
飛翔感を持つ曇りなき言葉たちとどこか郷愁を誘うようなメロディーを、たくましくしなやかな歌声がうんと高い場所まで押し上げていくのがくっきりとみえる。実力派の新進シンガー、みくりが歌う“夢々”がイメージさせる光景を書き記すとこういうふうになろうか。
彼女はこのたび有名クリエイターの楽曲提供権をかけたLINE LIVEのイベントでみごと1位となり、楽曲を歌う資格を獲得した幸運な女性ボーカリスト。ふだんはLINE LIVEを主戦場として歌手活動を展開、幅広いレパートリーと安定感のある歌唱力が評判を呼んでいる。10代から都内のクラブで歌を披露しはじめ、20代には女優として舞台役者をめざすなど紆余曲折のキャリアを積んできた彼女にとって、失敗を恐れず夢を追うことの大切さを説く“夢々”は、まさしく自分自身を奮い立たせてくれる大切な存在となっている。
喜びに溢れた歌の端々からそんなステキな関係性が窺い知ることができるわけだが、あらゆる聴き手がスムーズに感情を重ね合わせることが可能な普遍性の高い楽曲に仕上がっている点も見逃せない。楽曲制作を行ったのは、かつてAUDIO RULEZ、MAGIC PARTYといった自身のグループでベース、コンポーザーを務め、現在は楽曲提供を行う作曲家やアレンジャーとして数多くのアーティストの作品を手がける本田光史郎。
今回どのような空気のなかで両者のコラボレーションが進められたのかを確認するために、レコーディング作業中のふたりの元に駆けつけた。取材は本田が講師を務める東放学園音響専門学校のレコ―ディングスタジオで行ったのだが、録音自体は終盤に差し掛かっており、本田による繊細なディレクションを受けながら、ボーカルブースのなかのみくりは最後の仕上げとして思いを込めた歌を披露している真っ最中。それをコントロールルームで的確かつ素早くオーディオファイルに取りまとめた本田の滑らかな手つきは、さすがプロといったもの。仕上がった作品を堪能する間もなく、すべての工程を終えて一息ついた2人に話を伺った。
あの頃夢見たことがそのまま曲になった
――本日のレコーディングに向けて、心構えなどありましたか?
みくり「今回の“夢々”ってタイトル、すごい偶然なんですけど、私が小さい頃に飼っていた犬の名前も〈ムム〉だったんですよ。字もそのまんま〈夢夢〉って書いたんです。名前の由来は、母と私のふたりの夢を重ねて、って感じで付けたんですけど、あの頃私が夢見ていた内容がそのまんま歌詞になっていて」
――へ~、すごい!
みくり「だから練習しながら、泣いちゃったりしてました。ひょっとしたら、半分ぐらい泣いてたかも。母にも歌詞を見せたんですけど、やっぱり号泣してましたね(笑)。
自分の気持ちにすごく刺さる曲だったので、気合を入れて臨みましたけど、結果はどうだったか……」
――そうだったんですね。では本田さん、結果はどうでしたか?
本田光史郎「事前にLINE LIVEで彼女の歌声を耳にしていたので、歌唱力などまったく心配するところはなかったんですが、自分の楽曲と合わさったときにどうなるのか、うまく化学反応が起きるかどうかは未知数で。でもブースから声が聴こえてきたときはもうイメージどおりだと」
――実際に歌声に触れてみて、感心させられたところなどあれば教えてください。
本田「こちらの要望にすごくストレートに応えてくれるところ。それはすごいなと思いました。僕の抽象的な指示をきちんと汲み取ってバッチリやってくれた。だから作業はスムーズでしたね」
――打てば響く感じだったんですね。ちなみに、みくりさんが難しく感じたところは?
みくり「まずサビのキーが高かったところですね。高くなったり低くなったりするなかで、メロディーが持つ高揚感というか、こちらが笑顔になる感じをどう表現したらよいかけっこう考えたんですが、結局は自分が気持ちイイように歌ってしまいました(笑)」
本田「それがイイんですよ」
みくり「よかった(笑)。とりあえず私、歌いながら空飛んでました」
――それは素晴らしい。みくりさん的にこのポイントをぜひ意識して聴いてほしい、という要望はありますか?
みくり「そうだなぁ……私はちっちゃい頃からずっと夢を追っていて、何度も挫折を経験してるんですけど、でもいまこうしてこの場所にいられるのは、決してあきらめなかったからだと思う。だから歌詞のとおりなんですよね。まだまだ見てみたい景色もいっぱいあるし、これを聴いてくださった方もそうであってほしいなと思います」

優勝はファンの力が結集したからこそ
――プロフィールに、一時活動をお休みしていたけれど、2020年7月からまた歌い始めたとありましたが、その理由は?
