ユーマ株式会社が設立20周年プロジェクトとしてNFT証明書付きのアートピース〈TechnoByobu(テクノ屏風)〉を販売、シリーズの第1弾の受注が2023年3月3日(金)から開始する。〈TechnoByobu〉とはどんな作品なのだろうか? 今回は、その魅力や特色を、YMOについての執筆でも知られるライター/編集者の吉村栄一に解説してもらった。 *Mikiki編集部
テクノと伝統工芸品のフュージョン
TechnoByobu=テクノ屏風。
一聴しただけではイメージしづらいアイテムだ。テクノの屏風?
そう、テクノはテクノロジーとテクノミュージック。屏風は日本ならびにアジアの伝統工芸品〜調度である屏風。このふたつが融合したものがテクノ屏風だ。
企画、販売するのはユーマ(U/M/A/A Inc.)という会社でその創業者はアルファレコードやソニーミュージックでテクノ関係のリリースを手掛け、ユーマでもさまざまな形でのテクノミュージックを送り出している。
このTechnoByobuは、そんなユーマらしい商品だ。伝統工芸品である屏風とテクノをキャッチアップフュージョンさせた。このTechnoByobuはシリーズとなる予定とのことだが、第1弾がこの3月3日に受注開始となる。
ルー・ビーチによるYMOのジャケット〈エレクトロニック・ファン・ガール〉
その第1弾のモチーフは日本が誇るテクノポップの雄、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の海外版ファーストアルバム(79年)のジャケットを飾った芸者のイラストレーションだ。
サングラスをかけて扇子を持ち、髪に電子楽器のシールドを生やしたこの芸者のイラストレーションは、ウェザー・リポートやスティーヴィー・ワンダー、カーペンターズ、ポリス、マドンナらのジャケットで知られるアメリカのアーティスト、ルー・ビーチによるもので、YMOの世界的なヒットとともにこのインパクトのあるイラストも当時大きな話題を呼んだ。
余談だが、2011年にYMOがサンフランシスコでコンサートを行ったとき、この芸者イラストのタトゥーを腕に入れたアメリカ人ファンが客席にいてメンバーみなが驚いていたことも懐かしい。
このイラストは、今回の屏風化にあたってルー・ビーチから〈エレクトロニック・ファン・ガール〉とあらためて命名された。〈ファン〉は扇子のFanと楽しみのFunをかけたそうだ。
屏風の老舗 歴清社の矜恃と技法
YMOが体現したテクノポップによる往時の日本のテクノロジーの勃興の象徴に日本の伝統工芸の矜恃を持って相対したのが、屏風の制作を手掛けた歴清社だ。1905年に創業した同社は真鍮を使った洋金箔という技法(テクノロジー)を開発し、金を使用した本金箔よりもリーズナブルながらその輝きと耐久性は本金箔に勝るという技法でこれまで数々の逸品を生み出してきた。由緒ある寺社仏閣、名のある料亭やホテル、さらにはラグジュアリーブランドの旗艦店などにその作品は飾られている。
ユーマの創業者はかねがね愛好するYMOをテーマにした美術品を作りたいと思っていたところこの歴清社と縁ができ、そこでこのTechnoByobuのアイデアが生まれたという。
それはさらに、YMOをテーマにした屏風のみならず、かつてハイテク立国として世界を慄然とさせたかつての日本のテクノロジーの現在を、伝統の工芸品と結びつけるシリーズとしたTechnoByobuというアイデアを発展させていったそうだ。