〈好きなことは、諦めない〉をコンセプトとしたアーティストの原石発掘プロジェクト、〈「音楽で、生きていく」project〉。入賞特典にはBillboard Live YOKOHAMAでの演奏や著名作曲家からの楽曲提供などを据え、本気で〈音楽で生きていきたい〉と思っている人のきっかけになるべく始動したオーディションだ。審査はライブ配信と動画を基準に行われ、時間や場所を問わず、音楽表現をしている18〜29歳であればあらゆる人に可能性が開かれているのが〈音プロ〉の特徴である。
そんなオーディションで、1位を獲得したのがボーカリスト・Kanaeだ。彼女を見ていると〈夢を叶えられるのは、なんのしがらみもないティーンエイジャーだけではない〉と、胸の奥が熱くなる。だって、Kanaeは地方住みのアラサーで、ひとりの娘を持つ母親でもあるのだから。責任をもって自分の人生を歩んでいく彼女は、大好きな音楽で生きていく道へ一歩踏み出した。
本稿ではKanaeの音楽遍歴に触れていくとともに、オーディションに参加した経緯やこれからのことなどについて訊いた。
譜面を読むより歌や楽器を奏でるのが得意
――まずは、Kanaeさんの音楽遍歴からお伺いできますか。
「小さいころからずっと音楽は好きだったんですけど、本格的にその道に進みたいと思ったのは中学2年生のとき。友達の影響でYUIさんにドはまりして、ギターを始めたのがきっかけです。家族も私の夢を応援してくれていたので、ずっと音楽を続けながら芸大へ進学しました。
在学時には大学の仲間とOLIASというバンドを組み、卒業後は大学の先輩であるhisayaとSplendore(スプレンドーレ)を結成。相方と上京して、いろんなアーティストのライブを観に行っていましたね。
今では結婚し娘が生まれたのをきっかけに、旦那さんの実家で暮らしながら、ライブ配信やYouTubeを中心に音楽活動をしています」
――順を追って訊いていきたいのですが、そもそも〈音楽が好きだ〉と思った原体験は何だったんですか。
「幼稚園最後の演奏会で、鼓笛隊の指揮を先生に頼まれて〈嫌です!〉って言ったときかな(笑)。〈どうしてもKanaeちゃんにやってもらいたい〉ってお願いされて、しぶしぶ引き受けたんですけど、楽器がやりたかったからすごくショックで。幼稚園の頃からピアノをやっていましたし、歌や楽器にも興味があったんだと思います」
――ピアノは、いつ頃まで習っていたんですか。
「中学校の終わりまでやっていました。めちゃくちゃ弾けるわけではないですけど、合唱コンクールの曲や校歌で伴奏を弾くことはありましたね。
とにかく練習嫌いで、譜面を読むのも苦手。耳で聴いたほうが弾けるタイプだったので、先生が弾いているのを耳で覚えて、譜面を見ているふりをしながら弾いていました(笑)。クラシックを弾くのが嫌になった時期には、音楽番組で聴くようなポップスばかり弾いていたな」
――たとえば、どんなアーティストの曲を弾いていたんですか。
「それこそYUIさんとか。〈弾きたい〉と思ったものは、なんでも弾いていた気がします」
――ギターを始めたのは、中学2年生の頃とのことでしたが、バンド活動などもされていたんですか。
「友達と〈バンド組もう〉と盛り上がったものの、なかなか活動は始まらなくて。ベースを持っている子と一緒に練習したり、オリジナル曲を作ったりしていました。でも、中学時代で音楽といえばカラオケだったかも」
――足繫く通われていたんですね。
「友達と遊ぶ=カラオケってくらい(笑)。レパートリーはYUIさんやいきものがかりさん、絢香さん、西野カナさんとか。友達の影響を受けて、ボーカロイドの曲やaikoさんも歌ってました」
――ちなみに十八番は、どの曲でしたか。
「YUIさんの“Good-bye days”でしたね。最初に取り掛かったアーティストさんなので歌いやすし、雰囲気が好きなので。今でもライブ配信でけっこう歌ってます」