ホーンの入れ方になっているのが面白い。
カルチャー・クラブの“Church Of The Poison Mind”（83年）とそっくりなフレーズのハーモニカで始まる“Unnecessary Drama”は、“Don’t Sing”（84年）や“Nightingales”（88年）などでハーモニカを積極的に使っていたプリファブ・スプラウトを思い出させるところも。3月に公開されたこの曲のMVを見るとスティーヴィー・ジャクソンが四六時中ハーモニカを吹きまくりすぎ、セラピストに楽器を没収されてしょんぼりする姿を見ることができる。
グラスゴー制作で自然と滲み出たルーツ
通してアルバムを聴いてみると、ことさら80sに寄せてやるぞという作為がある風でもなく、久々にグラスゴーでリラックスしてレコーディングを進めるに当たって、自然とルーツにあるものが滲み出てきた、というのが本当のところではないだろうか。それと同時に、曲作りがメロディーのリサイクルから成り立っているものであるということを実践的に伝えようとした節も感じられる。古今東西のグッドミュージックに対してニュートラルであり続けてきたベルセバらしい、みずみずしいメロディーのフルコースを残さず堪能して欲しい。
RELEASE INFORMATION
BELLE AND SEBASTIAN 『A Bit Of Previous』 Matador／BEAT（2022）
リリース日：2022年5月6日
■国内盤CD
品番：OLE1845CDJP
価格：2,420円（税込）
国内盤特典：ボーナストラック2曲追加収録／解説書・歌詞対訳封入
■国内盤CD+Tシャツ（数量限定）
品番：OLE1885MRJP
価格：6,600円（税込）
■輸入盤CD
品番：OLE1845CD
価格：2,490円（税込）
■輸入盤LP
品番：OLE1737LP
価格：3,190円（税込）
■限定輸入盤LP（7インチ付／数量限定）
品番：OLE1845LPE
価格：5,290円（税込）
TRACKLIST
1. Young And Stupid
2. If They’re Shooting At You
3. Talk To Me, Talk To Me
4. Reclaim The Night
5. Do It For Your Country
6. Prophets On Hold
7. Unnecessary Drama
8. Come On Home
9. A World Without You
10. Deathbed Of My Dreams
11. Sea Of Sorrow
12. Working Boy In New York City
13. A Bit of Previous *Bonus Track for Japan
14. Sometimes *Bonus Track for Japan