みくり「10代から歌っていたんですが、あるときに、音楽って何なんだろう?と考えるようになって。表現していくうえで、何かが足りない、という感覚を持つようになって、自分が空っぽな気がしたんです。それで一度、お芝居を習ってみようと。役を演じるために気持ちを作る方法などを知りたくて。
その後、出産を挟んでしまい、一時的に歌うことから離れてしまうことになってしまったんですけど、常に音楽は切っても切り離せない存在であり続けました」
――そうか、やむを得ず離れざるを得なかったんですね。
みくり「やむを得ず、子育てに没頭しておりました(笑)。
いまはLINE LIVEという手段を用いて、自宅に居ながら発信できますから。家に居ながら夢が追えるなんて、私にとってはとにかく画期的というほかなくて。こんな世界があるんだったらもう、歌わないわけにはいかない! そんな勢いで、機材などを一気に揃えて歌い始めたんです」
本田「全部自宅でやってるんですよね。バックの派手な看板も……?」
みくり「〈singerみくり〉ってネオン看板ですね。あれはイベントでいただいたものですね。ブースっぽく見せてるけど、実はただの和室なんです(笑)」
――ハハハ。こういう新たな発信の仕方が出てきたことについて、本田さんはどういうふうに捉えてらっしゃいますか?
本田「今回初めてLINE LIVEのオーディションに関わらせてもらったんですが、審査員を前にして参加者がパフォーマンスを披露するという通常のスタイルに対して、選考するのがそれぞれのファンの人たちというのがおもしろい。最後の数十分とかすごく盛り上がって、演者もファンもみんなで泣いちゃったりして」
みくり「グシャグシャになってましたね」
本田「そうか、この優勝はシンガー個人のものじゃなく、みんなの力が結集して獲得できたものなんだなって思った。なので歌詞にある〈あなた〉は、ファンの人たちをイメージしています。みんなのサポートが重要だったんだよって気持ちを伝える意味で。そんなことを踏まえて曲作りに入ったので、すんなりイメージが完成しましたね。だから普通のオーディションで優勝するよりもすごいと思いますよ」
――なるほど、オーディションの場で感じた熱をそのまま曲に注ぎ込もうとしたわけですね。ところで、みくりさんはいろんな経験を積みながら、歌と向き合い続けてきたわけですけど、現在の自分の歌とかつての自分の歌を比べてみて、何か違うところがあるように感じますか?
みくり「歌う姿勢の変化では、ひとりじゃないな、と思えるようになったことが大きいですね。スタートしたときはただただ、歌いたい!って感じだったけど、いまは6,000人を超える方たちの支えをしっかりと実感できる。LINE LIVEを始めて2年になるんですけど、〈がんばれがんばれ!〉って声援にずっと支えられています。これまでの人生でこんなに〈がんばれ!〉って言ってもらったことはなかったから(笑)。皆さんのために、もっと高いところにいかねば、って気持ちになってますね」
――自分の歌がちゃんと届いていることを認識できるって幸せですよね。
みくり「最初はただ〈曲〉が欲しかっただけでした。でもそれをいただくだけではもう済まなくなった。じゃあ、私はどうしていったらいいんだろうか? そういうことまで考えるようになったりして、リスナーさんたちにどんどん成長させてもらっています。いきなりでっかい夢を持つなんてできないけれど、みんなといっしょだったら夢がどんどん膨らんでいく気がする。そんな感じですかね。あと、ずいぶん泣き虫になっちゃいました、私」
――ハハハ。
みくり「それと、いままで普通に歌っていたいろんな曲の歌詞に、これまでとは違った色が付いたような気がしています。その色彩感をもっともっと豊かに表現したいんですけど、私の力量がまだ足りなくて。なので、いろんな人の歌を聴いてみたり、映画を観たりして、ずっと模索中です」

どんな作品も聴いてくれる人たちの元に届いて完成する
――みくりさんがもっとも影響を受けたミュージシャンって誰なんですか?
みくり「マイケル・ジャクソン!」
――おぉ、即答ですね。
みくり「両親とも音楽がすごく好きなんです。母は昼から音楽をかけながら踊り狂っているような人で、父は酔っぱらいながらギターを持って歌いまくっている人。父は歌本をめくりながらひとり娘の私にいろんな曲を毎日のように歌ってくれました。
ある日、父がマイケル・ジャクソンの“Thriller”のMVを見せてくれて、楽しそうに踊っている人たちを観ながら(目を大きく見開きながら)うわ~!!ってなって。ダンスと歌があれほど一体化したものを観たのが初めてだったから」
――なるほど。では、みくりさんが音楽をやるうえで、つねに大事にしていることはなんですか?
