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歌のお姉さん、黒猫さん、しょこたん、宇多田ヒカル……

――バンドのポテンシャルがすごくよく表れたアルバムだと思いますよ。冒頭でも歌を活かすという話はありましたが、今回はHARUKAさんの魅力も今まで以上に色濃く表現されている。先ほど話題に出た歌詞シートのメモには、他にはどんなことが書かれていたんですか?

HARUKA「“Anfillia”には〈私〉って書いてありますね。これは一番古い曲なんですよ。だから、今の自分がそのまま歌えば、自然に変化も表れるだろうって意味合いを込めて。“クロノメトリー”は〈跳ねる感じ〉〈R&B〉〈楽しい〉(笑)。“always”には〈歌のお姉さん〉〈(陰陽座の)黒猫さん〉って書いてある(笑)」

TORU「陰陽座にもピアノバラードがありますよね、“星の宿り”とか。我々もめっちゃ聴いてきた世代だし、HARUKAはコピーバンドもやってたし」

――でも、すごく重要なことを言ってますよね。その曲のイメージ、あるべき姿をすごくシンプルに言い表している言葉ですから。

HARUKA「あまり難しいことはわかんないですけど(笑)。

“Spring Memory”は〈ささやき〉。“VOICE”は、大好きなAimerさんやアイナ・ジ・エンドさんみたいにしたくて、一回やってみたんですけど、HAYATOに却下されたんですよ」

TORU「その音源は残ってないの? 聴いてみたいんだけど」

HAYATO「もう全然駄目です(笑)。ものまねじゃないんだからっていう」

HARUKA「まぁ、そんなふうに当初は思ってたんですけど、“VOICE”は何年か前にアコースティックアレンジで撮ったMVがあって、そのときとも違う感じにしたいなと思って、ちょっと崩して歌って」

TORU「MVを公開したのは2019年ですけど、レコーディングしたのは2017年ぐらいだから、5年以上経ってるんですね」

2019年の“VOICE (Acoustic Version)”のミュージックビデオ

HARUKA「“VOICE”に関しては、歌詞の紙に何も書いてないから、多分、〈自分〉なんでしょうね。“frost flower”は、〈しょこたん〉〈笑顔〉。“Euclase”は〈宇多田ヒカル〉って書いてある(笑)」

TORU「R&Bチックなっていうこと?」

HARUKA「多分、そういうことが言いたかったんだと思います」

――そういった言葉も謎解きのように楽しめますね。歌録りはいつもと同じように行ったんですか?

TORU「いや、いつもだったら、全部プリプロをするんですけど、今回は過去に歌ったことのある曲であったり、スケジュールの都合だったりとかで、基本的にはいきなり本番っていう感じでしたね。もちろん、そこで録ったものを聴いて、改めて考えることもありますけど、事前にどうなるのかは、僕らはわからなかったです。HARUKA的にはあったのかもしれないですけど」

HARUKA「ありませんでした(笑)」

TORU「とにかく歌って、それを聴いてみてでしょ?」

HARUKA「もちろんそれはあるけれど、最初からこの曲はこう歌おうというイメージがすべての曲であったわけではなくて、行きの車の中で、声出しついでに練習しながら、今日歌う3曲はこんな感じにしようかなみたいな……」

――あんまり決め込んで歌うことをしたくなかったということですよね。

TORU「結果的にファーストインプレッションがハマってるってことだと思うんですよね」

――いわゆるバンドサウンドが後ろで鳴っていないことも関係しますが、息遣いもすごく残されていますよね。

HARUKA「あぁ。息遣いはちょっとしたテーマとして意識はしてましたね。今回はアコースティックだから、自分の声がすごくダイレクトに伝わると思うので、いつも以上にブレスで歌うみたいなことを心掛けてました」

TORU「今、息遣いの話がありましたけど、今回はこれまでやってなかったボーカルの処理を個人的にやったんです。ピッチやリズムを修正するということではなく、ちょっとしたノイズの処理なんですね。それこそ1文字ずつじゃないですけど、とにかく綺麗になるように夜な夜な取り組んで。どの曲でも慎重に慎重に。バンドサウンドだったら目立たなくても、この編成だと気になる箇所も出てくるんですよね。当然、難しいところもあったんですけど、可能な限り余計なものを取り除いて。最初は気づかなかったんですけど、よく聴いたら、ある曲ではマイクを蹴った音が入っててびっくりしたんですよ(笑)。しかも歌にかぶってて。何とか上手くそのノイズだけ消せたのでよかったですけどね」

