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東儀秀樹

 休憩を挟んで後半1番手となったのが雅楽の東儀秀樹。彼の演奏が伝統の枠に留まらず、ボーダーレスであることはよく知られている。オリジナルの“大河悠久”と“リベルタンゴ”の2曲を笙と篳篥を交互に持ち替えながら演奏していく。「天から降り注ぐ光を奏でる」と紹介した笙は、単独でも宇宙を感じさせる音色だが、ハープと、またフルートやオーボエなどと重なり合うと、そのユニゾンがさらに宇宙を美しく広げていく。そして、意外な選曲“リベルタンゴ”で上半身を反らせながら小さな楽器、篳篥をまるで熱唱するかのように奏でる姿は、ボーダーレスを体現していた。同時に第一コンサートマスターのヴァイオリンからも情熱的な歌が聴こえてきた。

尾崎裕哉

 つづく尾崎裕哉は、オーケストラとの共演を多く経験しているシンガーだ。彼が歌う尾崎豊の名曲を聴くたびに、ポップ界で親から子へと継承された奇跡を感じさせられる。オリジナル楽曲“Lighter”と、ある音楽番組のランキングをきっかけにこの曲への想いを新たにしたと語る“I Love You”を歌う。

平原綾香

 次に登場した平原綾香もオーケストラとたびたび共演している。ベビーピンクの愛らしいロングドレス姿に会場全体が華やぐ。1曲目は、会場のある富山県のお隣り、長野県安曇野市と松本市を舞台にしたNHKの朝ドラ「おひさま」の主題歌“おひさま~大切なあなたへ”。音符のひとつひとつ、言葉ひとつひとつに命と愛を注ぎ込むように歌っていく。ここ数年出演が増えたミュージカルの影響なのか、オーケストラとの一体感のなか、まるでセリフのように歌の物語を慈しみながら歌う。ドラマから約10年、この歌がとても素敵に成長し続けていることに感動して涙が溢れ流れてくる。2曲目は、誰もが期待する代表曲“Jupiter”。たった2曲とは思えない濃密なパフォーマンスだった。

ASKA

 そして、トリを飾ったのはASKAだ。満席の会場、私の周囲に80年代、90年代に青春を送った女性が多かったのかもしれないが、声を抑えた静かな歓声があがる。ある意味で理想的なアーティストとの再会なのかもしれない。ヒット曲“SAY YES”、“はじまりはいつも雨”と、新曲“PRIDE”の3曲をいつものようにスタンドマイクでパフォーマンスする。その反響は、とりわけ大きな拍手から伝わってきた。

 コンサートのキャッチコピーは、〈ポップスとオーケストラが恋をした。〉だ。これまではオーケストラと共演することで、シンガーから新たな歌が引き出されていると思ってきたけれど、オーケストラと相思相愛になることで、熱愛という化学反応が起きる。その可能性に気付かされたコンサートだった。

写真提供:(公財)富山市民文化事業団

 


LIVE INFORMATION
オーバード・ホール開館25周年記念
ポップス&オーケストラによる音楽の祭典 「AUBADE SYMPHONIC WAVE2022」

2022年2月20日(日)AUBADE HALL 富山市芸術文化ホール ※こちらの公演は終演しております
開場/開演:14:00/15:00
出演:ASKA/八神純子/KAN/平原綾香/東儀秀樹/石崎ひゅーい/尾崎裕哉
三ツ橋敬子(指揮)オーケストラ・アンサンブル金沢
芸術監督:須藤晃
https://www.aubade.or.jp/static/special/symphonic_wave_2022/