
30分で1曲!
――メンバーの人選のポイントは?
佐藤「(ベースの)山ちゃん以外は全員スカートのメンバー」
――1日で終えるのは絶対無理だと思ってたけど、佐藤さんには強い自信があったよね。実際、12時から始めて終ったのが18時前。
姫乃「30分で1曲!」
佐藤「もし大変そうだったら、何曲か作ってあったのを使うつもりでいました。でも、出来ちゃったからね」
姫乃「出来ちゃった」
佐藤「出来ちゃった曲の方が良かった。自分一人で作ったものよりね」
――澤部さんのラジオ(α-stationエフエム京都「NICE POP RADIO」)で初めて知ったんだけど、メンバーには事前にキャプテン・ビーフハートを聴いておくようにって言ったんだって?
佐藤「誰が言ったかは覚えてないんだけど、共通認識としてあったんじゃないかな。もちろん『ゲット・バック』も。スタジオに入ってセッションで曲を作るという」
――山ちゃんには言ってないでしょ。
佐藤「山ちゃんは、何も言わなくても、その場でアイデアを出せる人だから。それが出来る人ということで、今回のメンバーになったわけです」
――佐藤さんは最初からドラムと決まっていて、(本来ドラムの)佐久間裕太さんがギター、これは彼に何を期待していたの? あの日、スタジオでの作曲はほとんど佐久間さんのギターリフから始まったんじゃないかな。
佐藤「かっこいいんですよ。俺がドラムで、佐久間さんがギターのバンド(FINAL FIGHT)があって。ベースがのもと(なつよ)さんで、シマダボーイがボコーダーで、お互いにアイデアを持ち寄って曲も作ってて。前に一度ライブやったんですけど、それがすごく楽しかった」
――澤部さん主導なのが“二密”。シュガー・ベイブ・ライクな。
佐藤「コードから始まる曲は澤部さんですね。リフがあるのが佐久間さん」
“恋のすゝめ”の印象を覆す
――姫乃さんの話に戻しますね。今回、初めて作詞を先にやったんだけど、音のイメージがない中で、どう作ったんでしょう。確か曲タイトルを先に作ってきたのは覚えてます。

姫乃「詞先なら、後から曲を並び替える必要がないと思ったので、タイトルが並んだときに字面が左右対称になるようにしました。“僕とジョルジュ”という曲は作りたかったですね」
佐藤「ラストの曲ですね」
姫乃「その文字数がマックスと考えたときに13曲になったんですよね」
――ちょうど真ん中(7曲目)が1文字になるわけだ。
佐藤「なるほどね」
姫乃「それで歌詞の内容は1曲目から13曲目まで時系列になるような感じにして」
――つまり1曲目(“楽器としての体”)は……。
姫乃「言語がなくて感覚と身体でコミュニケーションをとるような時代から始まって、最後のほうは宇宙船で旅行が出来るのが当たり前の時代の曲になっています」
――すごいなあ! 知らなかったよ。
佐藤「あったでしょ! 姫乃さんのメモに。ちゃんと読んでないでしょ」
――曲タイトルの字面の印象が、これまでの姫乃さんの感じから変わってきた。悪く言うと、暗いなあって。
佐藤「確かに歌詞の感じは変わりましたよね」
姫乃「やっぱり曲が先にあると引っ張られて、明るい曲だと詞も明るくなるんですよね」
佐藤「素直だとそうなりますよね」
姫乃「今まで“恋のすゝめ”の印象が強かったユニットですから。〈東京〉と〈恋愛〉と〈憂鬱〉、そういうのをコンセプトに作ってきたのを今回は外して、アルバム全体で統一感を考えました」
佐藤「そうなんですね。でも音楽はもう完全に、〈東京と恋〉っていう感じですね」
――え?
姫乃「にゃははは」
佐藤「これぞ東京の恋愛だ、っていうのが伝わるかと思います」
姫乃「そこは外したんだって(笑)」
佐藤「これが渋谷系です」
――渋谷系の本質ね、意地悪な。
佐藤「いや、先週もスカートのレコーディングでみんなと話してたんです。このアルバム、捨て曲ないよねって」
姫乃「そうです、そうです」
――スタジオの現場では、全部捨て曲だと思ってたけどね。
姫乃「にゃははは」