ジャズピアニスト、西山瞳さんが愛するメタルについて綴る連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第79回は、ひさびさのBABYMETAL回です。公開を控えているライブ映画「BABYMETAL LEGEND - 43 THE MOVIE」を試写で見た西山さんが、BABYMETALの魅力であるライブについて、そして映画ならではの体験について執筆してくれました。 *Mikiki編集部

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2024年8月23日(金)より、BABYMETAL初の映画作品「BABYMETAL LEGEND - 43 THE MOVIE」が、全国ロードショーとなります。こちらは、2023年~2024年にかけて実施されたワールドツアー〈BABYMETAL WORLD TOUR 2023 - 2024〉の最終地である、沖縄公演〈TOUR FINAL IN JAPAN LEGEND - 43〉を映画化したもの。

5.1chサラウンド版、Dolby Atmos®版、Dolby Cinema®版と、最高の音響が用意されたこの映画は、ファンにとっても嬉しいものですが、まだBABYMETALのライブを体験したことのない方にぜひ見て頂きたい、入門編としても最高の映画です。

BABYMETALは何が凄いって、ライブです。

しかし、頻繁に世界にツアーに出ており日本でのライブが貴重なものとなった今、映画館で気軽にライブを体感できて、なおかつ素晴らしい音響と映像、ほぼライブと同じ体験ができるという、贅沢で素晴らしいライブ映画です。BABYMETALのライブに興味をお持ちの方には、この機会にぜひ鑑賞をお勧めしたい。

 

5.1chサラウンド版試写で鑑賞しましたが、素晴らしい音響と映像で、とにかく驚きました。BABYMETALをずっと追いかけてきた者としての目線を抜きにしても、とても高品質なライブ映画です。

2015年にZepp DiverCity (TOKYO)の公演に行って以来ライブは何度も行っており、現場で聴いた曲も沢山ありますが、最近はアリーナ会場でのライブが多く、大きな空間で爆音の中に没頭するのは楽しい一方、細部はあまり聴こえないので、まずはクリアで立体的な音響に感激しました

バスドラムのビチッと当たる音から、ギターの歪みの音色のバリエーションまで、とてもクリアで奥行きもある。解像度が上がっただけではなく、アリーナでのライブ現場で聴いているかのような空気の震える大きな容積のリアルさと圧力もあり、とにかく音場が素晴らしいです。映画館のサラウンド環境で大きな音で、ぜひ聴いて欲しい。

そして、肝心のSU-METALの声ですが、歌唱の艶やかな部分、ソフトな部分が非常に際立ちます。アリーナの広い現場では絶対こんな風に聴こえないですし、かといって圧力が下がるわけでもない、解像度が高すぎてぺたっとしているわけでもなく、仔細によく聴こえるのにライブで聴いているような肉薄する強さもある、とても素晴らしい音。ファンとしても、とても満足する体験でした。

 

カメラワークも、とてもダイナミックで素晴らしい。

最近のBABYMETALのライブ会場では常にドローンが飛んでおり、あんな群衆の上をきびきび動いていて、安全に操作しているチームが凄いなと思って見ていましたけれど、そのドローンカメラによる映像がとてもスピーディに、ステージ後方に回り込んでぐっとステージ前方の上部に移動したり、今までにない映像体験ができます。

また、適度にライブ会場の客席目線になってくれるので、とても臨場感があって、〈あれ、今立たなきゃだめかな?〉と思うぐらい。BABYMETALのライブパフォーマンスに魅了されてライブに行くファン目線の没入感も、しっかり考えられているのでしょう。それらが忙しすぎない編集をされており、どんどん角度は変わりますが、見ていて全然疲れません。

また、時折、映画的な画面とでも言いましょうか、一枚絵のように美しいシーンもあり、ライブは爆音で進んでいるのに見惚れて時間が止まってしまうようなシーンもありました。

 

そして、3人のダンスを大スクリーンで、指先まで見ることができる喜び

指先まで美しい彼女たちのダンスは、こんな細やかで優美な動きをしているのだなと、改めて感心しました。足の角度からゆっくり腕を下ろす動作まで、隙がありません。日本舞踊のようにゆっくり動き、一見休んでいるように見える動作にこそ、パワーが宿っている。

最新のコンセプトアルバム『THE OTHER ONE』収録曲のライブパフォーマンスは、非常にアーティスティックな演出をする傾向がありました。ある曲は、多くの時間3人がほぼシルエットのみだったり、ある曲は、同期するスクリーン映像が非常にアート的で目を引くものになっていたり、BABYMETALのメンバー一人一人にフォーカスするよりは、BABYMETALというプロジェクト全体の世界観を伝える演出に寄っていました。今までライブ現場で見たそのアート系演出が、様々な角度で編集・構成されていて、映像作品として非常に充実したものになっており、ここまで射程に入れていたのかと、改めて感心しました。