ジャズピアニストでありながらもメタラーとして知られる西山瞳さんのメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第66回(!)にお届けするのは、インド・ニューデリー出身のブラッディウッドによる来日ツアー〈RAKSHAK TOUR – JAPAN 2023〉のレポートです。メタルにボリウッドの要素や民族楽器を加えた唯一無二のサウンドで、ここ日本でも人気沸騰中の彼ら。その圧倒的なパフォーマンスとオーディエンスの熱狂を、西山さんがアツく伝えます。 *Mikiki編集部
気温も湿度も毎日徐々に上がっていく6月後半、ブラッディウッドが日本にやってきました。2022年のフジロックで大きな話題になった、インドのヘヴィメタルバンドです。
まだアルバムは『Rakshak』(2022年)の1枚、日本盤も出ていないバンドなのに、初来日。同じ年にはThe HU(モンゴルのヘヴィメタルバンド)も出演、〈突然なんで!?〉と、話題になりました。
2022年はフジロックの公式YouTube配信もあったことで多くの人の目に触れ、日本の観客に強烈なインパクトを与えました。現場で体験した人の興奮した感想も沢山目に入り、私も配信を見ましたので〈これは面白い〉と音源を聴くようになり、音楽仲間に〈これ面白いよ〉と勧めたりしていました。
そのブラッディウッドが来日、大阪と東京で公演があると聞いたら、行かないわけにいかないでしょう。東京のSpotify O-EASTでの公演はわりと早めにソールドアウト、注目度の高さが伺えます。
ということで、行ってきました。隣のduo MUSIC EXCHANGEではグラハム・ボネットの公演が。こちらも見たかったですね。
O-EASTの入口に行くと、メタルのライブにしてはわりとお姉さんが多い。フロアに入っても私と同年代ぐらいのお姉さんが結構多くて、なんだか嬉しくなりました。私も映画「バーフバリ」は劇場に何度も観に行った口ですが(ラージャマウリ監督が来られたチネチッタ川崎にも行った)、同じようなお姉さんもいるかしら? いてたら嬉しいな。「RRR」でもインド沼に堕ちる人が沢山いらっしゃいましたし、とてもわかります!
まずはオープニングアクトのMELT4が登場。スペインのフェスに出演して帰ってきたばかりだそうで、若いバンドです。
オールドスクールな楽曲を真正面から全力疾走、若さの迸るとても気持ちの良いステージでした。日本のシーンにおけるメタルやパンクの蓄積を感じ、これはおじさんおばさんは嬉しいぞ! 頼もしいぞ!と思いました。
ちょっとパンキッシュな“手のひらを太陽に”でがっつりフロアを掴んでいました。もう、熱さに向かって馬鹿正直って感じで、好きです。
いよいよブラッディウッド登場の時間。観客の雄叫びのような声援が一気にフルテン! 皆楽しみに待っていたのね!
1曲目は、アルバム『Rakshak』のオープニング曲でもある“Gaddaar”。ステージも観客も、とんでもない爆発的な熱量です。
フジロックの映像をYouTubeで見てはいましたが、このバンド、ものすごくステージ映えしますね。
転換時、オープニングアクトの機材を片付けたら、ステージ上にはエフェクター類が一切なく、ギタリストのラックが奥に少し見えるだけで、ダンスでもするのかなというぐらいすっきりと何もない綺麗なステージだったんですね。それが、ライブが始まったらわかりました。
メンバーが入れ替わり立ち替わり、かなり動くんです。面白いのが、皆動き方が違う。そして、エフェクターとかそういうところで音楽をするバンドじゃないんだなと気づきました。細かいことを飛び越えたダイナミックなグルーヴが気持ち良い。勝手に身体が動いてしまう、動かざるをえない、原初的な鼓動や祝祭感みたいなものがあります。
ベース、ドール(Dhol、インドの両面太鼓)、ラップボーカル、ボーカル、ギターと5人が広くステージに並んでヘドバンする光景は、実際に見ると、かなりインパクトがありました。
2曲目にヘヴィな“BSDK.exe”、ラップとスクリーム中心の曲です。
このバンド、リンキン・パーク系が好きな方にもお勧めしたい。ラップボーカルのラウル・カー(Raoul Kerr)のパフォーマンスがとても素晴らしくて、どんどん熱情がクレシェンドして爆発するまで観客を率いていくその表現と力に圧倒されました。一人だけ衣装がラッパー然とした感じなのも面白い。
3曲目“Aaj”は、アルバムの中でもインパクトのある曲。攻撃的なラップから始まり、開けたサビはちょっとクサメタル風味があって、大合唱できるメロディ。このサビが良いのですが、英語ではないので何を言ってるのかが全然わからないものの、一緒に歌いたいからなんかシンクロして皆歌っているという、とてもPeaceな感じでした。
間奏はギターソロではなく、笛のソロです。