HARUKA「結構、聞こえてこないだけで、そういう音はあったと思うんです(笑)。目をつぶって歌ってたりすると、気づいたらマイクにすごく近づいていて、思わず触ってしまったりして」

 

アコースティックアルバムにチャレンジしたからこその成長

――そういった丁寧な取り組みも、シンガーの個性が表れる繊細な面をより伝えてくるわけですね。こうして完成してみると、やはりすごく充実感があるのではないですか?

HARUKA「そうですね。数年後に聴いたら、きっとまだまだだなって思うんでしょうけど、今できる最大限のことを、それぞれが発揮できたのかなぁと思います」

HAYATO「あんまり背伸びしようとすると悩みすぎちゃうんですよね。だから、あまり気負わずに、いつも通りにできることをやる。TORUさんが苦労した分、こっちは楽させてもらったところはあるかもしれないですけどね」

TORU「2人を信頼してるし、それぞれの100%を出して欲しいんですよ。とにかく全力でやってもらいさえすれば、絶対にいいものができる。

だからこそ、逆に自分はどうしようかなって感じでもあったんですけど、結果的にいろいろチャレンジもしましたし、それはHARUKAもHAYAちゃんもそうだと思うんですよ。いい経験にもなりましたし、こういうアルバムを作ったからこそ成長できた部分も何かしらあると思うので、それがまたこの後の人生というか(笑)、いろいろな表現にも活きてくるだろうし、自信にもなったかなと思うんですよね」

――さて、来る8月28日には〈TRINITY&OVERTURE〉と題された、バンド編成での公演が予定されていますが、『TRINITY』をリリースしてからは初の有観客ライブとなりますね。これも当然楽しみではありますが、今回の『&』を聴けば、久々のアコースティックライブの実現も期待したくなります。

HAYATO「はい(笑)」

HARUKA「我々はやりたいと思ってるんですけどね、せっかく作ったので(笑)」

TORU「今までのアコースティックライブは、まず曲数が少なかったし、半分トークショーのファンミーティングみたいな感じだったんですよね。だから、それこそウッドベース奏者を呼んだりして、純粋にアコースティックでのしっかりとしたワンマンができたらなって。そう遠くない未来にやりたいですね」

 


RELEASE INFORMATION

TEARS OF TRAGEDY 『&』 Walküre(2022)

リリース日:2022年5月25日
品番:WLKR-0062
フォーマット:CD
価格:3,300円(税込)
タワーレコード特典:ジャケ絵柄キーホルダー

配信リンク:https://diskunion.lnk.to/and

TRACKLIST
1. クロノメトリー
2. Spring Memory
3. Anfillia
4. VOICE
5. It Like Snow...
6. Blue Lotus
7. The Arclight Of The Sky
8. frost flower
9. Euclase
10. always

■TEARS OF TRAGEDY
HARUKA – Vocals
TORU – Guitars, Bass*
HAYATO – Piano
*Piano (M-2, 3, 6, 8), Programming (M-3, 6, 9)

 

LIVE INFORMATION
TEARS OF TRAGEDY ワンマンライヴ『TRINITY&OVERTURE』

2022年8月28日(日)東京・新宿 BLAZE
開場/開演:16:15/17:00
前売り/当日:4,500円(税込/ドリンク代別/整理番号付)/5,000円(税込/ドリンク代別)

■サポートメンバー
ベース:Yoji Tanegashima(AFTERZERO他)
ドラムス:MAKI(ex-HER NAME IN BLOOD)

■一般発売
2022年5月28日(土)10:00〜
イープラス:https://eplus.jp/tears-of-tragedy/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/tears-of-tragedy/
ローソンチケット:https://l-tike.com/tears-of-tragedy/

お問い合わせ(ネクストロード):03-5114-7444(平日14:00〜18:00)/http://nextroad-p.com/