
アコースティックライブの手応えからアルバムへ
――アコースティック作品は幅広く様々な人が楽しめるものですが、今回の『&』はどのようなきっかけで取り組むことになったんですか?
TORU「よく訊かれるけど、はっきりしないよね(笑)。
こういう編成でも表現してみたいって思いはずっとあったんですね。歌がより活きるんじゃないかって。そんなところから、アコースティックライブもやるようになって、そこで感じた手応えもあったから、いよいよって感じになったんだと思うんですよ」
HAYATO「ようやく形にできるぐらいにはなったのかな。
やっぱりアレンジが難しいんですよ。だから、最初のうちはフルアルバムなんて話じゃなくて、何曲か出せたらいいよねみたいな感じだったんですよ」
TORU「確かにそんな話だったね。4曲ぐらいアレンジして、新曲を1曲入れるとか。それも何年か前の話だけど」
HARUKA「ただ、去年、配信でライブをやったときに、3人の気持ちが合ってるかを試そうみたいな、おまけ企画があったんですよ。そこで〈今年の目標は?〉って問われて、2人はアコースティックアルバムを出したいって言ってたんです。多分、あれがもう一度火をつけたきっかけなのかなって」
TORU「どうかなぁ」
HAYATO「でも、そう言ってたぐらいだから、多分、うっすらとはあったんだろうね。
あとはコロナの影響もあるんじゃない? これでじゃんじゃんライブをやってたら、多分、アコースティックアルバムを作るかって話にはなってなかったような気もするよね」
HARUKA「そんな中で、今度の8月のライブに向けて、その前に何かしたいねって話になったんですよね」
TORU「4枚目(2020年作『TRINITY』)が出て、曲数が増えたから、選べる曲が増えたっていうのもあるかもしれない」
――ロックバンドが自分たちの曲をアコースティックで演奏するケースは少なくないとはいえ、それが可能なバンドじゃないと、そもそも選択肢に入ってこない。その意味では、TEARS OF TRAGEDYにとっては、アコースティックで何かをやること自体、大きな壁を乗り越えるものではなかったとは思うんです。
HARUKA「でも、最初のアコースティックライブは見よう見まねというか、見切り発車だったんじゃないですか? できる確証はないけどやってみようみたいな」
TORU「2013年の12月にセカンド(『Continuation Of The Dream』)が出て、そのときのインストアイベントでやったのが最初だったんですよね」
HAYATO「その時点では、TEARSには〈ピアノだけで1曲〉とかはなかったから、それこそ本当に見よう見まねじゃないけど、俺も初めて“The Arclight Of The Sky”とかをピアノだけのアレンジにしたりもしたんだよね」
HARUKA「それがわりと好評だったから続けてるのかなと思うんですけどね」
ゼロからイチを生み出す作業だったアコースティックアレンジ
――今回の選曲はどのように考えたんですか?
TORU「もしやるんだったらこれかなっていうのを、実は時間がある時に考えたりはしてたんですよ。それプラス、今まで人前でやった曲に関しては、ブラッシュアップして収録できるんじゃないかと思いましたし、それとは別にこの曲をアレンジしたらどうかなってアイデアも自分の中にあったんですよ。それを2人に伝えてみて、今回の10曲が決まっていった感じでしたね」
HAYATO「パッと決まってね。特にそこで揉めるとかもなくて」
TORU「なるべくHAYAちゃんに負担が掛からないように(笑)。
一番大変だったのは、アレンジがゼロイチの作業に近くなる曲なんですよ。それを僕が引き受けた感じだったんですけど、要はインストアイベントとかでやった曲は、漠然とですけど、すでにアコースティックの編成でやれる状態にはあるわけですよね。ただ、そうじゃない曲に関しては、メロディーとコード進行はあるとはいえ、編成がバンドとは違いますし、テンポもキーも変えたりするので、さぁどうするかと」
――演奏したことがなかったのはどの曲だったんですか?
TORU「“Anfillia”“Blue Lotus”“always”ぐらいかな。“It Like Snow...”“Euclase”“Spring Memory”は、アコースティックギターと歌という編成で演奏したものをアルバムの購入特典として配ったことがあって、最初はその3曲はそのまま収録しようかとも考えたんですよ。負担的に、他の曲に時間を割けるから。
でも、他の曲のアレンジが始まって並べて聴いたときに、代わり映えがしない気もしたんですね。やっぱり聴く人に楽しんでもらいたいので、そこは頑張って改めてアレンジして。特に“Euclase”は大変身しましたね。“It Like Snow...”のギターは2本にして、“Spring Memory”は自分でピアノを弾いて。“Anfillia”とか“Blue Lotus”はゼロイチに近かったかな」
――どちらも原曲がまさにメロディックスピードメタルのスタイルですから、まったく違う曲になりましたね。
TORU「そうですね。“Anfillia”のAメロは、漠然とアコースティックにしたらこういう歌の始まりがいいなって思っていた感じにしたんですよ。でも、1曲通してやるとなると、その最初のイメージだけで作るのはちょっと難しかったんですよね。とにかく尺がもたない。そこで改めて起承転結を考えつつ、最後まで飽きずに聴かせられるような形にして。ただ、いろいろ盛り込んではいても、お腹いっぱいにならないようにしないといけないんですよね」
――アコースティックアレンジをする場合、基本的には通常のバンド編成よりも音を削っていく作業になりますが、いろんな音を盛り込みたくもなる。
TORU「うん。ただ、それをやると、またバンドアレンジのほうに寄ってきちゃう。その辺のさじ加減が難しんですよね。
とはいえ、“Euclase”はその意味では完全に切り替えて考えたんですよ。もはや4つ打ちですからね」
HAYATO「もうEDMみたいな。誰もがこんなふうになるとは思ってなかったです」
HARUKA「アコースティックアルバムって言ってますけど、あんまりアコースティックじゃないものもあるんですよね」