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懐かしさとモダンさの共存

 アルバム全体のプロデュースと監修を手掛けたのは、これまでと同様、彼女の最大の理解者でありブレーンとして貢献してきたサーカット。カナダ人プロデューサーの彼は、ケイティ・ペリーやケシャ、ニッキー・ミナージュ、ウィークエンドなどを手掛けてきた人物で、最近ではエルトン・ジョン&ブリトニー・スピアーズのコラボ曲“Hold Me Closer”、サム・スミス&キム・ペトラスの“Unholy”といった大ヒットにも関与している。さらに、レディ・ガガやアニッタを手掛けるバーンズ、パニック・アット・ザ・ディスコやセレーナ・ゴメスでお馴染みのジョナス・ジェバーグ、BTSやオリー・マーズのデイヴ・スチュワート、ティエスト&エイバのクラブ・ヒット“The Motto”にも関わったロストボーイことピーター・ライクロフト、リル・ナズ・Xやヤングブラッドを手掛けるオマール・フェディらが共同プロデュースに参加。共作陣には、ワンリパブリックのライアン・テダー、リーランドことブレット・マクラフリン、マディソン・ラヴなど、錚々たるメンツが並んでいる。

 80年代のポップ・シンセ・サウンドがベースとなっているのは前作と同様。が、ウィークエンド『After Hours』(2020年)やデュア・リパ『Future Nostalgia』(2020年)などの世界的ヒットに後押しされたせいなのか、エイバはこの方向性により確かな自信をもって推し進めているという印象だ。シンセの音使いがいっそうダイナミックに大胆になって、はっちゃけ放題。煌びやかでドライヴ感溢れるシンセ・サウンドを聴いていると、ついついレオタード姿でエアロビクスに興じる様子が脳裏に浮かんでしまうのだが。それらの懐かしいサウンドが“In The Dark”や“Turn Off The Lights”といったモダンなクラブ系エレクトロニック・サウンドと、まったく違和感なくアルバム内で共存しているのもおもしろい。ジョルジオ・モロダーやキース・オルセン、ハロルド・フォルターメイヤー、デヴィッド・フォスター、a-haやローラ・ブラニガン、ボニー・タイラーも、きっとご満悦に違いない。

 2022年は、このアルバムの準備のためにすべてを費やしたという彼女。2023年は、本作を引っ提げての初のワールド・ツアーを開催したいと意気込みを語っている。来日公演が実現した際には、ダイヤモンドのようにキラキラ輝きながら、皆をダンスフロアに誘って、ちょっぴり感傷的なエンパワーメント・ソングで踊らせてくれるに違いない。 *村上ひさし

左から、エイバ・マックスの2020年作『Heaven & Hell』(Atlantic)、デヴィッド・ゲッタの2018年作『7』(Parlophone)、アラン・ウォーカーの2021年作『World Of Walker』(MER/ソニー)