コラム

ビョーク(Björk)『fossora』自身を土の中を生きる生物に仮託し、その視点から音楽化した異形の作品

みなおなじ土の中に還る

 私たちは誰であろうと、どこに住んでいようと、どのような信条を持っていようと、最期にはすべてみな同じように土に還る。私たちはある属性で分類され、土地に線を引かれた領域の中で、それぞれの対立する主義主張の中で生きている。それでも、私たちは土の中で、バクテリアや菌類や微生物によって分解され、誰もが地球から生まれ、地球に還って行く。まるで、その事実を受け入れたくないために、ことさらに違いを主張し合っているような気さえしてくる。

BJÖRK 『fossora』 One Little Independent/BIG NOTHING(2022)

 前作から5年ぶりに発表される新作『fossora』(オケラを女性名詞化した造語)でビョークは、私たちが生きて、そして還るべき〈場所〉(Topos)とは、私たちがとりあえず帰属している限定された場所なのではなく、偏在する〈不特定な場所〉(Atopos)なのだと、歌っているようだ。この5年の間には、新型コロナウイルスの全世界的な感染拡大があった。ツアーの中断もあり、結果2019年末より、故郷レイキャヴィクでこの2年あまりを過ごすことになった。それには、2018年にビョークの母親が他界したこともあっただろう。本作では、〈追悼文〉としての“sorrowful soil”と〈墓碑銘〉としての“ancestress”の2曲が捧げられている。アカペラで歌われる前者、そして、故人となった肉親の思い出を赤裸々に綴られる後者では、息子のシンドリとともに歌われている。子が親の歌を歌い、その歌を自身の子とともに歌うことは、家系という脈々と連なる縦のつながりを感じさせもする。パンデミック下のレイキャヴィクで、家族や自然のサイクルの中での生活することが、新鮮な滋養となって生み出された本作は、自身を土の中を生きる生物に仮託し、その視点から音楽化してみせる。これまでの作品のどれとも異なる世界観を獲得している。サウンドはバスクラリネットの低音が印象的で、ピチカートを多用したストリングスや、電子音がオーガニックで生命的な躍動感を醸し出す。全体的には、まるで森の中の微生物とともに奏でられるゴスペルというべき唯一無二の世界が展開されている。

 


LIVE INFORMATION
björk japan 2023  orchestral
2023年3月20日(月)東京・有明 ガーデンシアター
2023年3月25日(土)兵庫・神⼾ ワールド記念ホール

björk japan 2023 cornucopia
2023年3月28日(火)、31日(金)東京・有明 ガーデンシアター
https://smash-jpn.com/bjork2023/

関連アーティスト