Page 2 / 5 1ページ目から読む

土曜の夜と日曜の朝

 まず〈Act I〉はオールド・ソウル調の“Rounds”でスタート。ジョンとはやたらコラボしている好相性なリック・ロスのブルージーなラップも印象的だ。ニューウェイヴ風味で疾走する“Waterslide”からは、欲望、快楽、肉体的な愛をエロティックに追求した土曜の夜が幕を開ける。JIDを従えたネプチューンズ調ファンク“Dope”(チャーリー・プースが共作/演奏)で性急に迫れば、フリー・ナショナルズの演奏するエレガントな“Strawberry Blush”でゆったり踊り、中盤のクライマックスとなる“All She Wanna Do”へ。カルヴィン・ハリスがやりそうなこちらはモンスターズ&ザ・ストレンジャーズも交えたスマートな80sテイストのローラー・ディスコで、スウィーティーとの好コラボ版も収録されている。同曲を区切りに舞台はベッドルームへ移動(?)し、ジェネイ・アイコとタイ・ダラー・サインを交えた官能の迸るスロウ“Splash”、モントクレアーズ“All I Really Care About Is You”を引用したスウィート・ソウル“You”、アンバー・マークとの耽美な“Fate”が続く。ジャズミン・サリヴァンとデュエットしたアドア風味の“Love”(ピンク・スウェッツがプロデュース)もダップ・キングス軍団の援護が効いた素晴らしいハイライトだ。

 一方、日曜朝のフィーリングでまとめられた〈Act II〉では癒しや親密さ、献身が表現され、精神的な愛にフォーカスした楽曲集となる。これもピンク・スウェッツが制作に参加した幕開けの“Memories”は微睡むようなアコースティック・ソウルで、どこかスティングを思わせるバラードの“Nervous”も情熱的に響く。それに続く“Wonder Woman”がいきなりのハイライトで、主役自身のピアノとダップ・キングスのノスタルジックな演奏に乗せて、女性のパワーを賛美する感動的なソウル・バラードだ。注目のマニー・ロングを迎えたジャジーな“Honey”も素晴らしい。大らかで楽天的な“I Want You To Know”、ダビーな空間でジェイダ・キングダムと絡む“Speak In Tongues”はいずれもスティーブン・マクレガーによるレゲエ風味の好曲。小瀬村晶“Asymptote”をサンプリングしたラプソディとの“The Other Ones”、カントリー・ゴスペルのような“Stardust”からの“Pieces”へ至る厳かな流れも聴きどころだろう。レディシとのデュエットで運命の相手に歌いかける“Good”は〈Act I〉の“Love”と対になる位置付けで、実に深い印象を残す。