Page 2 / 2 1ページ目から読む

リッチー・ブラックモアが目の前で弾いているような圧巻の“Highway Star”

それでは代表的な2曲、“Highway Star”と“Smoke On The Water”を聴いてみよう。まずアルバムの冒頭を飾る“Highway Star”。イントロにおける印象的なイアン・ギランの叫び声が何重にも重なるところから、疾走感は全開だ。重なっても音が団子にならず、一つ一つがくっきりと聞こえる。とにかく各楽器の分離が良く、音の広がり方は感動的ですらある。音像が格段に広くなったこともあり、ドラムやキーボードは前後左右から攻めてくる感じに仕上げてあるので立体感もある。

『Machine Head』収録曲“Highway Star”

リッチー・ブラックモアのギターは比較的どっしりと構えているが、ピッキングのニュアンスや指が弦をこする音までがクリアに再現されており、まるで目の前で弾いているような錯覚に陥る。そして、中間部のギターソロが圧巻。じつはこのギターソロは最初から最後まで2本のギターでハモっている。メインのギターに加えて2本目のギターがユニゾンだったり度数を変えてハーモニーをつけたり、隠し味的に機能しているのだ。それが2ch再生のとき以上に明瞭に聞こえるのが特徴。

 

美しい歪みとピックアップチェンジが鳥肌モノの“Smoke On The Water”

次に、ロックギター嗜むなら知らない者はいない“Smoke On The Water”。この曲は『Made In Japan』のバージョンが有名になりすぎたこともあって、オリジナルのスタジオバージョンがかえって新鮮に聞こえたりする。改めて気がついたのは、リッチー・ブラックモアのギターは今思うほど歪んでいなかったということ。エフェクターの人工的な歪みではなく、アンプのナチュラルな美しい歪みだ。

『Machine Head』収録曲“Smoke On The Water”

リッチーの場合、ストラトキャスターの3つのピックアップのうちフロントPUとリアPUを使い、極端な音色の変化を演出している。フロントPUによるエコーを伴った甘いトーンによるメロディックなインプロビゼーションが展開され、それに続くソロのエンディングにおける印象的なフレージングはおそらく他のギタリストには思いもつかないだろう。

ライブ盤ではPUをリアに切り替えるという有名な箇所があるのだが、このスタジオ盤ではピッキングの位置をブリッジ寄りにして硬いトーンを出しているように聞こえる。その瞬間の鮮明な音色チェンジが際立って聴こえるのは鳥肌モノである。エンディングが少し長いのは、おそらく4chのミックスの際にオリジナルのマスターを使っているからだろう。

 

特別な輝きを放つサウンドに新たな表情を加えたSACD

ディープ・パープルは、重厚な中音域を誇るバンドである。ベース、ギター、オルガンが一丸となって中音域をリフで固める。そこへドラムも加わって作り出す縦ノリの疾走感は、同時代のバンドの中でも特別な輝きを放っている。

その強力なサウンドは従来の通常CDでも充分に伝わり満足できるのだが、このSACDハイブリッド盤ではそこへ新たな表情が加わったという印象だ。ただし、通常盤とどちらが優れているのか?という問題ではない。とても自然なサウンドに仕上がっているので、初めてこのアルバムを体験する人にとって、このSACDは全く違和感がないだろう。むしろ、通常盤を隅々まで味わいつくした人に、より楽しんでいただけるのでないかと思う。

タワーレコードのYouTube動画〈【SA-CD普及委員会】#03 SA-CDとCD聴き比べ~朝比奈隆のベートーヴェン〉

 


RELEASE INFORMATION

DEEP PURPLE 『Machine Head(SACD/CDハイブリッド盤)』 Rhino/ワーナー(2011)

リリース日:2011年8月17日
品番:WPCR-14166
フォーマット:SACD/CDハイブリッド盤
※5.1chサラウンド&ステレオ音声収録
※通常のCDプレイヤーでも通常のCDとして再生することが可能です
価格:3,353円(税込)
ボーナストラック“When A Blind Man Cries (Original B-Side)”収録

TRACKLIST
1. Highway Star
2. Maybe I’m A Leo
3. Pictures Of Home
4. Never Before
5. Smoke On The Water
6. Lazy
7. Space Truckin’
8. When A Blind Man Cries (Original B-Side) *Bonus Track