まるで地中深くに佇んでいるかのように見えるジャケットで、無数の胞子を飛ばすマジカルなキノコに囲まれているビョークの5年ぶり10枚目は、言うなれば、死者を受け入れて新しい命を作る大地に、深く根を張り巡らせて作られたアルバムだ。

きっかけを与えたのは、“sorrowful soil”と“ancestress”の2曲でオマージュを捧げている母ヒルドゥルの死、それとも、フィナーレの“my mother’s house”を一緒に歌う19歳になる娘イサドラが自分の手を離れて巣立っていったこと、或いは、パンデミックを契機に過去数年間を母国アイスランドで過ごしたことだったのだろうか?

家族の絆について、血筋について、故郷について、自然について、自身のルーツを多層的に論じる彼女は、これまでの作品に比べると、エレクトロニックサウンドの分量を大きくカット。アレンジメントの主役を、前作のフルートのさえずりからクラリネットのウッディーで柔らかな響きに変え、ゲストシンガーを迎えたりアカペラを取り入れるなど、5作目『Medúlla』(2004年)にも通ずるボーカルでの実験も随所で行ない、いつになくオーガニックに傾いたアルバムを完成させている。

が、それだけでは終わらないのがビョークであり、クラリネットのアンサンブルやストリングス隊に加えて、バリ島出身のガバ・モーダス・オペランダイ(Gabber Modus Operandi)を一部の曲の共同プロデュースなどで起用。不意に、ガバとガムランに根差したハードで無骨なトライバルビートが打ち鳴らされ、聴き手をダンスフロアに誘い出し、異種混交がデフォルトである彼女の基準に照らしてもエクストリームなコントラストを描き出す。

弔いがあり、別れがあり、かつセレブレーションでもある本作は、ひとりの娘としても母親としてもターニングポイントを迎えたビョークにとって、これからの人生の旅において道に迷わないための、羅針盤みたいな役割を果たすのかもしれない。

 


RELEASE INFORMATION
リリース日:2022年9月30日
品番:TPLP1485CD1J
価格:2,970円(税込)
世界同時発売/解説・歌詞・対訳付

TRACKLIST
1. atopos
2. ovule
3. mycelia
4. sorrowful soil
5. ancestress
6. fagurt er í fjörðum
7. victimhood
8. allow
9. fungal city
10. trölla-gabba
11. freefall
12. fossora
13. her mother’s house

 

LIVE INFORMATION
björk japan 2023
orchestral

2023年3月20日(月)東京・有明 ガーデンシアター
開場/開演:18:00/19:00
2023年3月25日(土)兵庫・神⼾ ワールド記念ホール
開場/開演:17:00/18:00
SS席/S席/A席:18,000円/14,000円/12,000円

cornucopia

2023年3月28日(火)東京・有明 ガーデンシアター
2023年3月31日(金)東京・有明 ガーデンシアター
開場/開演:18:00/19:00
SS席/S席/A席:25,000円/21,000円/19,000円

■チケット
2022年10月8日(土)10:00〜 一般発売開始

orchestral
東京:e+(pre:2022年9月27日(火)12:00~2022年10月2日(日)23:59)/ぴあ(P:223-102)/ローソン(L:71648)
神戶:e+(pre:2022年9月27日(火)12:00~2022年10月2日(日)23:59)/ぴあ(P:227-763)/ローソン(L:55734)

cornucopia
東京:e+(pre:2022年9月27日(火)12:00~2022年10月2日(日)23:59)/ぴあ(P:223-102)/ローソン(L:71648)
・お一人様4枚まで
・購入時に同行者含め個人情報をご登録いただきます
・未就学児の入場不可

■クレジット
東京公演(orchestral/cornucopia)
主催:テレビ朝日/J-WAVE
お問い合わせ:HOT STUFF(03-5720-9999)/SMASH(03-3444-6751)

神戶公演(orchestral)
後援:FM 802/FM COCOLO
お問い合わせ:KYODO(0570-200-888)/SMASH WEST(06-6535-5569)
https://smash-jpn.com/bjork2023