この4年間を凝縮したアルバム
エクゼクティヴ・プロデューサーとして関わるレーベル=Cream Teamでの制作活動ともリンクする90sフレイヴァーは、Mitsuの言う「クオンタイズ利き気味のビート」として本作にも表れたが、それが懐古趣味に聴こえないのはやはり鳴りも含めたセンスによるところが大。「この4年間を凝縮して作れたし、ホントの意味で納得できる、みんなに聴いてもらいたいと思えるアルバムになりました」と彼は胸を張る。
「いままでのアルバムに比べても現場でかけられる曲が増えたとは思ってます。〈いま作りはじめてもこういう感じになりそうだな〉っていう、名刺代わりのアルバムにもなった」。
〈ジャジー〉な方向性ばかり求められることに抗っていた頃を過ぎて、いまのMitsuにはそれも自身の強みとして受け入れる懐の深さがある。ツボにハマった音を聴かせる今回の『MAGNETAR』の深みも、その潔さにこそ所以があるのかもしれない。「何でもいいからとにかくカッコいいって思える曲にしたいっていうだけになってますね、いまは」と、彼はその心境を語った。
「例えばTVドラマの曲でも何でもやり続ければファンは増えていくものだと思うんです。でも、こんなこと言ったらレーベルには悪いけど、自分のアルバムはそこを狙ってないし、いまからファンを増やすっていうよりはいままで聴いてくれてる人にどんだけクオリティ高いものを聴かせられるかだと思ってて。だからクオリティの高いアルバムをどんどん作っていきたい」。
Mitsuはさらにこうも言う、「同じ部屋に機材を置いて、ここでずーっと生活してる感じなんですよ。そうなるとちょっとした変化が嬉しいっていうか、プラグイン一つ変えたり、新しい機材が一個入るだけでもモチベーションが上がる」と。そうした変化が彼をさらなる深化へと導く。TVドラマ「拾われた男」をはじめとする数々の楽曲提供にビート・アルバム、Cream Teamからのリリースに、何よりGAGLEの来たるべき新作……いまテーブルに乗った引きも切らぬ仕事のなかで、彼はその深化の跡を見せてくれるはずだ。
左から、DJ Mitsu the Beatsの2020年作『ALL THIS LOVE』(Jazzy Sport/Village Again)、DJ Mitsu the Beats & Takumi Kanekoの2022年作『Floating』(松竹梅レコーズ)、GAGLEの2018年作『Vanta Black』(Jazzy Sport)
Mitsu the Beatsがプロデュースやリミックスなどで参加した近作を一部紹介。
左から、HAIIRO DE ROSSIの2020年作『HAIIRO DE ROSSI』(forte)、KOWREEの2020年作『Gene And Thought』(TRAQLOUD)、KGE The Shadowmenの2020年作『ミラーニューロン』(PYLORHYTHM)、Keycoの2021年作『あいいろ~Keyco 20th Anniversary Album~』(Indigo Hz Stu dio)、DJ KAWASAKIの2021年のシングル“Sun, Run & Synchronize”(KAW ASAKI)、JASMINEの2022年のシングル『FALLIN'/Neverland』(AT HOME SOUND)、9m88のニュー・アルバム『9m88 Radio』(Pヴァイン)