
Kenの個性的な歌に挑み成長したShinのボーカル
――今回の『Reincarnation』の選曲はどのような観点で考えたんですか?
Keija「僕がSERPENT時代に書いた曲を全部やろうと思ったんです。ただ、デモ時代に作った“Erase Me”と“Serpent”は、このアルバムの中に入れるとちょっと浮いてしまうかなと思ったので、外しました」
――結果的に『CRADLE OF INSANITY』から9曲、『xGODx』から7曲。とはいえ、曲順は悩みますよね。
Keija「めちゃくちゃ悩みましたね。全部で16曲なので、2枚組でバランスよく分けようとすると、8曲ずつになるじゃないですか。
僕、アルバムを作るときって、大体この曲は4曲目とか、曲順を決めて作るんですね。でも、今回は曲が決まっちゃってるから、いかに飽きない流れにするか……Shinからは、当時の曲順通りっていいんじゃないかって意見もありましたし、いろいろ考えましたね。でも、最終的に、曲順を変えたほうがアルバムとしても新しい感じが出るかなって」
――ディスク1の1曲目は『CRADLE OF INSANITY』と同じく、イントロダクションの“Shadow of Death”ですよね。かつてのSERPENTを知っている人は、次に“Bloody Gates”が来るという記憶があるわけですが、今回は“Cradle of Insanity”という大胆な選曲で。
Keija「そうなんですよ(笑)。“Cradle of Insanity”はすごく人気のあった曲なので、それもインパクトになるんじゃないかなって。
ただ、リメイクしてみて、当時はなぜ“Bloody Gates”を(実質的な)1曲目に持っていったんだろうって思ったんですよ。だから、あの頃とは感覚が結構変わったのかなぁっていうのは感じましたね。当時、“Bloody Gates”は自分の中でも推し曲だったんです。でも、今は“Cradle of Insanity”のほうがしっくりくる。後に周りの反応を得たゆえのものかもしれないですけどね」
――Shinさんにとって、“Cradle of Insanity”は2回目のレコーディングになりますが、前回との違いもあったと思うんです。
Shin「前回は前回で、僕的には結構いい出来だったなって思ってたんですけど(笑)、今回はすべての曲に言えるんですが、自分的にはボーカルも一段レベルが上がったかなと思ったんですよ。表現の幅が広がったなと。
今までは自分が歌いたいように作った曲を歌っていただけで、他の人が作った譜割とかボーカルラインを自分なりに歌い直すっていう作業は全然やったことがなかったんですよね。前回の“Cradle of Insanity”はあくまでもデモ的な感じで作ったものだったので、今回、しっかり本腰入れて臨んだところ、自分の今までのオリジナルアルバムに比べても、ボーカル的にはかなり出来はいいと思います。
リメイクなので、ある程度はKenさんのやり方に近づける努力も必要になる。そうすると、自分の持っていない何かをやらなきゃいけないから、新たに表現しなきゃいけないことが増えるんですよね。全曲を通して、〈このメロディー、リズムに対して、ボーカルをこう入れるんだ!?〉というのが結構あるんですよ。僕とは得意とする歌い方が全然違うんですよね」
――Kenさんの歌自体が個性的で、いわゆるメロディックデスメタルの典型ではないですよね。その意味では、アルバム全体を通して、Kenさんらしさも彷彿させつつ、Shinさんらしい歌に仕上がった。
Keija「そうなんですよ。いいところを取ってきてますよね。“Suicide Diary”とかを聴いてたら、Kenの声に聞こえるときがあるんですよね」
Shin「寄せにいくところもありつつ、その中で自分の色を出していったつもりではあったんですけどね。その新しい感じが面白いと思います。全然別の曲に聞こえるんじゃないですかね」
――特に魅力的に感じるのは、語りの部分であるとか、低音でジワジワと情景を描いていくパートですよね。
Keija「語りの部分は、僕もめっちゃ感動しましたね。特に“Suicide Diary”とかは凄いなって思いました」
Shin「レコーディングで一番難しいのはそこなんですよね。シャウト系は正直、勢いを大事にするところがありますけど、Veiledの曲にも語りの部分は多いんですよね。その意味では、このバンドで培ったところもあるんですけど……」
Keija「でも、今回は一味違いますよね」
Shin「意識して歌ってきたところでもありますし、確かにこの2年の成長はあるかもしれない。色気は出たかもしれないですね」
――デモ時代から数えれば、“Siren Night”“Bloody Gates”“Angel’s Grave”など、Keijaさんにとっては4回目のレコーディングとなった曲もありますよね。
Keija「確かに4回目ですね、言われて思い出しました。思いがすごく強かったんでしょうね、それだけ録ってるってことは。録るたびに〈ああでもない、こうでもない〉と思いながら」