戦前戦後にリリースされたSP音源を2枚のCDに収めたこの貴重な津軽民謡集はあらゆる層に聴かれて欲しい逸品。じょんがら節によされ節、そして小原節の所謂〈津軽三つもの〉を中心に編まれた本作から聞こえてくるのは生々しく迫る津軽の人や土地の記憶。津軽三味線のプリミティヴな弦の響きや、ウネりまくるこぶしはどこか砂漠のブルースにも通じる。近年民謡クルセイダーズなどのバンド、俚謡山脈の活躍やビョークが科学未来館で披露したDJも記憶に新しく、従来と異なる切り口で評価される民謡、こちらも全く新しい刺激的な音楽として楽しむことは十分可能だ。つげ忠男による装幀画も素晴らしい。