みくり「普段言えないようなことを詞に乗せて届けるのが歌だと思っているので、歌詞をしっかりと伝えることをまずいちばんに考えます。そのためにはもっと感性を磨かないといけないし、経験値もまだまだ足りない。もっとたくさん作品を観たり聴いたりして、しっかりとアンテナを張って、新しいものから古いものまでいろいろキャッチしていかないと。
ただ、子育てによって経験値がだいぶ上がったかなって気もする。その影響で、取り上げる曲の幅も広がった実感があるし。やっぱり、ちゃんとカラフルな世界のなかにいないと大事なものも伝えられないんじゃないかなぁって思いますね」
――表現力を磨くために大切なことなど、先輩ミュージシャンとして本田さんがアドバイスをするとしたら?
本田「そうですねぇ。僕も曲を作ったり、楽器を演奏したりしているわけですけど、どんな作品も、ここ(スタジオ)ではなく、聴いてくれる人たちの元に届いてようやく完成するんだなって思うんです。笑顔や涙を流している顔など、向こう側にいる人たちに思いを馳せながら作業していると、自然と想像力が磨かれていくものだし、そこで得たものは歌にも確実に反映されるはず。つまり常にその先をイメージすることですかね。もちろんスキルの向上も必要だけど」
みくり「歌唱力がいきなり向上することってなかなかないけど、表現力は頑張ったら何とかなるんじゃないかなって思うんですよ。だからいまはそっちを大事にしたいって」
――あと、日々成長していく娘さんから教わること、発見することも多いでしょうし。
本田「子供ができるとガラリと変わりますもんね」
みくり「ほんとに! 彼女に成長させてもらってます。過去の自分を恥ずかしく思ったりしますよ。あの頃の私はたぶん、この子のようにできていなかったよな、って」

熱い思いを持ち続ければ絶対いいことが待ってる
――ズバリ、これからの夢は?
みくり「アルバムを作りたいです。それがいちばんの目標ですね」
――こんなタイプの曲が歌いたい、とかありますか?
みくり「昔はカッコつけたくて、雰囲気に任せてR&Bタイプの曲を歌ったりしてたんです。でもいまは、伝えるための歌はそんなにジャカジャカさせなくてもいい、って考えるようになりました。ギター1本であっても、そこに乗せるものをしっかりと意識する。大事なものを伝えることを大事にしたいんです。とにかくやりたいことはいっぱいありますね」
――本田さんは、彼女にはこういった曲調が似合いそう、とかどんなイメージが湧きますか?
本田「LINE LIVEで歌を聴いたとき、最初に浮かんだのは歌謡曲のイメージ。いわゆる80年代の歌謡曲のテイストとかすごくしっくりくるだろうな、と」
みくり「配信に集うリスナーさんってその年代の方が多くって、その頃の曲のリクエストが多いんですよ。私の配信は、知らない曲だったとしても、即興で歌ってみよう!というのを売りにしているんです。私なりにその場でどう調理するかにかかっていて、こんな感じにできたよ~、ほらうまくいったでしょ?ってふうに皆さんをもてなすんです。父と母の影響もあり、70年代あたりの有名曲だったらだいたい歌えるので、ちょっと意地悪なあまり知られていない曲のリクエストでも、平気で歌えちゃうよ!って。
あと昔からよくアニメ声だと言われてきてたので、アニソンもレパートリーにしているし、ボカロ系もけっこう多いかな。
こういうふうにいろいろやりたいことがありすぎて絞れないんです! とにかく何を歌っていても楽しいんです!」
――(笑)。では最後に、“夢々”をどういうふうに聴いていただきたいか、リスナーへのメッセージをお願いします。
本田「バラードではあるけれど、けっして悲しい曲ではない。前を向きながら一歩一歩進んでいく、というイメージで作りました。
月並みな言い方になるけれど、聴き手の背中を押すような曲になったらいいなと思います。辛いことや落ち込むことがあったときにこの曲を聴いて前を向く気持ちになってもらえたら嬉しいですね」
みくり「これは私の歌なんだ、って実感できるほど、すごくしっくり来ているんです。最初に曲を聴かせていただいたときは、私自身がすごく励まされました。
いろいろとしがらみの多い世の中で、思うようにうまくいかないことばかりだけど、キラキラしたものというか、熱い思いを持ち続けていれば絶対にいいことが待っているから。そういう願いが届けられたらいいなと思います」
みくりさんの歩みや幼い頃から抱いていた夢、彼女を支える〈みくり組〉の思いが歌に込められ、本田光史郎さんの音楽と重なって生まれた“夢々”。レコーディング直後の熱気が立ち込めた現場で収録された今回の対話は、みくりさんの音楽人生や“夢々”の背景が明かされ、非常に充実した内容になりました。なお、“夢々”のミュージックビデオは、映像監督・奥藤祥弘さんが撮影。楽曲の世界やみくりさんの思いを見事に表現した映像作品になっているので、ぜひご覧ください。 *Mikiki編集部

RELEASE INFORMATION
リリース日:2022年9月17日
配信リンク:https://big-up.style/SEXcPtAOgg
TRACKLIST
1. 夢々
作詞作曲:本田光史郎
